生徒指導通信 7

 保護者の皆さん、地域の方々かお元気ですか?新年度に入り、1ヶ月が過ぎました。この通信は、お手元に届いておりますか?だいたい、このくらいの時期になりますと、生徒の方も面倒くさくなってプリント類を出さなくなったりするんです。まして「生徒指導通信」なんて、堅い題名のプリントは、生徒からまっさきに見捨てられる通信になってしまうのでは、と書いているわたしも
不安なのであります。
 こんな事を書いても、プリントが手元に届いていないのなら、仕方の無いことです。どうぞ、職場のちょっとした時間や地域での立ち話ででも、「現在、あの通信は7号目だよ。」なんて言って、話題にしてください。学校は生き物なんです。毎日、状況は変わります。

 

善と悪のはざま

 善と悪のはざまってあると思いますか?
 いきなりの質問ですが、世の中には善と悪とはっきりさせなくてはいけないものは、たくさんあります。他人の命を奪う・・・悪。法律を守る・・・善。弱気を助ける・・・善。約束を破る・・・悪。 などなど。
 こんな風に、人間として善と悪の判断をはっきりさせなくてはいけません。現在の中高生は、善・悪が鈍っているのでは?と思われるニュースが新聞やTVで報道されます。無免許で車を運転して人をひいた。
覚せい剤を投与した。集団で大人を襲って現金を奪った・・・。
 全く、これらの事件は人として生きるのに必要な最低限の判断力すら持っていないことになります。これらは、周りの大人にも大きな責任があることでしょう。
 ただし、このような根本的に善・悪の判断がつかない中学生なんていうのは国内でもほんの一握りにしかすぎないのです。
 本校には、このような善・悪の判断がつかない生徒はいないと確信しております。
 ただ、善と悪のはざまは、わかりません
 “善と悪のはざま”。これが難しいんです。生徒が言う「なんで、悪りなや!」と聞くやつなんです。
 生徒指導の先生方が集まる出張でも話題になるんですけど、この“はざま”っていう部分が中学校の生徒指導が抱えている問題点なんですね。
 一例をあげてみましょう。
 ある生徒が、腹痛で午後の授業を早退するんです。本当におなかが痛いんですよ。家で休むように言って帰すんです。ところが、放課後その生徒が自転車通でもないのに、自転車でそして、私服で再び登校してグランドで遊んでいるんです。生徒に注意すると、生徒の方は何が悪いんだかさっぱりわからないんですよ。
 確かに、家で休んでいて、おなかが治ったんだ。一度家に帰ったんだから、私服だっていいじゃないか。自転車だって、1度家に帰ったんだからいいじゃないか。何が悪いんだ!

 これが生徒の言い分です。

 この通信で、わたしが話題にあげた、善と悪のはざまっていうのがこういう部分の事を指すんです。
 生徒の言い分もわかります。それでもですね、一度腹痛で授業を休んで帰った生徒が治ったからといって私服で学校にくるのはおかしいんですね。やっぱりおかしいんです。こういうのは、もう理屈ではなく、おかしいなと思う感覚みたいなやつなんです。言葉を探すと良識とかマナーというものになるんでしょうか。
 この良識とかマナーが、今の中学生、高校生に欠け始めてきたように思うんです。でもこれはきっと、われわれ大人の社会がすでに崩れてきたからなのかもしれません。子どもは大人の鏡なんですから・・・。
 
 9日の金曜日、生徒総会を持ちました。例の防寒靴についても、特別議題として生徒が考えました。議長のHさんの進め方も大変見ごたえがありました。ブーツのよさや長靴のよさを生徒全員から広く意見を求めました。ブーツと主張する生徒も長靴と主張する生徒もそれぞれの良さは充分認識しているんです。Hさんは、次に、登下校する靴として、ふさわしい条件をみんなで考えさせております。これもたくさんの生徒が意見を全体の場で述べました。それらを踏まえて、ブーツに限定すべきか、すべきでないかの意見を述べさせています。この模様は、1学期の保護者会でわたしが皆さんに説明することになりますが、とっても素晴らしい話し合いであったと感じております。最後に副会長のMさんがこう述べております。
 「今回の皆さんの意見を元に、さらに学級委員会で話し合いを持っていきます。ただ大切なことは、ブーツを履くべきか、長靴を履くべきかの正しい判断力を私たちが持つことなんです。」
 

 善と悪のはざまの問題。本当に難しさが増す一方です。ご家庭の中では、このはざまの問題をどう乗り越えていますか?

 生徒総会は、給食の時間もなくなるほどのびました。その後のランチルームでも、今回の話し合いの続きがあちらこちらで盛り上がっています。
 放課後、教室を見回っていると、3年生の女子生徒がわたしに言ってきます。
「先生、今日の生徒総会、楽しかったや!」

 自分たちで、このはざまの問題を考えたことが、何よりも貴重なことだったように思いました。

 

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