大羊の恐怖

錬金術で作ったにかわ一ダースが競売所で売れて、所持金は10,126ギルまで持ち直した。10,000ギルを切ると酷くプレッシャーを感じてしまう私、取りあえずホッと一安心。でも余裕があるとはとても言えない。……またオニオンマラソンか？

別のクエストを解くために、レベル20のシーフにジョブチェンジ。北グスタベルグを駆け抜けて、コンシュタット高地へと移動した。

青空の下の草花が美しい。羊ものんびりと過ごしている。

黒い雲が空を覆い、稲光が空を輝かせることも多いコンシュタットだが、今日はとてもいい天気だ。レベル20ともなればここの敵に襲われることはほとんど無い。のんびりと散歩気分で高原を走る。バストゥーク出身で、灰色のグスタベルグから初めてここにやってきた冒険者は、この豊かな高原の景色にさぞかし驚くのだろうなぁ。

クエストをクリアするためにこの高原で求めているのは、一つの「道しるべ」だ。幾つか設置されている道しるべの中に一つだけ、クエストアイテムが隠されているものがあるらしい。道しるべはその存在意義故に、普通は道が分かれているところに立っている筈だ。マップを開き、道の分岐点の場所を確かめながら一つ一つ確認していく。

と、行く先に一際目立つモンスターを見つけた。巨躯を震わせて冒険者と戦う大羊、その名も「Rampaging Ram」。知ってはいたが、念のため「調べる」。「強さは計り知れない」……ノートリアスモンスターだ。一人のヒュームの女性が戦っていた。拳を豪快に大羊に叩き込む。モンクだった。

戦いの様子を見ていると、一人のタルタルが側に立ち止まった。ドルシネアとタルタルの二人が見守る中、見事モンクは大羊を打ち倒した。タルタルが拍手をしてモンクを賞賛する。慌ててドルシネアも拍手を続けた。「ども♪」と返し、しゃがんでヒーリングに入るモンク。タルタルは走り去った。

Sayで喋ってみる。
「この辺に出るんですねぇ」
「うん★」
「バスに来て、初めて見ました＾＾」
「あら♪」
記号系の彼女と、手を振り合って別れた。

「当たり」の道しるべを求めて、コンシュタットを駆け回る。道の分岐点はあらかた廻ってみたが、どれも外れだった。となると分岐点に関係なく、何処かポツンと立っていたりするのかな。それはやっかいだ。少し焦りを感じながら、あてもなく歩く。ふと、そういえばバルクルム砂丘から来たときに見たような気もする、と思い、足を北へと向けた。

と、丘の陰から再び巨大な羊が現れた。「Tremor Ram」。ノートリアスモンスターではないが、コイツも相当強い筈。「調べ」てみたら、「強い」と出た。これはまたやっかいなモンスターがいるものだ、コンシュタット高地。

先程と同様、一人の冒険者が既に戦っていた。先程のモンクさんはかなり余裕を持った戦いだったが、今回はそれほど楽勝ではないようだ。とはいえ双方の体力を見比べると、その優劣は明らか。問題なく冒険者が勝ちそうだ。少し離れたところで見物させてもらうことにした。

と、大羊が特殊攻撃を繰り出した。

もわわーん。おっ、なんだか鳴いてますよあの羊。

とのんびり構えてたら、なんとドルシネアもこれを食らった。こんな遠くまで届くのか！ 迂闊！ そしてその攻撃の効果は……MAX HPの減少だった。ドルシネアの最大体力が、305から70台にまで減らされている！ そしてこの攻撃が致命的だった。あっという間に羊と戦っていた冒険者が死亡……。

あらら殺されちゃった、残念……。でも助けに行ける訳もないしな……そしてこのままここにいると、私も危険なんじゃないかい？ 体力を回復させつつ、息荒い大羊がのそのそと歩き始める。……丘の向こうに消えていった。取りあえず、私は一安心。

とはいえ、この体力では「楽」なゴブに絡まれたりすると万が一もあり得る。いつになったら元に戻るかなと少し途方に暮れながら、その場に立ち尽くしていた。死んでしまった冒険者さんは、その場に倒れたままホームポイントに戻らない様子。レイズを使える白魔道士さんが通りかかるのを期待しているのかな？とか思う。しばらくして体力が元に戻った。冒険者さん(の死体)に敬礼をして、その場を立ち去ろうと回れ右をした。

そこに、道しるべが立っていた。うお！こんなところにもあったのか、気付かなんだ！ と調べてみると、やはりそこにクエストアイテムがあった。無事回収完了！ すると、二人の冒険者が丘の向こうから駆けてきた。死して倒れている冒険者さんのところへと走っていく。一人、また一人。次々と冒険者が現れる。皆、同じ色のリンクパールを付けていた。なるほど、どうやらリンクシェルの仲間に助けを求めていたようだ。

総勢八名ほど駆けつけただろうか。いい仲間を持っているみたいだ。彼等に背を向けて、ドルシネアは帰途に就いた。

SIX丸藤 six-heavenscope@memoad.jp