サクラ闇に降り立った天才
〜無色の闘牌〜

究極のクリア鷲巣麻雀!



キャスト:
アカギ:さくら
鷲巣様:小狼
安岡:知世
仰木:ケルベロス
岡本(鷲巣様部下の白服):偉

その他例によってわけのわからんキャストでお贈りします。

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〜〜前回までのあらすじ〜〜

平成10年。
多摩山中、人気のない森奥深くにそびえたつ豪邸。
陽が落ち光射さぬそこは、その場にそぐわぬ異様な熱気に昂ぶっていた。
熱気……いや、熱……
熱と呼ぶにはあまりにも異様なその昂ぶり、興奮、気勢……!
それはその場に集まる異相の者たちの体から放たれる「なにか」。

彼らが昂ぶっていることは間違いない。
しかし、それは世間一般でいう興奮や熱気、そういったものとはあきらかに違う。
なにか。
もはやそう呼ぶしかない、通常の人がはなつものとは一線を画したなにか。
人畜無害な大衆から遥か遠くにかけはなれたところにしかありえないなにか。
そんなものを放つ者がまともな人間であるはずもない。
人であることやめ、大衆が掴めぬなにかを得んとする者。
金、愉悦、快楽、至高、興奮……
しかれたレールの上を歩くサラリーマンには無縁の「なにか」を得ようとする者の集団。

口を開いたのは豪奢な椅子に腰かけた青年である。
豪奢な椅子に劣らぬ高級な衣装、雰囲気。
その場に集う他の者たちに対してあきらかに立場が上、それも格段の差を感じさせる男。
どうやらこの男がこの集いをしきる者であるらしい。
背後にいる白服の男たちはこの男の部下のようだ。
身に着けたものに負けぬだけの気品を感じさせる男。
しかし、どこか普通でない異様としか言い表せぬなにかを感じさせる男である。

「そう固くならなくていい。やることは簡単だ。麻雀だよ麻雀」
「…………」
「東風戦6局で持ち点を競う。ごくありふれた普通の麻雀だよ」
「…………」
「地方麻雀のような特別な役もしばりもない。そこらの雀荘でやっているのと同じ麻雀さ」
「普通の麻雀ならこんなところでやる必要はないよね」

言葉を返したのは青年の対面に座る少女。
ショートカットのよく似合う、可憐な少女だ。
年相応の可憐さを纏った少女ではあるが、青年に負けぬ強い光を宿したその瞳がやはりこの少女も只者ではないと告げている。

「お前の言う通りだ。今言ったところまでは普通の麻雀だ。だが、普通の麻雀とは少しだけ違うところがある。それは……」
「賭けるものが違う、でしょ?」
「ほう。どうやら理解はしているようだな」
「お金なんかじゃない、別のものを賭けろっていうんでしょ?」
「その通りだ。オレは金を賭ける。お前が勝てば2000万か3000万? 生涯働いても手にできない金を得ることができるだろう」

※平成10年の2000万は現在の2億。

「だが、お前には別のものを賭けてもらうことになる」
「魔力を賭けろ……というんでしょ?」
「ククク……よく理解している! その通りだ!」

少女の答えに満足したのか、青年が不敵な笑みをその頬に浮かべる。
心底、感じ入ったと言わんばかりの笑みではあるが、そこから溢れるものは笑い、喜び、そういったものとはまた別のなにか。
そう、仮に獲物を見つけた狼が笑みを浮かべるとしたらこのようなものではないか、そう思わせる笑みであった。

「だがそれだけじゃないぞ。それだけではまだまだ面白みが足りないからな。この勝負にはこの牌を使う」

言いながら青年は卓の上に牌を並べる。
象牙を使ったと思われる一目で最高級品とわかる牌である。
しかし、高級であるという以外には特に目立った特徴は見当たらない。

「これを使うの? 普通の牌に見えるけど」
「いいえ、さくらちゃん。数が少なすぎますわ」

そう言ったのは少女の右、下家に座する少女。
長い黒髪を垂らした聡明そうな少女だ。
この少女が最初の少女とコンビ打ちをするつもりらしい。
黒髪の少女の指摘通り、青年が並べた牌の数は少ない。
見たところ1種4牌のうちの1牌しか卓の上には出ていないようだ。

「どうやら各牌1つずつしかないようですわね。つまり……残りの3牌に何かの仕掛けがあると?」
「理解が早くて助かる! その通り! 残りの牌は……これだ!」

じゃららっ!

叫びと共に青年が卓の上に放り投げた牌。
その材質は……

ガラス!

背後が透けて見える……透明な牌!
透明!
無色!
クリア……!

一点の濁りもないクリアな牌……!
待ちを隠すという牌本来の機能を完全に無視した……狂気溢るる牌!

「これは……!?」
「ガラス? ガラスの牌!?」
「これを使うの? でも、これじゃあ待ちが丸見えじゃ……」
「そうだ。今夜の勝負にはこの牌を使う。この透明な……裏から見通せる麻雀牌を混ぜて行う……」

青年の笑みはさらに深まる。
もはやその本性を隠そうともしないその笑みは。
獲物を見つけた肉食獣のそれ!!

「やれば分かるが……これでやると勝負が煮詰まるんだよ」
「…………」
「当然だな。今まで歩いていた場所が地雷の巣と知ったら……人は立ち止まる! 歩けない! 踏み出せない! その先へ至る一歩を!」
「…………」
「いうならこの透明な牌はその地雷を浮き彫りにするための仕掛け……どうだ、なかなか面白い趣向だろう?」

青年の言葉も耳に入らなさげに少女達は牌を見つめる。
無理はない。
キラキラと輝くその牌は内に秘めた狂気の意志を抜きに見ればまるで光る宝石であるかのように美しい。
少女たちが見惚れるのも当然のこと。
手に取ってしげしげと牌を見つめる少女二人。
が、二人同時に不意に何かに気付いたかのように声を上げる。

「あれ? この牌……」
「こうして見るとたしかに透けてますわね」
「うん。でも」

くるり。
手にした牌を裏返すサクラ。

「こうしても向こうの絵柄は透けないの」
「クククク。気付いてくれたか。そうだ、それこそ李一族の秘伝、クリア麻雀牌だ!」

なんという不思議な牌であろうか。
牌の材質は極めて透明度の高い……おそらくは水晶と思われる素材である。
表、裏、どちらの面から見てもその向こうの光景がハッキリと見える。
にもかかわらず……どちらから見てもその裏面の柄を見ることができない。
表から見えるのは牌種を現す絵柄のみ……
裏から見えるのは李一族の紋と思しき小さな印のみ……
見えない……裏面の柄が!
どちらか一方向からしか光を通さない単位相指向性のガラスは存在する。
しかし、どちらからも光を通すにも関わらず裏面の柄は見せぬなどという摩訶不思議な素材は存在しない。
なんという奇跡……!
なんという不可思議……!
まさに魔法の牌…………魔雀牌!!
奇跡の牌にうたれ声も出ないかに見える二人と一匹。

……が。

「う〜〜ん、でもこれだと裏の絵柄が見えないから普通の麻雀牌となにも変わらないよね」
「そうですわね。普通の麻雀ですわ」
「あ……」

シ―――ン。

ざわ……ざわ……
  ざわ……ざわ……

「あほかぁぁぁ〜〜〜! なんやその牌は! 何の意味もないやないか〜〜! こんなところまで来させてなにやっとんのや、小僧〜〜!!」
「そうだよね〜〜。これ、見かけだおしだよね」
「やれやれ。少しは成長したのかと思いましたけど。やっぱり李くんの残念さは新シリーズになっても変わらずですわね」
「う、うるさ〜〜い! と、とにかく勝負だ〜〜!!」

なしくずしに切って落とされた勝負の幕!
長きに渡る(注:連載期間20年に対して劇中時間半日)死闘が今、始まる!

続く……


鷲巣麻雀完結記念!(まだ終わってない?)
クリアカード→透明なカード→透明な麻雀牌→鷲巣麻雀!
という思いつきだけのネタ。

しかし!
鷲巣様を甘く見てはいけません。
「アカギ ざわ・・ざわ・・アンソロジー」 (近代麻雀コミックス)ではCLAMPの先生方も主人公のアカギには目もくれずに鷲巣様押し!
鷲巣様萌えマンガという前人未到の狂気の逸品を披露。
作中に溢れる鷲巣様への愛。
CLAMPの先生方をこうまで魅了する鷲巣様の比類なき魅力!
みなさまもぜひご覧ください。
鷲巣様こそ福本作品最高の萌えキャラと断言します。

スピンオフ作品、「ワシズ 閻魔の闘牌」もおススメ。
麻雀の奥深さを思い知らされます。(違う)
ワシズコプター!

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