ぼくの序盤・私の序盤

序盤の指し手とその後の展開を徹底究明!

 

 上の図は、周知のように将棋の初期配置である。ここから先手が第1手として指すことのできる手数がわかるだろうか。正解は30手である。(歩・玉・金・銀・飛・香が移動可能)指し手が進むにつれ、指せる手の種類は膨大に増えていく。その中で最も価値のある手を探すことこそが将棋の醍醐味である。だが、将棋は勝敗を決めるという性質を有する以上、勝利に向けて価値のある手が求められる。すでに詰んでいる状態で最善手を求めても何の意味も無い。

 勝利に向けての第1歩は初手から始まっている。初手から最善の手を求めていかなければならない。漫然と指すことなど許されないのである。では、この30手の中からの最善は果たして何か?ということになる。

 一般的に、初心者へ指導をする場合は「大駒を働かせることが大事だ」とは誰もが言うことである。ということは、最善手は▲7六歩か▲2六歩ということになる。これはプロの世界でも認められていることで、プロ将棋界の98%は、初手がこの2つだ。(残り2%については別稿)

 さて、ここで初心者の手と思考がハタと止まる。相手が何か指してきた。では次にどう指せばいいのだろうか。ここから将棋の無限の可能性に触れた初心者は愕然とする。そして迷宮(ラビリンス)へと落ちていくのである。

 将棋には数多くの戦法がある。戦法の手順を定跡という。定跡とは先人が試行錯誤を重ねて導き出した最善の手順である。本格的に将棋の力をつけていくためには、定跡に触れることが不可欠である。自分で考えた我流の戦法が通用することはまずない。プロ棋界では、日々新しい戦法の是非が解明されているが、いずれも先人の定跡を基盤としているのである。

 私は初心の時、序盤に大きな疑問を感じていた。本で勉強したようにならない。最初の2手でその戦法が使えなくなる。あるいは4手で…。じゃあ、それが使えないときにどうするか。答えがわかったとき、強い人がどういう人なのかもわかった。「強い人は、どんな手順になろうと、自分の得意な形で戦える人なのだ」と。

 こうなったらこの戦法。ああなったらあの戦法。将棋の戦法の大半は序盤の数手で決まるのである。将棋の世界の全容が大まかにつかめるまでかなり時間がかかった。もう少し早く知ることができたら、より効率的に上達していたかもしれない。

 そんな思いもあって、この講座を作ってみることにした。ここでは序盤の1手目〜数手目に着目し、その指し手がどの戦法につながっていくのかを体系的に見ていく。なお、私の好みで解説に力が入りすぎるところと、全く解らないところが出てくるが、そのあたりはご容赦願いたい。

     

1)初手▲7六歩編    2)初手▲2六歩編