『歪んだ関係・6』



唇をわって舌が捻じ込まれてくる。

(わ、わたし、今小狼くんとき、キスしてるの? こ、こんなのって・・・・・・んん!)

それは初めてのキスにしてはあまりにも衝撃的な体験だった。
想像していたのとは全然違う。
捻じ込まれた舌が口の中で暴れまわっている。
舌で舌が絡め捕られる。
今まで味わったことも想像もしたことのない感触にサクラは翻弄され身動きすることもできない。
存分にサクラの口中を堪能したそれが引き抜かれたのはたっぷり1分以上が経過してからのことだった。
二人の口を唾液の糸が繋ぐ。

「小狼くん・・・・・・」
「そうです、姫。これがあなたの『対価』です。あなたはこの旅の間はおれのものだ。おれに何をされようとあなたにそれを拒む権利はない。それがあなたの『対価』だ」
「そんな・・・・・・あぁ・・・・・・」
「恨むならこんな対価を定めた次元の魔女を恨むんですね。それではいただきますよ。今回の対価を」
「いやぁぁ・・・・・・」

本能的に胸をガードしようとした手は小狼に片手でまとめて掴まれて頭の上に押さえつけられた。
もう一方の手が服の上から胸を弄る。
まだ育ち切っていない固い膨らみに強い力で指が食い込んでくる。
しばらく服の上から胸を擦っていた小狼だったが、我慢ができなくなったのか服のボタンに指をかけはじめた。
1つ1つゆっくりとボタンが外されていく。
サクラの胸が小狼の目に晒されるまでさほどの時間はかからなかった。

「やぁぁ・・・・・・見ないで・・・・・・」
「どうして? こんなにキレイなのに」
「キレイ・・・・・・? 本当にそう思う?」
「ええ。とってもキレイですよ、姫」

そう言った小狼の唇がそのまま降下してさくらの胸に触れる。

「ひゃぁぁ!」

サクラの口から可愛い悲鳴が漏れる。
今まで人に触れさせたことのない肌を異性のしかも唇で触れられているのだ。
たまったものではない。
しかも、小狼の唇は触れるだけではなく肌の上をぬめぬめと滑っていく。
そこに舌の動きが加わる。
ぬめぬめと這いずる唇が胸の頂点の一番敏感な突起に達した時、サクラの身体にビクビクと激しい痙攣が走った。

「ひぅぅっ・・・・・・」
「ふふっ、どうしました姫。感じてるんですか」
「やめて・・・・・・恥ずかしいこと言わないで・・・・・・」
「恥ずかしいのは姫の方ですよ。男に乱暴されてるのにこんなに可愛い反応をして。一国の姫ともあろうものがはしたないと思わないんですか」
「いやぁ・・・・・・あぅっ!」

再び肌に張り付いた唇が今度はちゅ〜〜っと強い力で肌を吸い上げる。
唇が離れた跡には赤いマークが刻みつけられていた。
女性の身体が特定の男性のものであることを示す所有印だ。
それだけでは済まず、小狼の唇はサクラの胸に何カ所もキスマークを刻んでゆく。

「ダメだよ小狼くん・・・・・・こんなの・・・・・・。みんなに見られちゃうよ」
「心配しないでください。服で隠れるところにしかつけませんから。それとも、なんですか。ファイさんたちにもここを見せてるんですか?」
「そんなことないよ! 小狼くんだけだよ! こ、こんな恥ずかしいところ見せるのは」
「なら問題ありませんね」
「そういう問題じゃ・・・・・・くぅっ!」
「オレだけだ。姫・・・・・・。貴方を自由にしていいのはオレだけだ!」

諦めていた望みが不意に叶ってしまったという状況の激変に小狼は昂ぶっている。
仮にこのようなシチュエーションでなく自然に肌を重ねる場面があったとしたらこうまで荒々しい行動にでることはなかったろう。
一通りサクラの胸を蹂躙した後に小狼の視線が向いたのは未だスカートに隠されたままになっている下半身だった。
伸びた手が荒々しくスカートを脱がし、その下の下着にも伸びる。

「そ、そこはダメ! そこだけは! もう許して、小狼くん!」

涙交じりのサクラの哀願にも小狼は無言。
問答無用で下着を剥ぎとってしまう。
命をかけてでも愛し守ると誓った存在を己の手で汚す。
歪んだ想いの結実が小狼を狂わせている。
あらわにされた恥丘に生えた和毛の感触を楽しむかのように掌を這わす。
しばらく、そのまま恥丘を撫でまわしていた小狼だったが、それだけではたまらなくなったのか、まだ幼い秘裂に口を近づけるとその表面をペロリと舐めた。
さくらの体をこれまで以上に強烈な刺激が走り抜ける。

「しゃ、小狼くん!? そんなとこ舐めちゃだめ! 汚いよ!」
「姫の体に汚いところなんてありませんよ。ここだってすごくキレイで可愛いですよ、姫。もうこんなになってる・・・・・・」
「やあぁ、ダメ、ダメなの・・・・・・。そんなとこ舐めちゃダメなの・・・・・・」
「可愛いなあ、姫。本当に。食べてしまいたいくらいに」

舌だけでなく、指も添えて小狼はサクラの秘裂を責めたてる。
指が秘裂の入口とその上端の突起を丹念に擦りあげ、舌はまるで溶けかけたアイスキャンディーをしゃぶるかのように秘裂からたれる蜜をぬぐいとる。
指と舌が蠢く度にサクラはビクンビクンと体をのけぞらせて嬌声を上げる。

「あぁっ! こんな、こんなのって・・・・・・ひっ、ひぃっ!」

自分でも弄ったことなどほとんどない部位を男の子に舐められているという異常なシチュエーションがサクラをも狂わせていく。
いまやサクラの秘所は自らの垂らした蜜でビショビショに濡れそぼり、シーツに大きなシミを広げつつあった。
息も絶え絶えのサクラのあげる悲鳴は次第に小さく、消え入りそうなものになっていく。
絶え間ない責めによる快楽にサクラの意識はもう限界に近い。
だが、もちろんこれで終わりではない。

「もうダメぇ! これ以上されたらおかしくなっちゃう! 小狼くん、やめてぇ!」
「何を言ってるんですか、姫。おれはまだ『対価』をいただいてませんよ。これからが本番です。覚悟はいいですか、姫」
「え、なに? それって・・・・・・」
「いきますよ・・・・・・」

もはや意識も定かではないサクラには小狼の言ってことが理解できなかった。
次の瞬間、自分の身に起こったことも咄嗟には理解できなかった。

「ひぃぃぃっ!? あひぃっ! いいぃぃ〜〜〜〜っっ!!」

人の声とはとうてい思えぬ言葉にならない絶叫がサクラの口からあがる。
股間の一点から凄まじい刺激が脳天まで突き抜けたのだ。
それは、生まれてからこれまで味わったことのないとてつもない激痛だった。
まるで体の中心にぶっとい楔を打ち込まれて串刺しにされた、それほどの痛みだ。
反射的に股間に向けた目に入ったのは自分のそこに押し当てられた小狼だった。
小狼の腰がわずかに後退すると、自分のそこから血にまみれた肉の棒が姿を見せる。
それは小狼が腰をスライドさせると再び自分の身体の中に埋没していった。
同時にあの激痛が再び全身を走り抜ける。

ずりゅ、ずりゅ

「ひっ、ひぃぃっ!」

小狼が腰をスライドさせる度にサクラの股間からは淫靡な音が、口からは断末魔の如き絶叫があがる。
ガクンガクンと身を震わせ、何度目かわからぬ絶叫を上げた時になってようやくサクラは自分の身に何が起きたのかを理解できた。

(しゃ、小狼くんのあれがわたしの体の中に!? わ、わたし・・・・・・小狼くんに、小狼くんに・・・・・・! 小狼くんにされちゃったんだ・・・・・・)

純潔を穢された。
王家の娘としてとり返しのつかないことをされてしまった。
もう自分は乙女ではない。
女の子としても姫としても一番大事なものを失ってしまったのだ。
激痛に霞む意識が事実を正確に認識する。
不思議と絶望は感じなかった。
むしろ微かな悦びすら感じている自分にサクラは驚いた。
こんなヒドイことをされているというのにどうしてなんだろう。
相手が小狼くんだから?
でもどうして小狼くんだといいの?
こんなことって多分、特別な相手にしか感じないよね。
それって小狼くんはわたしにとって特別な相手っていうことなの?
でも、それならなんでわたしの記憶の中に小狼くんはいないの?
わたしにとって小狼くんは―――

「あぐぅっ!」

何度目かの激痛がサクラの思考を分断する。
それはこの場ではむしろ幸運だったのかもしれない。
サクラがそれ以上疑問を追求すれば二人を縛る本当の『対価』がこの場の記憶を抹消してしまうからだ。
激痛がサクラの目を自分の上で蠢く小狼へと向ける。

「しゃおらん・・・・・・く・・・・・・ん・・・・・・」
「あぁ、姫。とても気持ちいいです。ずっと、こうしたいと思ってました。それが叶ってうれしいですよ、姫」

ずっと?
ずっと前から思っていた?
それっていつからなの?
再び浮かんだ疑問をサクラはそれ以上追及しなかった。
なんとなくそれはいけないことだと思ったからだ。
それよりも小狼には言いたいことがあった。
いや、伝えたいことがあった。
今のことを自分は後悔したりしていない。
嬉しいとすら思っている。
だけど、一つだけ物足りないものがある。
一つだけ欠けているもの。
それを小狼に埋めてほしかった。

「いや、いやぁ、小狼くん・・・・・・」
「なにがイヤなんですか、姫。姫の体もこんなに喜んでるじゃありませんか」
「やだよおぉ・・・・・・姫じゃイヤだよ・・・・・・」
「え・・・・・・?」
「わたし姫じゃないよぉ・・・・・・。さくらだよ・・・・・・。お願い、さくらって呼んで・・・・・・」
「!?」

なぜこんな風に思ったのかサクラにもわからない。
でも、姫ではイヤだった。
「さくら」名前を呼んでほしい。
遠い昔、どこかで誰かに同じことを言った気もする。
どうしても思い出すことはできないけど、とても大切な人に向けて言ったように思う。
今も同じだ。
姫ではイヤだ。
名前で呼んでほしい。
大切な人には。大切な人だから・・・・・・

一瞬、小狼の動きは止まった。
表情がそれまでの狂気に憑かれたものから、いつもの優しい少年のものに戻っている。
それまで小狼を突き動かしていた狂気が不意に消滅してしまったかのような変わりようだ。
その表情をなにか苦しげなものがかすめる。
辛いなにかを思い出したかのように。
しかし、それも一瞬のこと。
向き直った小狼はまっすぐにサクラの目を見つめながらこう囁いた。

「さくら・・・・・・。さくらとこうなれてオレは嬉しい」
「小狼くん、あぁっ、小狼くん! わたしも嬉しいよ、小狼くん!」

両手を小狼の背に回しぎゅ〜〜っと抱きしめる。
その瞬間、とても熱いものが体の奥ではじけるのをサクラは感じた。
とても熱く、そして温かい。
ぬるりとしたそれが自分の身体に染み込んでくる。
もっと染み込んでしまえばいい、拭っても拭ってもとれないくらい、自分の身体の奥深く、心の中にまで染み込んでしまえ・・・・・・
薄れゆく意識の中でサクラはそう願った。

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それ以来、羽を取り戻すたびに小狼はサクラの身体を求めてくるようになった。
結局、自分の選択が正しかったのかどうかサクラは未だにわかっていない。
二人の関係はあれから何も変わっていない。
ただ、羽を取り戻した後の一夜、体を重ねるようになっただけだ。
体を重ねている時は特別な想いが二人を結びつけているような気もするけれど、それが本当の想いなのか、快楽によるものなのかの判断などサクラにはできない。
小狼もそれ以上の真実を語ってはくれない。
それでもサクラはよかった。
何もわからなかったし、何も変わっていないかもしれないけど、二人だけの秘密ができたからだ。

「姫、わかってますね。このことは黒鋼さんにもファイさんにも秘密ですよ」
「うん。わかってるよ。こんなこと誰にも言えないよ・・・・・・」

小狼がこう言ったのは自分のしたことへの後ろめたさか、あるいは今後もサクラの身体を自由にしたいという欲望のせいだったのかもしれない。
サクラにはどちらでもいいことだ。
二人だけの秘密、二人だけが共有する時間。
二人の間に生まれた新しい関係。
それがサクラには嬉しかったのだ。
たとえ、それがどんなに歪んだものであろうとも・・・・・・

そして今日もまた。

「あぁ、さくら! さくらぁぁっ!」

小狼が自分のことを「さくら」と呼んでくれる。
それがなによりも嬉しいのだった。

NEXT・・・・・・


あと少しだけ続きます。

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