国語科(討論ゲーム)

 

 

平成1778日実施

授業者 OJ 教諭

文責  高橋 晋作

 

【授業の様子】

教室を半分に分け、前方黒板に向かって左側と右側にそれぞれアーチ状にグループごとに机を並ばせている。中央は、授業者が座る。一方、発言する2つのグループ以外は、教室の後方に椅子に腰掛けている。自分の指示するグループの前に座る感じで配置している。この教室後方で聞いている場を、フロアと呼ぶ。

 

授業の前半、子どもが有利のグループと、大人が有利というグループのその根拠の主張が展開された。それぞれの質問とフロアからの質問が行われる。

生徒K(フロア):反対側に質問ですが、職業だけが夢ではないのではないですか。

これは、職業につくことが夢だから、もう職業についている大人は見れないという、反対側の主張を受けている。

反対側M:やはり、夢をみるというのは、実際問題どんな職業につくかということだから、夢は職業と考えていいんじゃないでしょうか。

生徒K:でも、仕事以外の時間を楽しく過ごすことも夢だと思います。やっぱり、職業とつくだけが夢じゃないと思います。

反対側M:でもお金や豊かな暮らしをするには、職業が必要です。

 

しばらく展開した後、授業者は、グループごとに作戦を練る時間を与えている。今回のテープ起こしは、それ以後からのものをする。

 

T:はい、じゃあ時間です。戻ってください。それでは、今までの意見のやりとりを踏まえて、最後の主張を各チームから言ってもらいます。それでは、賛成側からどうぞ。

賛成側生徒N:やっぱり私たちは大人の方が有利だと思います。それは、何よりも周りから信頼されているからということと、働いてお金をもらい、それを自由に使えるということです。子どもは、大人に何かをやる力も無いし、自分で働いてお金をもらえるわけでもないので、好きなものは、大人から買ってもらったり、おこずかいをもらわないと、何も買えません。おこずかいをもらっても、結局大人の稼いだお金であり、自分のお金ではありません。子どもは大人に助けられているのです。

賛成側生徒R:なので大人は権力があり、自由にお金を使えるし、家を建てたり車を買う夢を大人は持っていることから、普段の生活を楽しく過ごせると思います。だから大人が有利です。

T:まだ時間ありますけどいいですか?(生徒はい)はい、反対側の人最終主張を行ってください。

反対側生徒M:子どもは大人より有利だと思います。子どもは、働かなくてもお金がもらえます。でも大人は、働かなければお金はもらえません。子どもは罪を犯しても、その罪は軽くなります。このように子どもだからといって、許されることが多いのです。この国への税も大人が払っています。子どもは、消費税以外の税は払わなくても良いのです。それにおこずかいを貰っている人は、全体的に多かったし、そのおこずかいを自由に使うこともできます。そして、賛成側の方からもありましたが、運転免許などは18歳のこどもの人も取れます。

先ほどあった、フロアのKくんからの質問ですが、将来の夢は結局、ひとつだと思います。だから子どもが有利です。

T:はい。それでは、賛成側、反対側の最終主張も終わりました。それでは、フロアの皆さんジャッジしてください。それでは、移動。

いいですよ、1分間ありますから考えてください。

自分の賛同できる主張をしたグループの側に、移動する。

T:それでは最終のジャッジをしたいと思います。この子どもと大人では、大人が有利であるというテーマでは、賛成が14名、反対が7名のフロアの皆さんがいますので、今回は、賛成側の勝利となります。拍手。

生徒:拍手

T:それでは、フロアのみなさんから、どうして自分は賛成、反対の支持をしたのかということを、感想を交えて、発表してもらいます。

生徒C:はい(挙手)賛成側は、反論、質問するとき、相手の弱点をついていてよかったと思います。

T:あとはどうでしょう?ではHさん。

生徒H:Cくんと同じだけど、賛成側の質問がよかったのでそうしました。

T:はいわかりました。反対側の人でいませんか。

生徒T:最終主張で、子どもは働かなくてもお金が入るということで、人生は少しは楽をしたほうがいいとおもったからです。

T:今回は、子どもと大人は大人が有利であるというテーマでジャッジしてもらいました。次回から皆さん、それぞれのテーマで、どういうところを自分たちは今回を参考にできるか考えてみてください。

 

 

【研究協議会での話題】

 今回は、バズセッション(学年所属ごと)から行った。10分間のバズセッションを行った後、各学年から、出てきた話題について報告をしてもらった。

『授業者へ質問したいこと』では、デイベートをしながらメモをとるように授業者が作った用紙が縦書きだったことに対して意見が出た。縦書きで聞き取るのは、弱い。横書きの方が早くメモがとれるという話になった。

江間教授からは、デイベートのトレーニング法について指摘があった。トレーニングの仕方については、@反論を20個あげる。Aその中でいいのは、2〜3個。聞いた内容をメモできる技能が必要。そこで、メモの取りやすい環境作りが大切であるということだった。例えば、バインダーを使わせるということもある。

何気なくつくる用紙でも、このあたりへの配慮は、重要な点である。

『全体の話し合いで取り上げたい話題』での、話題の中心になったのは、どうして(デイベートで)勝ったのか、負けたのかを生徒に聞いてみるのは良いのではという点であった。この授業で活躍した、女子生徒Mに負けた理由を聞いてみたとき、「フロアに負けた」と語っていた。この実感は、的を得ている。それは、フロアにいた、KとMとのやりとりのことであった。そこで、一同、ビデオを通してその場面を、確認した。この授業では、勝敗を決めて授業を閉じたが、無理に決着させて閉じる必要はなかったのではという話題にもなった。それよりも、生徒たちと、その場面をビデオで鑑賞しあって、その良さや負けた理由などを再確認し合うことの方がよかったかもしれない。

 なかなかかみ合いそうでかみ合わない中、夢=職業という意見に対して、フロアから出た「職業だけが夢ではない」という、その一連のかみ合った流れが話題になった。その場面が、一番デイベートらしくが論が成り立っていた。

 デイベートの授業を受けている院生からは、デイベートとは、相手の論を攻撃する喜びではなく、反論すること、相手の論を受けて返す喜び、すなわちキャッチボールの楽しさを重視したいという話が出て、一同うなずいた。

また、座席に形や教師の立ち位置についても話題になり、生徒の参加構造として、“情報は横に流れやすい”という指摘が出た。横に机をつけるのは、その点から良いようだ。同時に、教師の立ち位置の研究も興味深い。

 デイベートを行う際のテーマについて、江間先生からのアドバイスがあった。今回の“子どもと大人では、大人が有利”というテーマは、やはり難しい。“都会と田舎では、都会の方が暮らしやすい”とかもっと、生徒が考えやすい、とっかかりがたくさんあるタイトルについてアドバイスがあった。

 時に、明日、仙台でデイベート甲子園があるということで、江間先生も審査委員となっていることもあり、授業者には、そのような企画にも見学などをして、是非、デイベート授業を自分のライフワークとなることを、研究主任として希望したい。

 

 

 

 

 

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