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Secret investigationg


4月14日。
あと一週間で白石蔵ノ介、15歳の誕生日を迎える。
彼女ができて初めての誕生日だ。
しかし、ここ最近彼女の態度がおかしい事に白石は内心焦っていた。




焦っている、というよりは不安だった。
理由は簡単。彼女が何か自分に対して隠し事をしてるという事だった。
彼女は必死に隠しているようなのだが、普段からあまり嘘が得意でないために白石からすればバレバレだった。
そしてその相談をテニス部の連中には話しているという事実。
別に彼女にだって言いたくない事の一つや二つくらいあるだろうし、それを無理矢理話して欲しいとは思わない。
ただ―自分にだけ話してもらえないのが不安だった。
何か悩んでいるなら力になりたいのに―。
そんなに自分は頼りないのだろうかと、白石はガックリと肩を落とした。


彼女の名前はという。
告白をしたのは白石からで、は小さく笑いながら頷いてくれた。その時の気持ちは言葉では表せないほどで。
テニス部のマネージャーになってくれるという事も承諾してくれて、財前という新入部員も入り、廃部の危機も免れて…。
…順調だったはずなのに…。

(…まさか別れたいとか!?うわ、そんなん言われたらどないしよ…)

そんな事を考えながら、部活へ行くために部室に足を向ける。
部室に入るとき、中からと小春の声が聞こえた。

「ねぇ、どう思う?」
「ん〜そうねぇ…」
(…あの二人、そんなに仲良かったんか?)

そう思ってしまうほど、二人はとても楽しそうに話をしていた。
その光景から目を離せずにいると、「白石部長?」と、後ろから声がして振り返ってみると、そこには財前の姿。

「…部室、入らないんスか?」
「あ、ああ…入る、入るて」

ほんの少し動揺しながらも何とか返事をして、二人は挨拶をしながら部室へと入った。
そこで白石を見るなり、二人の会話はピタッと止んだ。
は俯き、小春はニコニコ笑って白石を見るだけ。

「…随分楽しそうやったけど、なんや良いことでもあったんか?」

何気ない感じを装ってにそう聞いてみるが、は俯いたまま…。

「…内緒」

そう、答えた。
は「ドリンク用意するね」と、そう言って部室を出て行った。
に続き小春も腰を上げて、笑顔のまま白石に近づき耳打ちする。

「…そんなに怖い顔しないで、蔵リン。のことは心配しないで大丈夫よ」と…。

その言葉に目を見開いた白石。小春はそんな白石を残して、先にコートへと駆けていった。
しかし、その次の日も…。

「…で、意見を聞かせて欲しいの」
「意見て言われても…本人に直接聞いたらどうっスか?」
「それじゃ意味ないの」
「そんなん、俺は解りませんて」

今日は財前に。
それでもは「ただの世間話だから」と言って笑う。そこで笑われてしまっては白石は何も言えない。
に避けられている訳ではない。別れたいという素振りはない。
では、そこまで何を隠したいのか。
漠然とただ不安だけが大きくなっていく。


「…俺、が何を考えてんのか解らんわ…」

白石は机に顔だけ上げて項垂れながら、目の前にいる千歳に話しかけた。
千歳はこんなに落ち込んでいる白石は珍しいと白石の頭にポンと手を乗せた。
その行動に「何やねん」と、視線を千歳に向けた。

「そげん事、気にする事なか」
「小春にもそう言われたんやけど…無理や、そんなん…」
「大丈夫や。そん問題はもうすぐ解決するったい」

何故か自信満々にそう言う千歳。そんな千歳にジト目を向ける白石。

「何でそないな事言い切れるんや…」
「何でて…は誰かさんの誕生日のために頑張っとるだけったい」

キョトンとしながら言った千歳に、さらにキョトンとした白石。

「……誕生日?」

その言葉に頷く千歳。
そのまましばらく固まったように考えた後、ハッとした。

(そういや、今週俺の誕生日や…。もしかして…)

この考えが的外れじゃなかったら。
これまでのの行動がすべて俺のためだとしたら。
…まだ本人に確信した訳でもないのに、そうなんだとしたら…。
可愛くてたまらない。

白石はこの考えを確かなものに変えるために席を立った。
愛しい彼女の元へ向かうために。
教室を出る前に千歳に顔を向けて

「おおきに、千歳」
「はよ行きなっせ」


「えー…千歳君、言っちゃったの?もぅ、内緒だって言ったのに〜」

あれからを呼び出して、何を秘密にしていたのかを聞いたら、の第一声がこうだった。
それからため息をついて、肩を落とす。

「今週白石君の誕生日だから、何をプレゼントしたらいいか皆に訊いてて。当日まで内緒にしておきたかったのよ…。」

自分の考えが間違ってなかったことに安心した。
それからはいつものように小さく笑って。

「もうバレちゃったから、堂々とリサーチするね。誕生日プレゼント、何が欲しい?」

白石も先ほどの同様ため息をついて、それから力一杯を抱きしめた。
そのいきなりの行動には真っ赤になって慌てていた。
そんな姿さえも可愛くて、好きでたまらない。

「白石君…ちょっと苦しい…」
「うん…堪忍な。もう少しこうさせて」
「白石君…?」

少し心配そうな声を出して、それから小さく白石の腕の中に収まった
そして、そっと顔だけ白石の方に向けて。ほんの少し遠慮がちに。

「今週の誕生日…お祝いしようね?」

そのに白石はとびきりの笑顔を返して。

「もちろん二人きりで…やろ?」
「……っうん!」


彼女ができて初めて迎える誕生日。

どうやらいつもよりも、特別で忘れられない記念日になりそうだ。





END





update : 2012.04.04
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