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第6章 鉄炭化物気泡形成に関わるシリカの作用

6.1節 鉄が炭酸水を還元する反応に対するシリカの触媒作用
6.1.a 二酸化炭素と鉄粉を混ぜるとガラス壁で起こる鉄の酸化反応
 地表の多くは岩石で構成されています。その岩石の主成分はガラスと同じ珪酸(シリカ;SiO2)です。 ガラス壁には気泡が付着して生成されることが観測されたので、 ケイ酸塩は気泡の形成にどのように関わるかを調べてみました。
 鉄粉をガラス瓶に入れておいても変化は起きません。ところが、固体の二酸化炭素であるドライアイスと 鉄粉を混ぜて蓋で密封しておくととガラス瓶の壁に茶色の物質ができます。 その鉄粉とドライアイスを混ぜたガラス瓶とできた生成物の写真を図31に示します。

           
  (a) 鉄粉とドライアイスを混ぜたガラス瓶    (b) ガラス壁にできた生成物
 図31 二酸化炭素と鉄によりガラス壁にできる茶色の物質

 何故、ドライアイスが混ぜられた鉄粉ではガラス壁に酸化鉄ができるのでしょうか。 ガラスの外界面では酸素が結合の手を出しており、この面に吸着する原子は炭素より鉄の原子です。 ガラス面に吸着した鉄の原子の電子状態は二酸化ケイ素に適応した電子状態となり、二酸化炭素とも結合しやすくなり、 ガラスの界面において鉄が二酸化炭素の酸素と結合して酸化鉄ができると考えられます。 従って、炭酸水中の鉄の原子もガラスの表面に付着して、カラスの界面において鉄が二酸化炭素の酸素と反応して酸化鉄と鉄炭化物ができると考えられます。 ケイ酸は炭酸水における鉄の酸化の触媒として機能します。


6.1.b 鉄炭化物気泡の形成反応に対するシリカの触媒作用
 炭酸水に鉄分を混ぜた場合に比べて、さらに図32(a)に示す砂漠の赤い砂を加えたところ、 図32(b),(c)に示すように加えない場合より気泡が多く発生しました。 ケイ酸は炭酸水に鉄を加えて鉄炭化物を生成する反応の触媒になっている考えを支持する結果です。
 図32(d)には炭酸水に鉄粉と砂漠の砂を加えた場合にガラス容器の水面より上部に付着した物質の写真を示します 。鉄炭化物による気泡はケイ酸である砂も付着して、水面に浮上し、ガラス壁に付着し、気泡が壊れるとガラス壁に付着します。 その砂は酸化鉄より水となじみが良いので、水を含んだケイ酸塩が集まってガラスに付着し、酸化鉄と領域を分けていると考えられます。



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