生徒指導通信 16
真夏のサンタ
「今度のサンタクロースさんに、ケーキをお願いするんだよ。」息子がたどたどしく、わたしに言います。真夏を迎える今、どうしてサンタクロースなんだ?とお思いになる方もいるでしょう。実は、少々肥満気味だから、そうやって妻がごまかしているんですね。だから、家では、真夏のサンタの話でもちきりなんです。「じゃあ、いい子にしなくちゃね。」面倒なんで、ついつい“いい子”っていう言葉で息子を納得させる、だめ親父です。
昨日の6時間目は、梅雨の合間をぬっての全校草むしりでした。
グランドや花壇に元気に生えている、雑草をみんなでむしり取りました。K先生が、休み時間を利用してクラス毎にラインを引いてくれます。少々、3Aの分が大きいのは、K先生の愛なんですね。
わたしもグランドを周りながら様子をみます。一生懸命してますよ。でも、無関心、「やってられねー」部隊もいることはいるんですが、おおむね、がんばばってくれました。3Aからも不満はでません。立派な3年生です。
国道沿いの土手に上がりました。なんとそこには、ジャンボなビール瓶3本と菓子類の残がい、タバコの吸殻が散乱していたんです。きっと、夜に楽しくどんちゃんさわぎしていたんでしょうが、片付けるのひゃ、どんちゃんさわぎに参加していないわたしということになったようです。近くに落ちていた24時間の店の袋にゴミを詰めます。
グランドで、土にぬかりながら雑草をとっている中学生。土手沿いには、宴会の後の残がい。なんか違うんだよなー。生徒に気づかれないように片付けます。
「先生、ビールだべ。」女子生徒から見つかってしまいました。やはり、見ているんですね。どこかで必ず、子どもは見ているんです。
その後、教頭先生と事務のT先生と花壇の雑草をとりました。教頭先生が、ある雑草をとって「これうめぞ」っていいます。「貧しかった頃、よくこれとって食べたもんだ。」
若い、わたしもT先生も教頭先生の幼年時代を想像します。「蝉だって、食べたぞ。」とまたも教頭先生。「な、生でですか?」顔を引きつりながら、T先生が尋ねます。
「んだわげねべや。焼いてや。」と教えてもらいました。
何にでもすぐに手に入る現在ですが。心のほうは、豊かになっているとは思いませんね。そういえば、18世紀のフランスの思想家ルソーという人が書いた著書“エミール”には、こんな言葉が載っていることを思い出しましたよ。
子どもを不幸にする一番確実な方法は何か。
それは、いつでもなんでも手に入れられるようにしてやることだ。
ということだそうです。
飽食の時代といわれる今日。金さえあれば欲しいものは、何でも手に入るいい時代です。でも、金で買えないものも世の中にはたくさんあるんです。金では、買えないもの、みなさんは、何をお考えになりますか?
チャイムが鳴り、草むしりの時間が終わりました。ズックはみんな、泥だらけです。そんな中、外ズックをバンバン鳴らし、泥を床に落としながら教室に行く生徒。なんか、違うんだなあー。傍らでは、K先生と事務のKさんが掃除をしてくれているのにですよ。
金で買えないものは、世の中にはたくさんあります。思いやり、優しさ、がまん、・・・・それらが生きる力となるんです。
部活で、激例会をしました。保護者の方々が夕方集まって、流しそうめんの装置を準備してくれたんです。盛り上がりました。そうめんを食べさせる。それ自体は金で買うことができますよ。でも、保護者の皆さんが集まって準備してくれる、盛り上げてくれる。そんな体験
は子どもにとってとうてい、お金では買えないものですよね。それを、子どもは見ているんです。後片付けもきちっとやります。
ものが無いと、それを手に入れようと努力する。なんでもかんでも、子どものいいなりに与えてしまおうとすれば、お金では得られな大切な何かを失うことになるんです。まさに、今この日本という国は、お金では買えないもの、感動や体験、優しさや厳しさ、・・・などを、子ども達に与えることが必要になってきているんです。
いよいよ夏休みです。
ぜひ、休み中にご家庭で、このお金では買えないものを与える工夫をしてみてはいかがでしょう。
お金では買えないものは何か?それは、皆さんひとりひとり違うでしょう。これが大切なんです。でも、どれを与えるにしても言える事は、子どもに少々窮屈な思いをさせるということではないでしょうか。家庭で仕組んでみてください。平日は、なかなか目が届きにくいかもしれません。土、日曜日はいかがでしょう。家族のふれあいを持って下さいね。そのために、今年の部活は、土、日を敢えて入れないように顧問間で意思統一しました。ここは、各家庭の腕の見せ所なんです。
家に帰ると、生まれたての長女が泣いています。さっと、息子がおしめを持ってくるんです。
やっぱり、頭の中は真夏のサンタでいっぱいです。
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