1学期行った校内研修での話し合いの記録

 

今年度もすでに、5月の年度始めの忙しい時期ではあったが、2回の授業研究会を粛々と行なうことができた。1回目は、今年度より本校の授業研究会のアドバイザーをお願いした、山形大学教育学部助教授 江間史明先生をお招きしての授業研究会でもあった。ここでは、技術科のテレビCMを教材にした授業の話し合いを中心に、授業研究会での授業を検証し合っている本校の校内研修の様子を記録しておく。

 

今年度は、授業研究会の進め方の新しい試みとして、バズセッションによる意見交換を、研究会の最初に導入することにした。これは、より多くの考えを引き出す方法として、江間先生よりアドバイスしていただいた方法である。バズセッションは、授業研究会に参加している教員を小グループに分けて、次の柱立てに基づいて、10分間自由に話し合いをしてもらい、その後全体で話しをしてもらいたいことを出してもらいながら、授業研究会の話の流れを作っていく方法である。最初ということもあり、小グループは、学年ごとに行なって、進行は学年主任にしていただいた。

また、これまで慣例的に行っていた、研究会冒頭の授業者の自評をなくした。自評を最初にしてしまうことで、話し合いの深まりが失われることに気づいたからである。話し合いを進める中で、授業者には、自分の考えや悩みを出してもらうようにする。箇条書きのように、述べられることよりも、話し合いやビデオでの検討をし合いながら、その中で授業者の考えを述べてもらうことの方が、より話し合いの流れがスムーズになる。

【バズセッションでの柱立て】

バズセッションといっても、話題の柱立ては、進行役の方から提案した。柱立ては、以下にあげる3つにする。(別紙参照)

1.      授業者へ質問したいこと

2.      全体の話し合いで取り上げたい話題

3.      ビデオでもう一度みたい場面

実は、昨年の課題に、もっと授業研究会で意見を多く出したいという反省があったことが、このバズセッション導入につながっている。

実際、1回目に行なってみて、活気ある話し合いが出来ており、参観者が意見を述べる量もあがっている。また、若い教員も、小グループなら自信を持って、積極的に意見を述べている。このような点から、大変効果的であることが窺えた。ただ、時間をあまり長くすると、その後の全体会での話し合いの質が低下してしまうこともわかった。およそ、10分という時間が、本校ではちょうどよい時間であるようだ。バズセッションで話し合われたすべての事項について、全体会で取り上げるのは無理であり、進行役がより話題の中心を絞って進めることの必要性を感じた。

 

テレビCMを分析しよう(技術科)

平成166月29日実施

授業者 TS 教諭

文責  高橋 晋作

 

【授業の様子】

T:これから、昼のドラマの中に流されたCMだけをつないだものと、夜のドラマの中に流されたCMだけのものを視聴してもらいます。どっちが、昼のCMでどっちが夜のCMだか、当ててください。ただ、感ではいけません。昼と思ったらその理由を考え、班のテーブルの上においた黄色のカードに書いてください。夜のCMと思ったら、その理由を青色のカードに書いてください。できたら、黒板に貼ってくださいね。それでは、まずAのCM集を流します。

※昼のCM集を流す。(5分間)視聴終了。

T:どうですか?だいたいわかったかな?じゃあ次に、BのCM集を流します。

※夜のCM集を流す(5分間)視聴終了。

生徒のつぶやき:

「みんなおんなじだぜ」

「理由わからない」

「化粧品?」「あとさ、パンパーズ(子供用おむつ)も」

「消臭のやつも関係あんなんね?」

「酒のCMがあったから」

「主婦向けのCMばっかり」

 

※黒板に、班ごとに配られたカードが貼られていく。

生徒のつぶやき:

「おんなじジャン」

T:おんなじでもいいよ。自分の理由がそうであれば、どんどんカードに書いてください。

※カードの内容が、思ったとおりに出てこないことから・・・

T:あー、お酒しかでていないけど他にない?黄色(カード)が圧倒的に多いね。

※これ以上、カードが増えないことで、授業者は諦めて、次に進むことにした。

T:黄色の理由付けをみてください。一枚以外は、こうなりました。これをみて何がわかりました。

生徒の発言:

Aが夜、Bは昼のCMだとわかる。」

Aはお酒のCMが入っているからと書いてくれたけど、どうして?Sくん」

Sの発言:

「朝からお酒を飲む人はいないから」

Kの発言

CMをみて夜お酒を飲む人が多くなるから」

T:実はね、お酒のCMを流して悪い国もあるんだね。どうしてだと思う?

生徒の発言:

「子どもが飲んでしまうから。」

※ざわつき

※ここで、教師はお酒のCMのポイントを話すことにした:

T:CMについて、勉強してみてわかったことなんだけど、日本は、朝の5時から6時まではCMを流してはいけないことになっているんです。日曜日は、昼の12時までだめなんです。

※次にBのCMが昼のCMであるという理由を確認した

生徒の発言:

「全体的に大人が喜びそうなCMが多い。」

Bは主婦むけだから。」

※あまり深まりそうな意見がでないことで、授業者は次のような発問をすることにした:

T:昼と夜のCMの違いで何がわかりましたか?

生徒の発言:

「昼は子どもや母親むけ、夜は父親むけかなあ」

「昼は主婦向け、夜は大人たち」

「昼は子ども、夜は幅広い世代」

※ここでは、CMは、視聴者の中でもターゲットを絞って作られていることを感じさせるために行った活動であるので、生徒たちの発言は、その目的を達していると判断できる。ただ、もう少し、この発言を広げることで全体の共有化を図りたかった。

我慢ができずに教師がまとめてしまう:

TCMはターゲットを絞っているんだね、ターゲットというのは、この時間に見る人はどんな人なんだなあと思って絞っているんだな。CMっていうのは、そういうメデイアなんです。

※次に、ダイハツ タント(軽自動車)のCM分析に進む。

以下省略

 

【研究協議会での話し合いの様子】

授業者が公開してくれた、技術科のCM分析の授業では、まずは、“もの”として活用されたテレビCMの有効性が問題になった。情報教育の中で情報モラルを指導する教材として、身近にあるテレビCMを活用したことにより、子ども達の関心が高まっていることが、話題になった。特に、教師の説明のときと、テレビCMを分析するときの教室の雰囲気が全然違うことが話しに出され、ビデオを通して、授業の最初のときの生徒の固い体と活動をしているときのやわらかい体を確認していった。いかに、授業では、活動を取り入れながら、課題に取り組ませることが有効であるか、全員で認識を新たにした。また一方で、授業の前段で行われた、昼と夜のCM当て活動では、生徒たちのグループ活動がうまく成り立っていなかった点も話題になった。その様子をビデオで視聴した後、後半の活動で行った、“ダイハツ タント”(軽自動車)のCM分析の様子と見比べ、昼と夜のCM当て活動よりも、後半のCM分析の方が、生徒のグループでの話し合い活動の質が高かったのはなぜかという検証に入った。話し合いの方向としては、いくつかのCMをみて、昼と夜のCMを当てるのは、比較的答えを見出すのが簡単すぎる課題だったこと。簡単すぎるため、グループで話し合いをする必要性を生徒たちが感じなかったからということが話題の中心になった。授業者は、授業最初の活動であるため、できる限り、簡単な活動をという意図で仕組んだ学習活動であったが、中学3年の生徒にとっては、先を見通すことが簡単であり、むしろ学習活動をする意味合いも薄かったという意見が大勢であった。この学習活動を省いて、もっと後半のCM分析に時間をかけた方が、より生徒の考えも深まったという話の流れであった。

このような話し合いから、グループ活動で行わせる課題は、あまりにも生徒にとって易しすぎるものであると、学習活動の有効性すら薄れてしまうこと、生徒にとって、すこし“背伸び”するくらいの課題が大切であるという点が確認された。

次に、“意見や考えの共有化”として、本授業で用いたカードの活用に話が進んだ。その際に、問題になったのは、先生の方を向いて説明している生徒の様子だった。この姿を生んでいるのは、先生が生徒の考えを説明する形態をとっているからではないだろうかという意見がだされた。生徒の意識の問題ではあるが、教師から評価してもらっているという意識が大きいため、全体に自分の考えを発表しようとする意識が減退しているのであろう。教師が生徒の意見をひとつひとつ評価するのではなく、共有化を図るのだとすると、生徒にその考えに対する意見を求める発言をしなくてはならないようだ。

作業を伴う活動から、考えたことを共有化するという場面づくりは、本年度の本校の研究の中心になっていきそうである。

また、小グループ活動への入り方も話題になった。小グループへの入り方、まずはひとり一人が考える時間を設定してから入ることが大切であろう。ひとり一人が思考する活動の時間の保障、そして次に小グループがすり合わせる活動時間の保障。グループ活動での大変大事なポイントが、授業研究会から見出された。

最後に、もっと生徒に行わせる活動を整えて、本授業において、どのように子どもを高めたいかを、授業者は意識する必要があるという意見で、正味50分の授業研究会を閉じた。

 

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