すっぱいぶどう
世界迷作劇場その11 すっぱいぶとう1
キャスト
きつね:さくらいぬ
???:小狼
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むかしむかしのその昔。
お腹を空かせたきつね?がとぼとぼと歩いていました。
「わんわん! さくら、お腹が減ったよ! わん!」
お腹が減ってるわりにはずいぶんと元気そうなきつねさんです。
そんなきつねさんがさらに歩いていると、おいしそうなぶどうが枝から成り下がっているところに通りかかりました。
「わんわん! おいしそうなぶどうだよ!」
さっそくぶどうに飛びかかろうとするきつねさんでしたが、ぶどうはきつねさんよりもかなり高いところにありなかなか手が届きません。
ぶどうの下でぴょんぴょん飛び跳ねたり、爪先立ちになったりとがんばりましたがダメです。
しばらく、じーっとぶどうを眺めていたきつねさんでしたがあきらめたのでしょうか。
そのままどこかに行ってしまうのでした。
なんにも悪態をつかずに去ってしまうのはなかなかいさぎよいですね。
イソップ童話のきつねさんとは大違いです。
……と思ってましたがどうも違ったみたいです。
きつねさん、ずるずるとなにやらひっぱって再びぶどうの下までやってきました。
どうやらダンボールの箱みたいですね。
これはやはり。
思ったとおり、ぶどうの下にダンボールの箱を設置したきつねさん。
そのままダンボールにのっかるとまたぴょんぴょんちぶどうへのチャレンジを始めました。
「わんわん! さくら、ぶどうを食べるよ。わん!」
なんともチャレンジブルなきつねさんです。
しかし、このきつねさん、他のきつねさんに比べてもちょっとちっこいのが見ててハッキリわかります。
ダンボールで高度を稼いだもののまだぶどうには届きません。
「むぅ〜〜。わん!」
さらに険しいお目目でぶどうをにらみつけるきつねさん。
ついにあきらめたのか、のろのろと後退していくのでした。
これでも悪態をつかないあたり、このきつねさんはやはりイソップ童話のきつねさんよりもいい子なのでしょう。
……と思ったらこれまた違ったようです。
ダンボール箱からかなりの距離をとったきつねさん、そこから全力ダッシュでダンボール箱へと突進!
ダンボール箱を駆け上がり、その勢いを利用してジャンプ!
ぱしっ
「やったぁぁ〜〜。わん!」
ついにぶどうをとってしまうのでした。
いやあ〜〜たいしたきつねさんです。
「いっただっきま〜〜す。わん!」
苦労して手に入れた宝物の味わいは格別なものでしょう。
……と思ったのですが。
「わぅぅ〜〜〜!?!? ぺぺっ。す、すっぱ〜〜〜い」
やっとの思いで手に入れたぶどうは見た目に反してまだ熟しておらず、すっぱいぶどうなのでした。
これにはさすがのきつねさんもがっくし。
「うぇぇ〜〜ん。せっかくとったのに〜〜。うぇ〜〜ん」
ぽろぽろと涙を流して泣いてしまうのでした。
「やれやれ。なにをやってるんだか」
そこに現れたのはきつねさんのご主人様の小狼くん。
これまたずいぶんと調子のいいタイミングでの登場ですが、飼い主バカの小狼くんのこと。
おそらく、物陰でずっとさくらを見守っていたのでしょうね。
飼い主バカもここまでくるとたいしたものです。
「ふぇぇ〜〜ん、小狼く〜〜ん。ぶどうがすっぱいよ〜〜。おいしくないよ〜〜。ふぇぇ〜〜ん」
「よしよし、もう泣くな」
「でも〜〜。ふぇぇ〜〜ん」
「ぶどうはあとで買ってやるから。いっしょにお家で食べような」
「ぐすっ、ぐすっ。うん……」
こうしてがんばったものの、結局ぶどうを食べられなかったきつねさんは小狼くんに抱っこされてお家に帰っていくのでした。
めでたしめでたし?
今回の教訓:
苦労しても報われないこともある。
でも小狼くんに抱っこしてなぐさめてもらったから結果はOK?
その2
続く。