Show And Tell(英語科)

平成1610月5日実施

授業者 FM 教諭

文責  高橋 晋作

【授業の様子】

F教諭が提案した授業は、関係代名詞《目的格》のThatの使い方の授業だった。

簡単に教科書のリーデイングを、前後の席でペアを作って始まる。緊張感の雰囲気が一気にほぐれて、全員が安心してのリーデングが始まった。

その後、黒板を利用して、授業者は関係代名詞《目的格》の用法について、説明がなされた。

後の授業研究会で、授業者は、「これまでなら、すぐに音読みに入ったのだが、最近、意味を理解した中での音読みでないと意味が無いと強く思うようになり、説明の時間をあえて組み込んだ。」と述べている。

また、授業中は、ほとんど英語で説明することを心がけている。授業研の中で、「いったいどのくらいの生徒が、その英語を理解しているだろう」と問う参観者がいたが、「なんとなく、こんな感じ」という感覚が語学では大事なのであろう。すべて完璧にではなく、教師の表情や、ジェスチャーなどから理解することの方がとても大切なことだ。現に、アンパンマンを題材にしたセンテンスを取り上げると、全員が微笑んだ。すべての意味は、わからなくても、笑える点が同じとき、生徒たちの喜びは増大する。こんな中で、コミュニケーション力は増していくのであろう。

Anpanman is Hiro that many children like.”

 

その後、指導者の自作プリントが配布された。

これは、“昨日読んだ本は、夏目漱石が書いた本”“この城は、秀吉が作った城”というように、目的格につながる文を説明していった。プリントには、文法的な解説と、下段に、太宰治、夏目漱石・・・などの文豪の写真。その下には、本や城、蚊取り線香などのイラストがある。

まずは、実際にプリントに書かれてある例題を英文で書いていかせた。プリントの上段には、英作文を書くスペースが用意されている。

まずは、ペア学習の前にプリントに載っている、イラストを組み合わせて、関係代名詞の入っている文の作り方を説明した。ここでも、丁寧な説明がなされている。一通りの解説のあと、次にくるのが、ペア学習である。ペアで、今説明されたつくり方で、たくさんの英文を互いに読みあうという活動に入る。本授業の、授業者が一番ポイントにしている時間がここである。そしてまた、座学中心で授業者対生徒という時間であったため、自主的に活動する場面がここに訪れた。

授業を参観すると、授業者の思いとは裏腹に、ペア学習によって幾人かの生徒が救われている場面がみてとれた。というのは、授業者は、授業前ペア学習を導入する理由として、会話の量を増やすことをねらいとしていたが、実際ペア学習を行って目に付くのが、説明や解説で、理解にやや苦にしていた生徒を、学びに引き戻すきっかけになっていたことである。

 

前列のAは、理解力が低く、教師の解説では、あくびなど学びから離れつつある状態であったが、隣の比較的理解力のある、Oとのペアになったことで、Oからいろいろ説明されて学びに戻るきっかけを作っていった。

 

 プリントに掲載されているイラストや写真を組み合わせて、英文を作る活動なので、あるパターンさえ理解していれば、さほど難しい活動にはなっていない。理解度が高い生徒は、活動も早々にペア学習を終了している。

 つぎに、本授業でもっとも高いレベルの学習活動に向かっていく。その活動は、自分で自由にスキット(小劇)を作っていく活動である。授業前に、授業者がこの活動がうまく行えるか、大変心配していた活動でもある。

 前のペア学習の終了を告げ、もういちど机に戻らせた。そした、次に行う活動の説明に入る。黒板には、更なる意欲づけとして狙ったのであろう、人気韓国俳優の写真も貼られた。

 一通りの説明の後、いよいよペアでのスキット(小劇)作りに入った。この活動になると、明らかに雰囲気が変わった。これは、後の事後研でも話し合いが出されたが、生徒の表情がぱっと明るくなって活動に入っていく。

 英語の苦手なJは、Kとペアになることで、やや一方的な指示ではあったが、確実にスキット作りの中で、関係代名詞の使い方について学んでいた。Kも、Jに教えることにより、自分の理解を高めていっている。

 女子生徒のペア同士である、CS。二人は、どうしても人気韓国俳優を扱ったスキット作りにこだわった。ところが、なかなかスキットのアイデイアが出ない。

 活動開始をして3分後、授業者は、活動を中断して説明を聞く指示を出した。全体を見回して、スキット作りをなかなかできないペアの数に気になったのだろう。もう一度、プリントのイラストを利用して、例を示した。数分の説明の後、再び活動の開始の指示を出す。

 CSにとって、残念ながら、プリントのイラストを題材にした教師の例は、参考にならなかったようだ。活動が再開されても、なかなか関係代名詞を取り入れたスキットができなく、悪戦苦闘していた。

 学力が高い(今回の授業でビデオ撮影の対象としていた生徒)Kは、理解度がやや低いTと組んで、やはり韓国俳優を取り入れたスキット作りを行っていた。こちらの方は、ノートに日本文を書き込んで、それを英文に直す手法をとっていた。どんどん英文が作られている。その間、授業者は3度活動を中断させて、説明の時間を細切れにとっていった。

 最後に、希望ペアによる、スキットの発表が行われた。中3ではあるが、恥ずかしがらず、積極的に発表に参加する姿勢は、日常の英語の学習での教師と生徒との人間関係のよさを十分窺わせる。

 Kも、この頃には自分のスキットを完成させ、満足のうちに授業を終えることができた。

 

【研究協議会での話し合いの様子】

協議会では、まず、バズセッションからはじめていった。授業のポイントが数多くあり、焦点が絞れないときに、本校においてよく使う手法である。

今回は机の配置ごとに3つのグループを分け、その中の年配の先生が司会となるようにお願いした。話し合いのポイントは、これも本校では決まっている@授業者へ質問したいこと。A全体の話し合いで取り上げたいことBビデオでもう一度みたい場面の3点にしてある。

10分間のバズセッションの後、司会をした教師から話し合いでだされた内容を報告してもらう。簡単に授業者が答えられるものは、その都度答えてもらい、大きな話し合いのポイントは、コーデイネイトする立場の司会・進行役が決めていく。

その中で、本授業でポイントにした点は、次のものである。

     スキット作りになると雰囲気が一変したのはなぜか?

     活動を細切れにしてしまったことで、授業の流れはどうなっているか?

 上記の2つのポイントは、決して別々の話し合いではなく、話し合いの中のところどころでつながっていくのだが、特にCSのスキット作りの模様とKTのスキット作りの模様をビデオでもう一度視聴して、話し合いを持っていった。

 特に、Kのビデオ撮影を担当していた教員が、Kがなかなか活動の中断の指示を聞いても、自分でしめれずに(研究会の中ではピリオドを打てずという表現で話し合った)活動を続けていく模様をうまくビデオで紹介してくれた。

 話し合いの方向としてはこのようになっている。細切れの指示が、生徒の活動にピリオドを打たせるのと合致していなかった。現に、教師の説明の最中でも、Kをはじめ、活動をしつづけている。他の生徒も多くは同様な感じであった。生徒の活動にピリオドを打たせるということは、活動をさせている際には、大変難しい問題である。例えば、生徒の方に「後、何分必要?」のように、ピリオドを打たせる側に決めさせることがあってもいいのかもしれない。ただ、授業者の活動の意図として、聞き取ったものを書かせたかったのかどうかによっては、また活動のあり方が変わってくるであろう。

 また、スキット作りで教室の雰囲気が一気にやわらいだ点は、江間教授から大変わかりやすい見方が出され、一同、考えを共有するに至った。

 2つ目の活動のプリントに掲載されているイラスト・写真を取り入れてパターンにはめ込む活動と3つ目のスキット作りの違いを考えると、前者は、やってみたい表現はないのだが、パターンにはめ込んで英文を作ることはできる。一方、後者は、やってみたい表現はあるのだが、英文としてつくることができない。その違いが大きいということである。あの雰囲気がやわらいだのは、やってみたい表現があったからであろう。ところが、一部の生徒は残念ながら、表現した内容を英文としてつくり変えることはできなかった。

 授業者は、スキット作りの際にも、ある型(パターン)を示して、英文を作りにくい生徒にも、それを利用することで、ある程度、表現を形にすることができるような準備があるとよかったかもしれない。

 

ペア学習の位置付けと同様に、生徒に自分自身でピリオドを打たせることの配慮や、自由な表現の保障により、生徒の表情が変わる点、そして、それを形に確実にできるような配慮などを、本授業は教えてくれた。

 

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