美術科(寄木細工)

平成161029日実施

授業者   NT 教諭

文責  高橋 晋作

【授業の様子】

T:「今日は新しいところに入る前に、これについて考えて作って欲しいなあというところがありますので、今日は皆さんにそれについてやってもらいたいと思います。」

列ごとに学習プリントを渡す

T:「渡ったらすぐに名前を書いてください。書いたら顔上げてください。えーとそれでは、“筆入れよいところ探し”を今日はやってもらいます。えーとオリエンテーション(4月)でも筆入れの話をしたことは覚えていますか?覚えていますか?」

S:はっきり覚えているという生徒は少ないもよう

T:「どんな話しました、先生」

H:ぼそぼそっと話す

T:「あ、Hさん言ってみて」

H:「なんか、筆箱を選んで買っている時点で、美術の力を使っているとかなんとか・・・」

T:「はい、そういった話をしました。覚えていますか。皆さんいろんな筆箱を持っています。いっぱいの中からこれだ!というものを選んでいます。中には、お金がなかったからこれしか買えなかったという人もいますけども、それを買ったというのは、みなさんが自分の好みを見つけて買ってきたということです。それでですね、今日は自分の筆入れをとことんみてもらって、いいところ探して欲しいなあと思います。

 では、(学習プリントの)1番、2番、3番を読みますので、プリントの方を見てください。1番、自分の筆入れを見て、なんでこれを買ってきたのか思い出して欲しいなあと思います。2番目、皆さんが持っている筆入れの機能、機能ってわかりますか?機能ってわかりますか?働きです。皆さんが持っている筆入れの使いやすいところを見つけて欲しいなあと思います。3番目、皆さんが持っている筆入れで、美しいなあと思っているところ、またはかっこいいなあと思っているところ、または、面白いなあと思っているところを見つけてください。いいですか、まずは、1番から3番までを、自分で中を開けたり、いじったりしながら、3点をちょっと考えてみましょう。時間は、1155分くらいまで考えて見ましょう。」

S:個人ごとに、自分の筆箱をみて考え、文章でまとめる。

T:教師は、生徒の様子を歩きながら見守る。

やや、時間が長すぎる感がする。あまり、生徒の筆入れにバリエーションがないこと。文章での表現が、一定であることがあげられる。

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T:「ちょっと悩んでいる人もいますが、次の進んでいきたいと思います。それではですね、ちょっとね、これから班ごとに自分の筆入れを紹介して欲しいなあと思います。自分の筆入れがのここが美しくて、ここがよくて買ってきましたと発表してください。自分はここがいいと思った、ここが美しいと思うというように、皆さん自信を持って、班になって発表して欲しいなあと思います。いいですか?やりかたはですね、班ごとに席になってもらいます。班長さん、司会または誰か司会を指名してください。司会進行をしてもらって、一人ひとり1番から3番までを発表してもらってください。聞いているみなさんはですね、友達の筆箱をみながら、その意見を、ポケットがいっぱいついていて使いやすそうだったというものがあったらね、その通りだと思った、とか、友達が気づいていないようなところも使いやすいよとか、いいところを探してください。この付箋紙に(感想を)書いて渡してあげてください。ということで、今日、ミニ展覧会をします。ね、わかりました?わかりました?じゃあ、ちょっと班長さん来てください。」

班長を集めて、付箋紙を配る。そして、司会の決め方について指示を簡単に出す。

付箋紙は、一人1枚ですか?という質問がでる。それに対して、一人1枚という指示を出した。

T:「それでは、班になってはじめてください。」

S:机をグループごとにつけて、話し合いをはじめる。

例:「ポケットがあって取り出しやすい。」「カラフルで美しい」

手にとって説明するとか、中をあけてみるという発表ではなく、学習プリントを読む発表がほとんどであった。布とかプラスチックとかという、素材について発表する生徒はいなかった。付箋紙に感想を書くことを一生懸命に行っている。発表は、早い班では、5分くらいで終わる班。2班のように、活発な意見で、長くかかる班と分かれた。

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T:「それでは元の席にもどってください。それでは今まで皆さんの筆入れを見合ってね、紹介してもらいました。まだ時間があるので、紹介してもらうかな。」

生徒Mのところにいって、Mの筆入れの紹介をしてもらう。

Mが黒板の前に出て、発表。

M:「自分の筆箱の気に入っているところは、三角定規をいれるところが見えるようになっているからと、あまり使っていないけど、筆入れの横にボタンがあってかっこいいと思ったから。」

T:「これはどんな機能があるんですか?ボタンがついています。」

M:「わかりません」

教室全体、笑い

T:「ボタンをとっていいですか?はい、とりました。」

笑い

S:「何もおきない」

T:「ボタンをとると、(いれるところが)若干大きくなるな。」

授業者は、筆入れを手にとりながら、Mの説明を補助している。

M:「あと、みんなからもらった感想には、Kさんからは、収納がいっぱいはいるところがいいということで、Mさんからは、収納性抜群、なんとなくA型のMくんにあっている。あと、Yくんからは、網目のところがかっこいいでした。」

T:「先生も、Tくんと同じ、網目のところに惹かれました。」

T:「えーとそれでは、まとめに入りたいと思います。いろいろ感想を書いてもらいました。それらを見て、あらためて、自分の筆入れのよさを書いてください。付け加えて書いたり。」

 

自分の筆入れのよさを、再確認して本時は終了を迎えた。

 

 

【研究協議会での話し合いの様子】

 この授業も、同日行われた国語科の研究協議会同様、バズセッション(学年所属ごと)から行った。10分間のバズセッションを行った後、各学年主任から、出てきた話題について報告をしてもらった。

 【授業者へ質問したいこと】では、生徒が自分の筆入れから発見していく活動の中で、授業者があらかじめ期待していたことが出てきていたのか?という質問があった。これに対して、授業者からは、本授業のねらいは、「用(用途)と美」を発見していくことを期待していたことが話され、後半は、そのような点に気づいていた生徒がいたという話がでた。ただ、用と美というデザインのつりあいが、どちらの比重をかけていくのかが難しいという話になった。用と美の題材として、筆入れでなくてもよかったのではという考えもだされた。授業者は、その後、寄木細工で物を入れる箱を作らせるということで、身の回りにある筆入れを題材にしたという話しがでた。用と美がうまくつながっているものは、なかなかないが、生徒が使っていたなかで、あるメーカーのヒット商品『カドケシ』(消しゴム)が話された。デザインと用途がうまく、つりあっている例であろう。このような例を、授業者は本当は取り上げたかったのかもしれない。また、本時の中で、生徒がグループ討議をする場面を、かなり時間的に引っ張った点に対するその意図を聞きたいという質問があった。これに対しては、やや時間的な予想が甘かったということ。具体的には、もっとさまざまな発見が、生徒の側から出されるであろうと、授業者は予想していたことに反し、思ったより、生徒が見つけた発見は、そんなにバリエーションに飛んでいなかったこと。そのため、グループ内でのプレゼン的な活動が、短く終了してしまっていることが話された。付箋紙に感想を書かせて渡すという活動は大変面白いという意見もでた。ただ、付箋紙を使うとき、一人1枚でなく、一つの感想に対して1枚にすると、視覚的に感想の数を量的にとらえられること。感想の内容を類型するときに使いやすいことなど、紹介がされた。

 【全体での話し合い】では、同日に行われた、国語科(敬語)の授業との対比が話題のスタートになった。どちらの授業も、個人で課題に対して思考する時間が与えられ、その後グループでの討議にもっていくスタイルであったため、国語科と美術科でのグループ討議の様子の違いが話題にのぼった。その際、美術科の授業でのグループ討議の方が、やや生徒同士のつながりが薄いという点が指摘され、授業者は、そのような場合は、もっと積極的にグループに介入することが必要であろうという意見に集約した。また、うまく話しをつないでいた例として、2班にいた女子生徒Sについて、もう一度ビデオで検証しあいながら確認した。ビデオで見てみると、なるほど、この班は、もっともグループ内での話し合いが活発だったことが窺える。その要因として、Sが、ほかの人の筆入れの説明を補助していた。「どうしてその色を買ったの?」とか、「こういういい点もあるね」とか、発言をさらに深くさせる発言を多くしている。ただ、このSという生徒の個性ということもあり、全員にこれを期待することは難しいだろう。また、自分の筆入れのよさを、文章でまとめるだけでなく、イラストにするなど、まとめ方を多様にさせたほうがよいのではという考えもだされた。この点について、最後に研究主任から、ある本の紹介がなさている。最後に、時間が余ったからと、授業者がある生徒の筆入れを持って、その筆入れの「用と美」を交えた話をしたが、それが、生徒の活動の前に欲しかったということも話された。というのは、生徒たちがグループ討議で詰まってしまったのは、どんな風に話したらいいのかというモデルがなかったからではないかという話題になったからだ。教師自身が積極的にモデルを提示してあげる必要性を、この授業は教えてくれている。

 

 

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