技術科(情報社会と自己責任)

平成19223日実施

授業者TS 教諭

文責  高橋 晋作

【授業の様子】

集会室に、机を8つセッテイングしている。生徒は、来た生徒より、生活班ごと(6つ)座っている。まず、授業者は、「絶対に人に見せてはいけません」と言って、カードを、1枚自由に引かせていった。カードには、自分が使用するPCの番号、チャットで入室する部屋の名前、そしてひらがなの“あ”“か”と“責”が記入している。責と書かれたカードを引いたら、その部屋の管理人(あらしやテーマがずれていったらもどす人)になる。また、授業者は、“か”と書かれたカードの束は、別に分けており、特定の生徒には、その束の方を引かしていった。

その後プリントを配り、それぞれに会議室はどんなテーマがあるのかを説明し、そのテーマにしたがって、15分間チャットをするように指示した。

生徒が隣のPC室に入室する前に、“か”と書かれたカードを持っている生徒だけ残し、その生徒には、本当の課題を話している。「できる限り相手が特定できる情報を抜き取ること」そして、住所や年齢、趣味、血液型などが書かれているプリントをその生徒たちだけに配った。

その後、PC室にてチャットを行う。“か”のカードの生徒は、チャットを通して、血液型や部活動、家族構成などを聞き出している。

15分後、集会室に戻り、こんどは、8つのチャットで入室した部屋ごとに座らせ、チャット体験を通した話し合いを行っていった。

以後は、指導案通りに進めた。

授業の最後に、この授業を受けてみての感想を言った中で、Kが「3回行ったチャットの授業で一番楽しかったのは1回目のみんなで自由にチャットをしたこと、それ以後は、なんだか窮屈な感じがして、チャットは窮屈なものという感じがした」という発言があった。

授業者は、最初「そうか」と言って、他の生徒の感想を一つ言わせたが、その後「やっぱり気になるから、一歩戻っていい。さっき、Kが窮屈って言ったけど、Kはなんだかもんもんとしてしまっているね。だれか、Kにメッセージを送ってくれる。」と言って、2人の生徒にKにメッセージを送らせた。その一人Sは、「チャットは、顔が見えなくて、なんだか不気味だし、Kがいったように、ちょっとルールがないとあらしがあったり、情報を抜かれたりするけど、それでも、うまく使えば楽しい、それがチャットです。」と答えてた。

授業者は、その発言のあと、「Kはどう思う。」と聞いたが、K自身ははっきりしない感じだった。

最後に、Mに「チャットで大切なのは何?」と聞いた

Sは「・・・気持ち?」と答えた。

少しの授業の説明をして、授業を閉じた。

最後に授業者は、今回情報を抜く立場になった、8名の生徒を読んで、どうして8名を選んだのか、今日行ったことは、決して本当のチャットではやってはいけないこと、この授業をやってみて、その難しさやそういう人もいることなどを十分勉強して、安全なネット利用をするように、話をしていた。

 

チャットのそれぞれの部屋とテーマ

 

テーマ

管理責任者

会議室A

洋楽について

会議室B

アニメ・まんが

会議室C

テレビでよく見るもの

会議室D

食べ物

会議室E

将来お酒を飲みたいか

会議室F

もてない人のたまり場

憩いの部屋

スーパーマーケットについて

安らぎの部屋

恋愛について

 

“か”の生徒に配布したプリント

ハンドルネーム(             )

身長

 

生年月日

 

親友の名前

 

部活動

 

親の名前

 

住んでいる地区

 

電話番号

 

血液型

 

出身小学校

 

趣味

 

兄弟の数

 

兄弟の年齢

 

家族構成(○人家族)

本人の名前

その他

 

授業で使用したソフト

フリーソフト“みんなでおしゃべり” 配布先:Vector

http://www.vector.co.jp/soft/win95/net/se056680.html

 

 

 

 

学習指導案へ

 

【研究協議会での話題】

各グループ(45名)バズセッションから始めた。

     情報を抜く課題を出した8名の生徒の選出は?

→チャットの授業3回目。1回目は、32人全員によるチャット。何も規制をかけない。すると、必ず“あらし”が発生してくる。そこで、どうしたらチャットというコミュニケーションが成立するか考えさせた。すると「テーマを決める」「少人数にする」ということがあがってきた。そして、2回目の授業では、その通りにしてみる。すると、前よりもあらしが消え、コミュニケーションがスムーズにできるので、生徒は楽しみを覚える。そして、3回目の今日の授業。課題を出した生徒は、あらしが出たときに、真っ先に「あらしはやめろよ」とか書き込んだ、比較的ネットモラルがわかる生徒。その生徒に課題をだした

     授業者が、グループでの話し合い後半に、プリントアウトした書き込んだ様子のわかる紙をみながら『あやしい言葉はどんな言葉?』と発問していたが、生徒は、言葉単体でなく、情報を抜き取ろうとしている話術の方に、思考がいっていた。

→授業者としては、言葉でも話術でもどっちでもよかった。大切なのは、書き込みをすること自体で、いろんな情報が抜かれているという実感を味あわせたかった。

     最後に、Kの発言に対して、生徒たちにメッセージを送らせていたが、Kは納得していなかったようだ。

Kにはかわいそうかもしれないが、Kの発言を利用しようと思った。チャットは窮屈だと言ったKを説得することを通して、チャットのいい面と悪い面を、再認識させようとした。

     このような授業は、教科書にあるのか?

→多分、どの教科書にも無いと思う。教科書にあるのは、チャットの怖さなどを書いた事例を掲載し、それを考えさせる内容。実体験を通してしようと、初めて試みた。

     アンケート結果から、チャットを行っている生徒が多いことに驚いた、授業者としてどう感じているか?

→この結果より、実はもっと経験している生徒は多いと思う。特にこの学年、このクラスは多い。(32人中22人、チャット経験者)

 

全体での話し合いは、課題を与えられた生徒は、比較的、チャットによって情報が抜かれるという意識は高くなったと思うが、それ以外の生徒は、授業が終わっても、情報を抜かれるという意識よりも、チャットが楽しかったで終わった生徒が多かったようだったという点に集中した。

情報を抜かれることで、どんな危険性が待っているのかの説明が欲しかった。そうすることで、多くの生徒は楽しいだけで終わらなかっただろう。危機意識を持たせる工夫をしたい。VTRで、最初のグループ討議の模様を視聴。生徒の合間を忙しく授業者が、歩き回っていたことを確認し、どうして慌てていたのかを聞いた。授業者は、チャットをして、情報を抜かれてしまったことに対する感想を見ると、多くの生徒が「楽しかった」で終わっていたため、このままでは、楽しいの授業で終わってしまうと思い、どの生徒の発言を最初にするか、必死に探していたことが紹介された。

危機意識として、顔を知らないから言えるということもある。そういう感想を書いている生徒もいたが、授業ではなかなかでなかった点も話し合いになった。

 

最後に、研究主任でもある授業者から、最後の感想でKの発言にこだわったことについて説明があった。実は、以前、江間教授より、『2段ロケット型の授業』について話が出され、実に興味を持って、挑戦したかったこと。2段ロケットの授業とは、どの教科も、最後に感想を書かせるが、まとめや感想を、そのままで終わらせるのではなく、その中に書かれていることを、もう一度、考える中心に置いて、生徒とともに考える授業であること。まとめをまとめで終わらせない授業。それを今回チャレンジしたくて、Kの発言が出たとき、やってみようと思ったこと。Kの発言の「チャットは窮屈だ」は、正しいと思っている。窮屈さをもって、チャットを行うことが大切。それを全員に認識してもらうにはどうしようかと考え。Kを納得させるようにメッセージを送ろうという発問にしたことを紹介した。

来年度は、こんな『2段ロケット型の授業』も研究のテーマにしてみては?という研究主任の提案がなされた。

 

(江間教授より)

     ワークシートの組み立てをもっと考える。チャットの経験から、考えるための価値づけをしてあげるとよい。経験したことの中から、どの事実は、全員で考えるに値するのかを吟味するといい。

     授業者の発問が揺れていた。「感想を書いて・・・」「いや、考えたこと、思ったことを書いて・・・」振り返る角度が大切。

振り返る角度とは?

@     気づいたこと

A     A気づいたことをもとに考えたこと

B     Bその他に思ったこと。

同じ経験をした場合、今までとは違う、新しいことはない?という発問も大事。

このようなことを踏めば、自分の経験を価値づける視点がわかってくるだろう。

2段ロケットの授業について。いのちの授業でも表れているが、この4年間の研究によって、考えを書く量がこんなに高まっている。そこで、感想やまとめを、もう一度、授業の1段目の考えの後の2段発射のときに使うイメージ。生徒の考えや疑問を、最後にみんなで考えることが、その授業のまとめとなっていくイメージ。

U指導主事より)

     情報を抜き取られたらどうなるのか?が弱い。情報を抜き取られることにどう考えたか

     2段ロケット型の授業は、大変共感を覚える。是非研究して欲しい。

 

 

 

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