もうひとつの
2学年だより 4
昨日は、担任の先生がお休みでしたので、久しぶりに2Aの教室で弁当を食べました。スピーカーからは、生徒会選挙の告示の放送が流れます。選挙に、新人戦、明友祭、修学旅行と、2年生が活躍する行事が、いよいよ始まります。選挙については、以前から、「誰にでもチャンスはあるんだよ!」と話をしてきました。大切なのは、チャレンジする勇気と、そして“自分がやらなきゃ”の信念です。
ちょっと残念なことに、その大切なことのひとつである、チャンスの芽を摘み取っている人がいるという話を聞きました。具体的に言うと、「あなたは、立候補するな!」と、どうやら圧力をかけている人がいるらしいという話です。きっと、自分も立候補するから、そんなことを言っているのでしょう。実は、気持ちは、よくわかります。対立候補が立てば、その分、落選する恐れがでてくる。これは、落選したことがない人は、わからないでしょうが、悲しいものです。皆の前で、落選するのは・・・。でも、だからといって、誰にでもあるチャンスの芽を摘み取る行為は、“ひきょう”なものです。
人間の心の底にある、一番汚い部分、“自分さえ・・・”。それは、自分の強い意志で、封じ込まないといけません。それには、正義を愛する集団の心が必要ですね。
「そんなこと、言っちゃだめだよ」誰か、一人でも言ってあげたら、“ひきょうな心”は、一瞬にしぼむものなのです。
新人戦の組み合わせ、どの学校の顧問の先生も、なんとか自分のチームは、有利になりたいと必死です。でも、“ひきょう”な手で勝って、その後、何が残るのでしょう。我がテニス部は、厳しいブロックで戦います。
生徒会長D
「選挙に出るな!」
そんな、暗黙の会話が流れていると聞き、1時間目は、学年集会を臨時に持ちました。授業をつぶしての集会は、心が痛みます。
でも、「教科書に書いていない大切な話」は、学校にはたくさんあります。
話の中身は、@これは、立派な選挙違反だから、立候補届出から、もう一度白紙に返すということ。A落選したくない気持ちはわからないことはないが、正々堂々と戦うことで、たとえ落選しても、何かが自分に残るのだということ。B人の上に立つ条件のこと。時間を守れないリーダーが、どうして、ステージの上から「時間を守って整列してください」なんて言えるのか。スカートの丈を短くしたものが、どうして、ステージの上から「身なりを正してください」と言えるのか。リーダーは、自分のことをきちんとして、始めて、多くの人に指示や呼びかけができるのだということ。
学年の先生の打ち合わせよりも、多くの時間をかけて話をしてしまいました。わたしの前で座って聞いていた、Kくんには、がんがんつばが飛んでしまいましたね。ごめんなさい。
生徒会選挙は、毎年行う、恒例行事ですが、つい頭にカッとくるんです。
わたしの事を言うのはちょっと恥ずかしいんですが、わたしは中学校のとき、生徒会長に立候補して見事落選したんですね。だから、生徒会の役員に対する目は、少々嫉妬を含んでいるのかもしれません。落選した事を生徒に言うと、生徒は喜んで笑うんです
「先生、人気ねがったんだなー」って。でも、当時の自分は、真面目に母校を愛し、考えていたわけで、落選したショックは相当でしたね。
M中に勤務していたとき。それはもう、校内暴力の花盛りでした。真面目に、2階から机が降ってきました。学校には、車で通えませんでしたね。何されるかわからない。
そんな中でも、一番荒れていたのは、2年生でした。放課後、教室に行ってみると、机や椅子は、めっちゃくちゃ。黒板には、“バカ”“死ね”の落書きの嵐。
「おいおい、大変な学校にきたもんだ」って、思ったものです。
そんな中、同じように、生徒会選挙がありました。
大体、こういう学校の雰囲気では、立候補者なんてなかなか出ません。だって、不良グループから何言われるかわからないんですから・・・。それでも、立候補してもらわなくては、学校としては困る。当時、体が大きくて、気が優しい、Dくんという生徒に、生徒会長に立候補するように言いましたよ。
「先生、無理だ!」と、Dくんの答え。
「D、周り見てくれ、あと、誰がふさわしいと思う。こんな学校の中で、大変だとは思うが、自分しかいね、とおもわねが?」そんな、話をしながら説得したように思います。
「だって、先生、俺、何にもできねぜ。机の並べ方くらいだぜ」と、D。
「お、そうだ。それ、公約しろ。俺は、何もできねけど、机を並べることをがんばります」って。
本当にそんなことを公約にして、Dは選挙に出て、当選しました。
公約だから、守らなくてはなりません。始めは、“机を整頓する週間”とか、“環境美化コンクール”とかしながら、放課後の教室の整理整頓を進めるのですが、結局、できませんでした。たとえ、整頓しても、不良グループが来て、めちゃくちゃにして帰っていくのです。
Dの学年が3年になり、いよいよ卒業も近づいてきたときでした、放課後、3年の教室に行ってみると、珍しく、机が整頓され、黒板がきれいになっているではありませんか。次の日も、次の日も・・・。
どうしてだろう、ちょっと早めに、放課後教室に行ってみると、Dが一人で、3学年5クラス全員の机を揃えていたのです。
「どうした?D」
「先生、俺、結局、公約守れなかったから、最後ぐらいは、と思って・・・」
わたしは、なんだか言葉に出ませんでした。
Dが、そんなことをやっていたというのは、誰も知りません。Dが、わたしに言ったんです。
「何言われるかわかんねがら黙ってて」と・・・・。
彼に、この行為を、“何言われるかわがんねがら黙ってて”と言わせている、この学校、そして、自分が情けなかったのです。
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