3年A組の保護者の皆さんへ 5

 

実力テストが終わりました。時期が時期だけに、十分な準備をして受験できた生徒は少なかったでしょう。中には、全く準備をしないで取り組んだ生徒もいます。毎日のセミナーをしっかり行うことで、準備が少しでも軽減されているはずなのですが。本当の準備とは、常日頃から行うことなのですね。地区総体まで、あと1ヶ月切りました。どの部も熱が入っています。ただ、それと同時に、様々な悩み事もそれぞれにあるようです。ひとつの目標に向かって燃える人とそれを冷めてみている人。子ども達のこころの温度差は、様々なのです。そして、こんな時に、様々な問題や悩みが発生してくるのです。

 

すばらしい学年

 

すばらしい学年がありました。例えば、運動会練習です。フォークダンスは、きちっとした円を作って、整然とダンスを踊ります。しっかりした、素晴らしい踊りです。ただ、グランドが荒れているせいでしょうか、ある円の部分にくると多くの生徒が、ズックのひもを結びなおすのでした。それでも、遠くから見ている方々は、この規律が保たれているダンスを感動的に見ます。さすが、“すばらしい学年”です。フォークダンスの練習も終わり、チャイムが鳴ると、みんな一斉に走り出します。終わりの会をするために教室に行くと、もう全員座っているんですね。みんな、にこにこしています。生徒に配る、配布物は、何も言わなくても、誰か、かれかが自主的に全員に手渡してくれました。

そんな、“すばらしい学年”でした。

 

ところが、この“すばらしい学年”は、卒業後、ただの一回も同窓会を行ったことがないのです。あんなに、仲のよい“すばらしい学年”がです。同窓会は、卒業後に昔を懐かしんで、再び集まる会ですよね。なのに、あの学年の生徒達はただの一回もしたことがない。どうして、あの学年の子ども達は、同窓会をしようとしなかったのでしょう?

この答えは、その後ようやくわかりました。あの学年の生徒達は、あの中学時代を思い出したくもないんですよ。なぜだか、わかりますか?

 

あのフォークダンス。一見、まとまって見えたダンスですが、あの時のくつのひもを結び返したのは、ある生徒と手をつなぎたくなかったからだったんです。フォークダンスだから、順々に人が変わります。あるひとりの生徒と手をつなぐ番になった時、ほぼ全員がしゃがんでくつのひもを結びなおしていたんです。そうすると、手をつなぐことはないでしょう。

チャイムが鳴って、一斉に駆け出したのは、みんな“手洗い”をするために水のみ場に走っていったからなんです。ひとっつも手なんか汚くないのですよ。ただ、その子と近くにいたからという理由で洗うのです。集配物も、積極的に配ったのは、あえてその子だけに“渡さない”ようにするため。

これが、そのすばらしい学年の正体でした。

あの学年の生徒達は、卒業後、あの中学時代を二度と思い出したくないんです。どうして、集団であのいじめをやっていたかというと、本当にいじめたくてやった子は、一人、二人にすぎません。それじゃあ、残りの大部分は?それは、「これをいっしょにやらないと次は、自分の番だ。」と思っていたからなんです。だから、中学時代は、毎日びくびくして生活していたんですよ。にこにこの笑顔も作り笑い。

自分がやられたくないから、みんなと同じように行動する。どうですか、これが典型的ないじめの構造なんです。

 

3年A組のみなさん。君達の今の生活はどうですか?卒業後、振り返りたくもない中学時代を送るおそれはありませんか?

第1回の実力テストは終わりました。でもですね、頭ができる人よりも、心ができる人になりなさいよ。頭ができる人間がすばらしいならば、みんな東大に入った人間はすばらしい事になるんです。でも、ニュースをみればわかるでしょう。頭ができたって、心ができてなければ、ちっとも人生を豊かにしていけないんです。

 

“こころ”って、自分が鍛えないとなんともしようのないものです。すぐ「むかつく」と叫ぶ前に、「自分のこころを鍛えているんだと、考えを変えてみてごらん。」この“こころ”のトレーニングは、必ずいつか役に立つでしょうし、あなたの人生を豊かなものにしてくれる、原動力となるでしょう。

 

今日の学活で、未来年表を作りました。6月から卒業の3月までの行事と、その時その時の自分の成長とクラスの成長を予想させるのです。

『地区総体』から、『全員合格して全員進路決定!』の317日まで、未来を考える作業は、まるで未開の地を行くときの地図づくりに似ています。そして、この未来の答え探しの作業は、どの生徒も熱心に行います。

 

この生徒達は、この1年を乗り越えて、どんな中学時代をしめくくるのでしょう。

年表のようにうまくは進まないこともあるでしょう。

中学時代が、あの“すばらしい学年”の子ども達のように、思い出したくもない過去になるかどうかは、誰にも予想できません。

教育相談などで聞いた言葉の中でも、「受験のこと考えたくねー。」という声。「ぜったい、文化祭ではクリスタル賞をとりたい。」という、未来に向かっての声が聞こえます。

「なんか来年どうなってんのか、今から不安だやー。」という声も。

そうだよね。

未来は、突然にやってくるのではなく、今の次にやってくるのですね。

 

実はね、未来の答えは、今の自分だけが教えてくれるのです。

 

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