実験結果の考察
以上の測定結果より
@1/4λで共振している同軸ケーブルは直列共振回路と等価で、先端オープンでは高周波的にショート状態になる、逆に先端ショート状態では並列共振回路と等価でインピーダンス最大でオープン状態と等価になる。
A同軸ケーブル本来の短縮率が適用されるのは中心導体と外側導体の内側のみで電流は互いに逆向きの時のみである。
Bアンテナエレメントやラジアルエレメントとして使用する場合は電流が同相となり本来の短縮率は適用できない、また外側導体のみがエレメントとして動作し短縮率K=0.9ていどになる。
が確認できました。
次は図1のアンテナを実際に動作するか検討します。
同じものを図9(A)にもう一度示します。このアンテナはすべて長さ1/4λで先端オープンの組み合わせになっています。これは図8(B)のように直列共振状態であるため給電部側はインピーダンス最小でショートじょうたいです。図8(C)のように書き換えできます、無線機側から見ればショート状態でSWRは無限大になり使用できません。逆に先端をショートすると給電部側インピーダンスは最大になり無線機側からはオープン状態と同じでこれもSWRは無限大になり使用できません。
図10(A)は以前CQ誌に出ていたラジアルに同軸ケーブルを使用した3.5/3.8MHz帯アンテナの記事ですが、ラジアルとして3.5MHz帯、3.8MHz帯にそれぞれに共振した先端オープンの1/4λ同軸ケーブルをSWで切り替えています。しかし1/4λ同軸ケーブルは先端オープンの場合図10(B)のように直列共振状態で給電部側をショートしていることになります。これを書き換えると図10(C)となり同軸ケーブルはラジアルとしての動作は全くなく保安アースで何とか接地型アンテナとして成り立っていると思われます。同記事中保安アースの引き回し方でマッチング状態が変わるとの内容がありますがこれも納得できます。
結論として
@同軸ケーブルをアンテナエレメントやラジアルエレメントに使用する時は、短縮率K=0.9ていどの単なる電線として外側導体のみ使用できる。中心導体は外側導体に接続してもしなくても影響はない。
AU/VHFで同軸コーリニアアンテナを作る場合は短縮率K=0.9程度の同軸ケーブルでないと製作できない。
空気を絶縁体とした同軸ケーブルがあれば可能で同軸コーリニアではなく同軸タイプコーリニアアンテナになります。
Bダブルバズーカアンテナは1/4λの同軸ケーブルと先端に電線をつなぎ全体として、1/2λダイポールアンテナとしたもので、1/4λ同軸ケーブルの先端はショートしています。しかし給電部側から見れば1/4λ同軸ケーブルは先端ショートの場合は並列共振時と等価でインピーダンス最大になります。この時無線機側から見ればオープン状態と同じです。共振周波数ではハイインピーダンスのため接続されてないのと同じことでアンテナとしての動作は同軸ケーブルの外側導体と電線とがエレメントとして動作していると想像できます。
最初ダブルバズカーアンテナを考えた人は、1/4λより短い同軸ケーブルと電線の組み合わせたエレメントで製作したのではないでしょうか?
1/4λより短い同軸ケーブルは容量性リアクタンスであるためコンデンサとして給電部に並列に接続されたことになり共振周波数が下がるのでエレメントの長さが短縮できることになります。ただ給電部のインピーダンスも低下するため何らかの補正が必要になりますが。これがいつの間にか同軸ケーブル部分の働きが理解されないまま1/4λの長さに変化したのではないかと想像します。
近日中に追試してみる予定です。
お読み頂ありがとうございました。本記事はHAM JournalNo113の内容を一部変更したものです。