もうひとつの
2学年だより 2
インフルエンザと、咳が止まらなくなるかぜの流行で、先週から2年生は、欠席が相次ぎました。疲労もあるのかもしれません。地区総体に向けて、体調の管理も勝利のための重要なポイントであることを、教えたいものです。
学区内で、制服のスカートを短くして歩いている明倫中生がいるという話がありました。該当の生徒に話を聞くと、「一度家に帰ったもん。」と、屈託のない笑顔。一度家に帰ったから、制服のスカートの丈は、学校の規則には関係ないという解釈なのでしょう。
難しいですね。中学生の生徒指導は。タバコや飲酒、無免許運転など、はっきり法律に触れるような行為の指導は、生徒自身も、やってはいけないとわかっているので、指導はしやすいのです。
法律には触れない問題。モラルやマナー、道徳心というのでしょうか。その指導は、本当に難しい。以前もいました。お腹がいたくて、早退したはずの生徒が、街中を私服で遊んでいる。話を聞くと、「一度家に帰ったけど、治ったからいいだろう。」という解釈。
何か違うんだなあ。もし帰って、治ったとしても、家から出られなかった、じっと、みんなが学校にいる時間は、自分も家にいるんだ、それが常識として思っていたし、今だに思っている、わたしのモラル。
このあいまいな部分を、指導しているのが、今や中学校しかなくなってしまったと思います。
女子生徒のタバコと妊娠率との関係を、産婦人科の先生は教えてくれました。
それよりも、当たり前と思っていたことの崩壊と、それを、個性尊重といって許している社会こそが、もっと根深い問題だと思っています。
2年生のスカートの丈が短くなるにつれ、あいさつと笑顔が消えているような、そんな印象を受けるのは、古い考えのわたしだからでしょうか。
ハンカチの愛
以前、この学校で2年生の担任をしていたときのことです。
5月のあるたくさん雨が降っている日に、体調を崩した、Aさんが学校を早退しました。まずいことに、その日は金曜日で、来週の予定や準備するものなどの書いたプリントを、担任のわたしは、Aさんに渡し忘れてしまいました。
わたしは、帰りの会の時に、「Aさんにプリントの入っている封筒を届けてくれる友達いますか。」と呼びかけました。
すると、Bさんが「私が持っていってあげる。」と気持ちよく返事をしてくれて、持って行ってくれたのです。担任として、少しほっとしました。誰も手をあげなかったら、このことを聞いたら、さぞAさんはがっかりするかもしれないと思ったからです。
雨の中を、Bさんは、仲の良いCさんと一緒に、自宅までもっていってあげることになりました。なんとなく、この話は、これで終わりかと思うでしょう。
この程度の話なら、インフルエンザやかぜが流行っている、今も、クラスによっては、“思いやり袋”といって、同じことを行ってくれています。
わたしが、思い出すのは、その後のことなんです。
次の日、Aさんのお母さんから連絡帳が、わたしに届きました。連絡帳には次のように書かれていました。
「昨日連絡帳を届けてくださった方はどなたでしょうか。実は雨に濡れないように、ハンカチのような布で包んで、ポストに入れてくださっていて、ありがたかったです。」
その日もうっとうしい雨が降っていましたが、わたしは、連絡帳を読んでとてもうれしくなったことを今も覚えています。
それは、BさんやCさんは、連絡帳が濡れないように、ハンカチのようなもので包んでポストに入れてくれた、そんな心遣いのできる中学生が、今目の前にいるのだと実感したからなんです。
また、そんな、小さなやさしさに、Aさんのお母さんが気づき、いてもたってもたまらず、わたしに連絡してくれたことも嬉しかったのですね。
Aさんの連絡帳には、そんな両方の温かい温かい心がいっぱい詰まっているように思えました。
「私が持っていってあげる。」と気持ちよく引き受けてくれたBさん、濡れないように包んでポストに入れてくれたBさんとCさんのアイデイア。「ありがたかった。」とわざわざ連絡帳に書いてくれたAさんのお母さん。
みんなみんなやさしさや思いやりの温かい心がいっぱい詰まっています。
封筒を持っていってくれるだけなら、雨に濡れようが、濡れまいが、ポストに入れれば、それで仕事は達成です。誰も文句は言えません。
でも、その後、濡れた封筒を手にするAさんのことを思い、二人で考えて、ハンカチで包んで入れた姿。なんとなく、これなんですね。法律で決めようが、決めまいが、人間の行動は、最後は、相手のことを考える気持ちなのですね。
あの日、早速、クラスの道徳の時間に、そのことを題材に、生徒と話をしました。
Bさんは、なんだか居心地が悪そうにしていました。
ある男子生徒が言いました。
これが本当の『愛デイア』だねって。
クラスに、あったかい風が吹きました。
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