理 科(物質の性質)

平成161129日実施

授業者 OH 教諭

文責  高橋 晋也

【授業の様子】

T:今日の実験はどういう実験ですか?言える人?

M:いろいろな物質を加熱しようです。

T:いいですか?

S:いいです!

T:先生も実はもうすでに、黒板に書いてあります。

※気づかなかった生徒、黒板の字を読んで笑う

T:大事なことは、何のためにする実験かということです。(前時から一週間以上も経ってわすれているかもしれないので、確認したいと思います。答えられますか、Sさん。

S:・・・・・・

T:どうして白い粉を加熱しようとする実験をするんだっけ?

S:はい。砂糖と塩をどうやって見分けるか。

T:はい。ただ、今気になることを言ったんだけど。わかる?今、砂糖と何って言ったんだっけ?

S:塩!

T:何って言うといいの?

S:食塩!食塩!

T:そうだね。食塩だね。砂糖と食塩を区別してみようとするやり方で、みんながあげた中に加熱するというのがあったね。そして、砂糖と食塩のほかに、小麦粉と片栗粉をあげてくれました。これらも、熱すると違いが出るのかなあということで試することになったんでした。さて、小学校の時も、ものを熱したでしょ?何でした?

S:食塩水

T:食塩水。あとは?

M:塩酸。

S:えー塩酸?

     生徒から塩酸は違うという反応がでる。

T:覚えていない?

     何やったっけ?と生徒達は顔を見合わせる

T:なんか、B組やC組では答えが出てきたんだけど・・・

S:エー(負けられないという雰囲気)

T:小学校で物質を熱した実験をやったと思うのだけど、何をやった?

     授業者が再び同じ問いを発した

Sの一人:液体ですか?

T:液体でなくて燃やしたと思うんだけど・・・

S:アルミニウム

T:これです。(わりばしを取り出す)

S:わりばし?

T:「木」

S:えー、やってないという声

T:あ、そう。記憶無いんならいいんですけど。それじゃあね、ろうそく燃やした?

S:あ、燃やした!

     ろうそくは、ほとんど全員記憶があるようだ

T:ろうそくを燃やしたとき、何がでたか?

S:あ、やった。やった。

T:そのときね、燃やしたときでた気体を何かで確認したでしょ?

S:石灰水

T:石灰水ね。それでね、今日のプリントのここにね。石化水の変化という項目にも書いてください。

     学習プリントの空欄に、石灰水の変化と書く。

T:じゃあね。ろうそくを燃やしたときにね。石灰水は変化した?

S:しました。

T:どういう風になった?

S:白くなった。(ほとんど全員)

T:それって何を意味するんですか?

S:(全員一斉に)二酸化炭素!

※生徒にとって二酸化炭素の答えはすぐにでる。印象に残る実験になっているのだろうか。

T:発生する気体は、二酸化炭素かどうか調べることできるよね。今日もこのことを調べてみましょう。

T:さて、具体的な(実験の)進め方なんだけどね、今日のレポート用紙見てくれる。最低1つの物質を、ジャンケンとかじゃなくて分担して調べる。

     ここが、ひとり一人に実験を参加させる授業者のねらいがある。

T:はい、それではレポートの下を見て、自分からみて、実験の参加を◎○△で評価してみてください。今日の実験で出た結果をきちんと、周りの人に聞くのではなく自分で書いてください。(レポートの)(3)は、結果全体からわかること。砂糖だとか塩だとか言うんじゃなくて、結果を通してわかったことを自分で考えてかいてください。

T:で、具体的な話を次にします。これは、成功への秘訣です。教科書40Pの実験なんですが、今日使う器具、これ何だかわかる?(器具を持ちながら)

S:牛乳びん

(笑い)

T:知っている人?

S:臭気・・・

T:臭気?臭気ビンって言うのね。(臭気びんと書いたカードを黒板に貼る)で、教科書を見るとわかるんですが、実験1と言うところね。今日使う物質は、少量とってください。あんまり多めにとるとまずいです。そして、アルコールランプで熱するんですが、火がついたらここの臭気ビンに入れていきます。教科書にあるように。そしてふたをするんですが、なお、この物質を入れる器具、何て言うかわかる?これね、燃焼さじと言います。で、少量とる。いい?あとね、下にこぼれるといけないので、これを敷いてください。臭気ビンにいつまでも燃焼さじを入れておくとどうなる?

S:割れる

T:白くなってね、見づらくなるから、火が消えたらすぐにとってください。このあとね、何を入れる。

S:石灰水

T:石灰水ね。だいだい4回分くらい用意しました。1回で使い切らない。少量いれます。多すぎるとなんでいけないかわかる?

M:多すぎると、振ったときこぼれます。

T:多すぎると、石灰水が反応しなくなるんです。だから、量を考えてください。火を使うということで、十分に気をつけて。それでは、時間ね、実験と結果記入まで、1220分くらいまで、いい?じゃあ、班ごとに実験はじめてください。

 

実験開始

※実験の様子については、下記の研究協議会での話題を参考に。

 

T:レポートみんな一生懸命書いていました。素晴らしいね。発表してくれる人?頭の中を整理して、考察を言ってくれる人?

S:考察って、わかったことですか。

T:わかったことでいいですよ。Aくん。

A:熱すると、食塩以外は黒くなりました。

T:食塩以外は黒くなったっていってくれたけど、そういう結果になった人?

T:黒くなりましたね。あの黒いの何だと思う?

S:おこげ

T:こげ。うーん。今日は、味見ということはしませんが、舐めたらどんな味?

     生徒達、いろいろな考えをつぶやく。

T:あれね、何ていう物質かというと、『炭』

S:炭?

T:炭なんですね。他にありません?Mさん。

M:焦げたり、熱したりすると、二酸化炭素が出る。

T:全部出た?石灰水の変化、全部出ましたか?

S:出ませんでした。

T:みんなの結果を見せてもらうと、砂糖(石灰水がにごった)なったかな?

S:なった。

T:食塩は?

S:ならない。

T:小麦粉は?

S:なった。

T:片栗粉は?

S:なった。

T:ということは、これらの物質は熱すると何が出るの?

S:二酸化炭素。

T:それじゃあね。考察は、ひとり一人大切にしてください。先生、後で見ます。最後にまとめを2点書いてください。

※黒板に本時の実験のまとめを書いて、生徒が板書する。

 

『物質を加熱すると、物質を見分ける手がかりになる。』

『有機物は熱すると炭になり、二酸化炭素を発生させる。』

最後に、有機物を無機物の違い、地球環境の温暖化について、説明をして、授業を閉じた。

 

【研究協議会での話題】

 この授業も、同日行われた英語科の研究協議会同様、バズセッション(学年所属ごと)から行った。7分間のバズセッションを行った後、各学年主任から、出てきた話題について報告をしてもらった。

 《授業者へ質問したいこと》では、グループの組み方、意図、男女別にした根拠についてのもの。授業者が本時の授業でこだわった、一人1役の活動はうまく機能していたのかという点。授業者が期待している、実験の後に書かせる考察の内容についてのもの。実験で個それぞれが持った、データをどのように他と共有していったのかという点。以上があげられた。

 人通り、授業者から上記の質問について答えてもらった後、全体で話し合うポイントを絞っていく。本授業では、生徒たちが実験を行ってその事実を記録するその内容の細やかさが話題になった。「○○のようなにおい」「○○な色」「周りから溶けている」「ぱちぱちという音といっしょにはじけた」このような、大変具体的な記述が、このクラスの生徒に多かった点は、どう考えたらよいのだろう?授業者のこれまでの指導。小学校からの訓練など考える範疇となった。その他にも、実験中のつぶやきの内容について、それぞれ話しが出た。また、授業者からあらかじめ決めてもらった、学力の低と高の授業での様子をビデオで撮影していた教員による、大変細かな観察レポートがなされた。この発表などを見て、研究会後に江間山大助教授からは、ビデオを教員から撮影してもらう試みの進歩と、本研究の高まりを印象づけているという話をいただくことになる。研究協議会に話を戻すと、生徒の細かな観察記録やつぶやきを、もっと授業では取り上げた方が、子ども達の思考がつながる役目を果たしただろうという方向に向かう。本授業では、実験の後、授業者が黒板を使って本実験をまとめるということになったのだが、もう少し時間を使いたい。子どもたちが実験から得た疑問などが、その中に出てくることで、個の実験だったものが、全体の実験に広がるであろう。実験は、子どもに「すごさ」を与える。本実験では、そのすごさは「塩のはじける様子」だった。これは、決して本授業内容からすると、重要なポイントではない。それでも、実験授業では、生徒の疑問に寄り添うことが大変重要であろう。ある生徒Kは、「塩がはじけた理由はわからないけど、わたしは性質の違いが原因していると思う。」と考察の欄に書いていた。多くの子どもは、実験結果からわかったことを書いていたのに対し、Kは、実験結果からはみえない点にまで、自分の考えを述べることができている。これこそが考察と呼べるのではないだろうか。決して、塩がはじけることは、授業では重要ではないかもしれないが、もし、授業でこれを取り上げることができたなら、この授業でのみ使われる言葉が出てきて、子どもたちが共有しあうことになるかもしれない。疑問こそが、個と個を結びつけるきっかけである。すなわち、経験から言葉を作っていく時間を考えようという話になった。

 江間先生からは、ある女子のみのグループについての様子が報告された。このグループは、食塩の燃焼実験のとき、いつになっても食塩が溶けない理由を、食塩が多すぎたからだと判断した。そこで、次は、食塩の量を少なくして行った。結果、黄色い色に変わったと、3人とも記録していたのだが、全体発表で、授業者が、結果をまとめたとき、やはり黄色くなったと書いていた。子どもは、自分の事実にこだわり忠実なことの話がなされて、子どもに寄り添うことの大切さを実感させた、実り多い授業研究会となった。

 

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