市長交際費を考える

 

 

武蔵野市の市長交際費については、一部の使いみちの違法性を裁判で争っているわけですが、そのほかに3つの大きな問題があります。

 

問題点その1 市長交際費の中身がさらに不透明になってきていること 

3年前の平成11年に請求して開示された、平成10年度市長交際費の文書(精算書)は、葬儀の花環や祝い金などの相手先を非開示として、黒塗り部分が非常に目立つものでした(下図は平成9年度のものの一部ですが、H10年も同じ傾向、H11年も以下に述べる異議申立てをするまで黒塗りが盛り沢山でした。比較のために請求したH9年の三鷹市、H10年の小金井市の例も示します。黒塗りの内容などを詳しく分析したレポートは身近な情報公開その2  このまちの市長交際費を解剖するをご覧下さい)。

 

武蔵野市

三鷹市

小金井市

花環などのついては、当時すでに相手先を公開せよとの判例があったので、武蔵野市の公文書開示審査会に異議申立てを行い、その結果申立てが認められ、相手先名の一部が開示されるようになりました(平成12年5月31日決定)。

しかし、その直後の平成11年度の10月の市長交際費の精算書から、もともとあった葬儀の花環などの相手先の名前が突如消えてしまいました。

なぜ、急にこんな書き方に変更したのか、市長に質問状を出して回答を求めました。市長の回答 

回答は「必要ないと思うからやめた」というものです。要するに審査会で、「葬儀の花環などの相手先を公開せよ」との答申が出ましたが、 とにかく名前を見せたくないので、もともとの書類から相手先名をなくしてしまったのです。こうすれば黒塗りもなくなり、見た目もいいので一石二鳥ということでしょうか。公文書開示審査会の権威は丸つぶれです。

こういうやりとりをしている一方で、その頃武蔵野市では、国の情報公開法制定の動きに合わせてかどうか、情報公開条例改正に向けて動き出してました。市側の改正の本当の狙いは、一部の人(私ではないのですが)からの大量の開示請求で、経費が掛かりすぎているので請求を制限したい、あるいは有料化したい、ということだったようです。(しかしその経費とは、黒塗りするための人件費と消耗品代が大部分、ということも市議会で明らかになりました----- 1999.11.30 : 平成10年度決算特別委員会第5日目 発言番号73:本間市議の発言、発言番号75:内田庶務課長の発言。

黒塗りが多いばかりでなく、他市にくらべて請求者が大変利用しにくい仕組みであるというのも問題でした(「身近な情報公開その1何で違うの3市の情報公開条例」参照)ので、とにかくよりよい条例にしてもらうため、私たちのグループ(@しみん)では、市議に働きかけたり、対案を発表したり要望を出したりしました。その結果かどうか分かりませんが、市議会議員の方々(特に野党---21民主、共産党、市民の党)も相当熱心に取り組んでくれたお陰で、形の上では市の原案よりもずっとましなものができました。

 

ところで現在(平成14年)ではどうなっているのでしょうか。

@   祝い金の相手先の店舗名などが消えている。

例:以前は、精算表に「ライブハウス 赤いからす新店主披露祝宴(H12/2/11)」というような書き方をしていたものが、今では「市内飲食店新店舗披露宴(H14/4/20)」と名前が完全に伏せられている。

 

A   葬儀の花環の宛先の個人名・続柄などが消えている。

例:以前は精算表に「元民生委員○○○○氏告別式生花代(H10/5/6)」という書き方をしていたものが、今では「商工関係者家族葬儀生花代(H14/.9/13)」「市内小学校元校長葬儀生花代(H14/8/28)」他など名前が全くわからない表記になっている。

B   宛先の個人名を不自然になくして書いている。

例:「関係国会議員家族結婚祝い金(H14/9/16)」「市内プロボクサー出場試合チケット代(H14/7/15)」「近隣市元市長葬儀香典(H14/8/1)」「商店会役員家族結婚祝い金(H14/6/9)」他

 

C   市長交際費を月々前渡金として収入役から受け取り、経費を管理する のは、今までは「秘書室長」、しかし今は「市長自身」の役割

交際費は急に支出を迫られることが多いので,前金で一定額をストックしておく必要があります。、今まで、市長交際費を収入役から前払いで受け取る、「前渡金受け者」と言う役割を担っていたのは秘書室長でした。しかし、平成14年から急に武蔵野市長自身がこの事務仕事を遂行する担当となっています。収入役から前渡金を もらい、銀行に預けたり、支出を出納帳に記載する事務仕事を忙しい市長ができるのでしょうか?他の自治体を調べてもこんな例は見つかりませんでした。

結局のところ、黒塗りが多いと言われれば、相手の名前を書くことをやめてしまい、一見何も隠していないように巧妙に取り繕う、秘書室長が市長と共に裁判の被告にされれば、市長がカッコよく全責任を取り部下を庇うように見せる---只々うるさい連中から足を引っ張られないように、クレームをつけられないように、ガードを固めているということに過ぎません。

いくらよい条例が出来ても、トップにその気がなければ、何も良くならないといういい例でしょうか。

 

 
問題点その2 武蔵野市市長交際費の総額は他市を引き離して断然多いこと

 

平成12年度で見ると、武蔵野市の市長交際費の決算額は約787万円で、市の歳出総額約540億円の0.0146%でした。全体からみれば大した額ではないようにも思われます。

 しかし、この年の都内23区・25市(西東京市を除く)の決算額で比較すると、歳出総額比ではお金持ちの千代田区0.012%を抑えて堂々(?)第1位でした。金額でも大田区の815万円に次いで第2位、第3位の世田谷区は711万円ですが、それ以下は全て500万未満でした。「都内48自治体の首長交際費ランキング」参照)

ところで自治体の中にはでは、インターネット上で首長交際費を公開しているところが数多くあります。

 

  インターネット上で首長交際費を公開している主な自治体
都道府県知事 北海道知事    宮城県知事   長野県知事   三重県知事 大阪府知事  高知県知事   他
市・区長  武蔵野市長   狛江市長  多摩市長 横浜市長  草加市長  船橋市長 木更津市長  市原市長  四日市市長   吹田市長  西宮市長 八尾市長  岡山市長   松江市長  松山市長  熊本市長   佐賀市長   他      

これを利用して調べたところ、平成12年度長野県知事91万円(歳出総額1兆605億円)、平成12年度高知県知事276万円(歳出総額6,045億円)、平成13年度岡山市長133万円(歳出総額2,286億円) などといった具合です。 財政規模、人口など、これらの自治体に比べてはるかに少ない武蔵野市の方がずっと沢山遣っているのがわかりました。

ちなみに長野県では全部局の交際費の、高知県では全部局の交際費全部局の食糧費の、埼玉県草加市では 全部局の交際費の 、千葉県船橋市では 市長の食糧費の執行状況もネットで公開しています。

              都内などの他の自治体と数字を比較して表にしてみました。  

  人口   歳出合計   首長交際費
  H14年統計) H12年度決算) H12年度決算)
武蔵野市   13.1万 540億円 788万円
三鷹市 16.4万 526億円 321万円
調布市   20.3万 661億円 310万円
小金井市   11.0万 312億円 183万円
杉並区   50.8万 1442億円 195万円
練馬区   67.4万 1950億円 281万円
多摩市  14.1万 491億円 215万円
横浜市   350.2万 1兆3708億円    ※43万円

                  

※横浜市は H14.4月〜11月の 6ヶ月分 (中田市長就任後  

やはり武蔵野市の金額の多さは際だっています。横浜市では、平成 14 年 6 月以降、弔花を除き市長交際費から葬儀への香・供物等の金品の支出は止めました。

 

 

問題点その3 バブリーな武蔵野市には危機感がないこと

 

更に問題があります。バブルがはじけて以後、多くの自治体では民間に比べて遅ればせながらも支出の削減を実行しています。勿論首長交際費も例外ではありません。ところが、近隣の3つの自治体と共に20年近くの交際費の推移を比較してみたところ、武蔵野市では他の市・区と違い、平成12年度まで800万円前後のまま殆ど変化がありませんでした。特にバブルがはじけて以後がそうです。  (平成13年度になってやっと100万ほど減らしました)。

 

このように首長交際費支出には、自治体やそのトップの税金の使い方が見えてきます。交際費に問題があれば、それ以外の支出にも疑問がわきます。

右肩上がりの時代は二度と帰ってきません。民間が血みどろの努力をしている時、役所や銀行にも、市民にばかりシワ寄せしないで、本気で支出削減、債務返済に取り組んでほしいものです。