3年A組の保護者の皆さんへ 14
受検がスタートしました。今日は、HくんとMくんが、入試でがんばっています。それぞれの自分が決めた道に向かって、それぞれが頑張るんですね。来週からが私立高のピークです。人生で初めての受験。どの子も当たり前に、不安で不安でしょうがないのです。どの子も当たり前に、緊張して緊張して、夜も寝れないときだってあるのです。「先生、志望校下げた方がいいのかなあ?」なんて、相談に来る生徒もいます。みんな、押しつぶされそうな心境で今生きているのです。15の春は、試練の春です。
アレバダスの法則
放課後は、願書書きの指導です。練習を何度も書いて本番の清書をします。「こんなにていねいに書いたな、小学校の感想文以来だ。」「緊張する!失敗しそうだ!」なんて言っている生徒もいます。最後はハンコを押して終了です。
学級活動の時間に、折り紙にメッセージを書いて、鶴に折る作業をしました。
「この鶴はね、受験の朝、5時半に開けてみるのです。だから、その時の気持ちを考えて書かなくてはいけません。メッセージをあげる人は、折り紙に書いてある名前の人。もし、何も書いていなかったら、自分がメッセージをあげたい人に書きましょう。」
そんなことを言ったら、「朝の5時半なんて無理!」なんていう声でおお盛り上がり。でも、いざメッセージを書き始めると、どの子も真剣です。受験当日の朝5時半。誰もが体験するであろう、その時刻に、いったいどんな言葉を伝えようか。自分のことではなく、相手のために一生懸命考えます。「先生、この1時間で終わり?もっと書きたい」という声に押され、2時間行いました。
一人一人の名前を書いた封筒には、ていねいにたたまれた鶴が一杯なのです。この鶴は、きっと朝の5時半に、希望と勇気を心に届けてくれます。
今年も年賀状が、生徒たちから届きました。“卒業まで宜しくお願いします。”“こんなわたしですけど、最後までお願いします。”生徒からの年賀状を見る度に、胸が引き締まる思いです。
昨日は、大学時代の友人から年賀状が届きました。今ごろ届くのが、その彼らしいところ。今現在は、東京のYOKOTA電気という会社で働いています。もっぱら、ヘリコプターのスピードメーターを開発する仕事で、そのため、しょっちゅうヘリコプターに乗っているんです。
大学時代のわたしはもちろん、親友と呼べる仲間達は、ほとんど全員が苦学生でしたね。もう、家からの仕送りなんかわずかなものですから、みんな、学生をしながら働きました。今の、茶髪でブランド品を身につけているような、ドラマに出てくる大学生とは大違いです。アパートもおんぼろ。部屋なんかに風呂やトイレなんてありません。すべて共同です。わたしの部屋なんか、鉛筆を落とすと転がるくらい傾いているんですから、相当でしょう。
そんな、学生時代の頃頭の中にあったのは、“人は苦しい時に、他と助け合えるか”でした。貧乏でお腹がすいていても、考えることはすごく、高尚なのです。
ある日、
「信頼し合える関係ってなんだ?」と、今はヘリコプター乗りである彼が聞きます。
「そう、それは分けあうことなのである。」と、自分で問いて、自分で結論を言い出します。そして、延々とわたしを含め、仲間に向かって熱く語るのです。
その日以来、毎週土曜日に、わたしの部屋に来て、その時自分が持っている最高のものをみんなで分け合うという習慣ができました。というより、半ば強引にスタートさせられました。
アレバダスという法則は、そのときの一つのルールを言葉にしたのです。
週末になると、それぞれ今最高のもの(といってあるもたいしたことはないのですが)が、回収され、分け合うのです。あったら出すのです。(=アレバダス)ケンタッキーでバイトしている者は、店の残った品を持ってきたり、高級料亭でバイトしている者は、懐石料理の残がいなんかを持ってくる。コンビニで働いている者は、おでんの残りというように、集めるとちょっとした贅沢なごちそうになりました。みんな、料理を持ってくる袋は、黒いゴミ袋に入れてくるので、異様な光景なのですが、中に入っている物は、今、自分ができる最高の物ばかりなので、夢のゴミ袋でした。でも、絶対に自分ひとりで食べない。みんなで分け合う、それがアレバダスなのですから。
時には、今回は何もなくて出せないという時だってあります。そういう時は、胸をはって何もださないのです。そのかわり、「うまい!うまい!」とおいしくご馳走になる。アレバダス、ナケレバダサナイの法則なのです。出した方も、決して、出さなかった者に恨んだり文句を言うことはないのです。なぜなら、今回は、たまたま出せたけど、困った時、助けてもらうことだってあるのだから、みんなお互い様だなって思うのです。
困っている人の相談にのるには、その人と同じ悩みを抱えた人でないとできないと思います。人を応援したり、激励するってことは、自分も、苦しいけどがんばっているんだぞというメッセージなのだと思います。3Aのみんなの鶴。それは、同じ苦しさをもっている仲間だからこそ折れる鶴なのです。
苦しいときこそ、周りと手をつなごう!
わたしの青春時代のアレバダスの法則は、わたしにそんな考えを養ってくれました。
ヘリコプターの彼は、災害になると、自分で操縦桿を握りかけつけるやつです。アレバダスの法則は、わたしたちにとって永遠に変わることの無い、不変定理なのです。
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