2年B組の保護者の皆さんへ bW
最近は雨が多く、気分もはっきりしません。休み時間になる度に保健室へ通う生徒も見られました。ただ、少々、心の体力が低すぎる子供もいるようです。学習への苦手意識から保健室へ通う子供、気分屋でちょっとしたことで保健室に通う子供。保健室利用は、少々安易になされているのが気になるんですね。
少々辛いことや苦手なことでも、逃げずに頑張る、そんな心の体力を向上させたいものです。
複眼
月曜日の道徳の時間。『みんな違って、みんないい』というテーマを行いました。そう、それは教室の黒板の上に掲げているスローガンと同じです。
「わたし思うんだ。最近の人は、人の悪いところはよく気がつきます。テレビみててもそうでしょう。悪い点を、どんどん報道する。それを見ていると、本当にこの人悪い奴なんだなあって思ってしまう。それでも、いつも悪口いわれている国会議員の人だって、ある人にとってみれば、面倒見のいいおやじさんだったりするかもしれませんよ。みんなね。人って、悪いところ探すのは得意だけれど、良いところ探すのは苦手な生き物なんです。だまっていると、悪口、陰口ばかりの、根暗な人になっちゃうんですよ。そんな人生は、面白くないね。せっかく人生一度なら、明るく楽しく生きなくちゃならない。それにはね、人の良いところを探す名人になることです。さっきもいったけど、人は良いところ探すのヘタクソだから、名人になるために、トレーニングが必要です。」
依然と同様。“トレーニング”の言葉に、「またか」って顔が、一斉に並びます。
「まずは、プリントわたすから、自分が思う、自分の良いところを何でも書いてみてください。」
子ども達は、なんか重そうに筆箱をあけて、自分の考えている、自分の良さを書き始めます。
ゆっくり見て回ると、3分の1の子どもは書けません。自分の事を、冷静に、客観的に捉えることはむずかしいものです。
保護者の皆さんも考えてみてください。自分の良さは、何かなあって。
「それじゃあね。四角いマスが9つ書いてあるプリントを渡しますので、今日1日過ごしてみてクラスの人の誰かの良いところを発見して、それを書いていきます。」
さっきよりは、少しずつ書いていきます。自分のことよりも、人のことはやはり書きやすいものですね。それでも、中には「書けねー。」「9人全部さ?」という答えが返ってきます。
最後に、メッセージをはさみで切って相手にわたすのです。
「消しゴムをひろってくれたことや、掃除の時間一人がんばっていたこと。悩みにのってくれたことやどんなことでもいいんです。いや、むしろ誰もが気づかない小さなことの方が1番いい。あなたが発見した、人のよい点なんです。」
と言っても、月曜日はなかなか、思いつくことができませんでしたね。
「実はね、これを今週は1週間、毎日終わりの会で行いますよ。」
と言って、人の良いところ探しのトレーニングが始まりました。
先週は、廊下に貼られている、4月のお花見弁当の写真に、誰かが、人の顔の部分にいたずらをしたことがわかりました。松田先生が、本当に残念そうに、その掲示物をはずします。何か、心の寂しさを感じずにはいられないのですね。
生徒の数だけいろいろな生徒がいます。だから中には、心の栄養が足りない生徒もいるのかもしれません。でも、こういうことが「みんな違って、みんないい」ってことじゃないんですね。もっと、子ども達ひとり一人が、自分のよさを、伸びやかにどんどん、好きな方向に向かっていってもいいじゃないかってことなんです。
こんな事があると、誰だろう?とか、顔をいたずらされた生徒はいじめにあっているのかな?とか。生徒全員を疑いの目でみてしまいがちですね。それがまた辛いのです。
幸いなことに、今のところ、そんな悪質な気持ちのいたずらではないようですけれど・・・。
月曜日は、なかなか発見できなかった、人の良いところ。
土曜日になると、もう子ども達は必死です。短い時間で、どんどん今日1日で見つけた仲間の良さを書いていってメーセージを渡すのですから。「先生、もっと紙ください。」なんていう子もでてきました。わたしの方も、2Bの子ども達がこんなに、楽しそうに、前向きにこの活動をするとは思いませんでしたね。内心では、水曜日ごろに、できなくなるかなあって思っていたんです。
それが、目の前にいる子供たちの姿はまったく違います。
水曜日の駅伝大会応援の日も。暑くて、もういやになるくらい歩いた後でも、今日、見つけた仲間の良いところを書いては、互いにメッセージを配っているのです。空席になっている駅伝選手の机の上にも、メッセージカードがどんどんあがっていきます。
人間は、ひとつの見方でみてはいけないんですね。そう、トンボやバッタのように複眼をもつことです。嫌な相手にだって、必ず良いところを発見できるものです。複眼を持つということは、実は、教育するものにとって、とっても大切なことなんです。保護者の皆さんにとってもそう。自分の子供が、勉強が苦手だからって、そればっかりの目で語ってはいけないんですね。
大切なのはその他以外にも、この子供をみる目を持っていることです。
保護者の皆さんは、わが子に対していくつの目を持っているのでしょう。
土曜日の日。「約束どおり、この良いところ探しは今日で終わりです。」って言ったら、みんなから、「来週もやりたい。」という声。「先生、プリント刷ってください。そして教室に置いておいて、これからも続けたい人は続けられるようにしてください。」という代案まで出されました。
一応、けじめとして最後にしようといって行います。一人の女の子が、「先生にもあげる。」と言ってメッセージカードをもらいました。
中には
『良いところさがし、本当に楽しかったよ。』と。
わたしだって、負けられません。子どもの良いところ探しのプロ。
そう、目指すところは複眼教師です。
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