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民衆闘争報道−朝・日関係に関する朝鮮民主主義人民共和国外務省との会見記録(2012525


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01252日、ピョンヤン(平壌)での、朝鮮民主主義人民共和国外務省・日本課 チョ・ビョンチョル(趙炳哲)研究員との会見 記録 (その3)


柴野貞夫時事問題研究会



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日本政府との関係改善の道筋で、ピョンヤン宣言を履行して関係改善を果そうとする立場がしっかり整わない対話は、ただ空回転するだけです。](チョ・ビョンチョル研究員)


  
 
△写真 朝鮮民主主義人民共和国外務省−日本課 チョ・ビョンチョル(趙炳哲)研究員との会見―、(於ピョンヤン52日写真/柴野貞夫時事問題研究会

前週既報の通り、今回、ピョンヤンを訪問した「日朝友好京都ネット訪朝団」の構成グループのひとつである、「新聞−報道学グループ」の4名(・浅野健一同志社大学教授、・立命館大学コリア研究センター専任研究員、・同志社大学大学院学生、・柴野貞夫時事問題研究会代表)は、52日 朝鮮民主主義人民共和国外務省アジア局−日本課 チョ・ビョンチョル(趙炳哲)研究員との会見を行ったが、その続編を報告する。
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2日、ピョンヤンにおいて、チョ・ビョンチョル研究員は、我々の以下の質問事項(会談記録その@に明記)に対する朝鮮民主主義人民共和国の外務省見解として、忌憚のない誠実な回答を示された。また、柴野貞夫時事問題研究会からの、「六者協議と拉致問題」に関する補足質問にも、快く答えられた。
チョ・ビョンチョル研究員は、これらの回答で、幾つかの注目すべき指摘を行った。
●人工衛星の打ち上げは、科学技術を発展させ様とするすべての国に与えられた権利です。国連安保理のダブルスタンダードを糾弾します。民族の尊厳と自主権を侵害する、いささかの要素も絶対に許しません。
●日本政府は、我が国と国交がないことを口実に、我が国の原爆被爆者たちの願いに背いてきました。
●日本政府との関係改善の道筋で、ピョンヤン宣言を履行して関係改善を果そうとする立場がしっかり整わない対話は、ただ空回転するだけです。
●日本は何時も、六者会談の議題と関係のない問題を持ち出して来て、人為的な複雑さを生み出しています。六者会談の進行にとって、何も役に立たない日本が、なぜ六者会談に参加しているのか、非常に疑問であります。
20073月の六者会談・日朝作業部会で、日本側(当時、安倍政権)は「拉致被害者8人の死亡が確認されても、全員を生きて戻さない限り拉致問題は解決したとは言えない。」などと主張しましたが、そもそもこの会談は拉致問題の解決のためではなく、朝鮮半島の非核化を論議する場であり、会談を主導的に拒否しました。すぐ日本側は審議官と課長が駐ベトナム朝鮮大使館に、会議の継続を求め、謝罪に来ました。この事実は、今日初めて発表します。(回答本文から)
この、朝鮮政府外務省チョ・ビョンチョル研究員の指摘は、我々に次の様な、日本政府による「拉致問題」の、不当極まる外交的・政治的利用を思い起こさせる。
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213日、第56カ国協議は、合意文書を採択し、「919日合意(05919日、第46カ国協議の合意に基づく初期的措置)に基づいて、IAEA要員の復帰を求め、共同声明に言う全ての核計画の一覧表について、6者協議する」と言う「初期的措置」を確認した。そして、「共和国に対する経済・エネルギー及び人道支援について、協力することで一致し、緊急エネルギー支援の提供について一致した。当初5万t(総計100t)の重油に相当する緊急エネルギー支給の最初の輸送は、今後60日以内に開始される」(同上)とし、朝鮮半島非核化にむけての「行動対行動」の原則を取り決めた。しかし、日本政府(安倍政権)だけは、「拉致問題の解決」を前提にして、エネルギー支援を拒否した。これは、東北アジアの平和体制より、日本の右翼政権維持の為の一握グループの利害を上に置く犯罪的行為であった。この行為は、米国の合意破りとともに、六者協議の破たんを準備した大きな要素となった。(参照―下記参考サイト○六カ国協議)

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以下、チョ・ビョンチョル(趙炳哲)研究員の回答本文]
次に、浅野先生方の、○人工衛星の打ち上げ、所謂ミサイル問題についての質問にお答えします。これは、"長距離ミサイル発射実験の様に見える衛星の打ち上げ"と言う、こんな言葉使いが成り立つと思いますか?
この様に言いますと、すべての国の人工衛星は、長距離弾道ミサイルの発射実験と言う事になるのではないですか?自国で打ち上げるロケットは人工衛星であり、こちら(朝鮮民主主義人民共和国)で打ち上げる人工衛星は、長距離弾道ミサイルだと言う、こんな強引な、話にもならないものであります。
これは他でもなく、我々の人工衛星の打ち上げを認めないとする、日本政府の対朝敵視政策の現れであります。日本は、われわれの人工衛星の打ち上げを口実にして、早くも43日に国連の議長声明が発表されると同時に、制裁団体の名簿を国連制裁委員会に提出しました。また(413日期限を迎えた、我が国に加えている日本独自の)制裁の延長を発表しました。
我々は、こう言った日本側の動きに対し、気には留めません。しかし、これからきっちり計算はして置くでしょう。
今回の人工衛星の打ち上げに対する日本政府の出方をこちらから見ていると、自分の信念も、主張もなく行動する日本が、情けなく、かわいそうに見える限りです。
人工衛星は、自国の科学技術を発展させ様とする全ての国々に与えられた、合法的権利であります。我々は、国連安保理の議長声明を全面排撃し、ダブルスタンダードを糾弾します。我々は、民族の尊厳と自主権を侵害する、いささかの要素も絶対に許しません。
もうひとつ、先端技術は如何なる国の独占物にもなり得ないものであります。アメリカや日本だけが、人工衛星を打ち上げる事が出来ると言う、そう言う法律はありません。我々は、科学技術の発展が経済強国の力と見なしています。我々は今後とも,国際法に準じて、国際的に認められた宇宙利用の権利をひき続き行使して行くでありましょう。力があってこそ、自分を守る事が出来ると言うのが,我々の立場であります。
○次に、外国のメディアがピョンヤン支局を開設出来るかと言う質問がありました。共和国にはロシアのイタル・タス通信、中国CCTV、はそれぞれの駐朝大使館に支社を置き、アメリカのAP通信、日本の共同通信も支社を置いて活動をしています。
メディアの活動において、客観性を保つ事がいちばん重要だと思います。我々に対して、悪意に満ちた報道をやたらにする、そんなメディアの共和国駐在が、我々にとって必要があるのかと言う事を、皆さん方が判断してください。
○次に、六者会談及び対米交渉の行方についての質問ですが、私は直接的な担当者ではありませんので良くは分りませんが、一言申し上げておきたい事があります。
六者会談の進行にとって、何も役に立たない日本が、何故六者会談に参加しているのか非常に疑問であります。
六者会談そのものの目的は、朝鮮半島の非核化であります。この問題の解決の方法を協議するものである六者会談ですが、日本は何時も、六者会談の議題と関係のない問題を、何時も持ち出して来て、人為的な複雑さを生み出しています。
日本としては、終局的に核問題の解決を望んでいません。それは、日本の軍事大国化を実現する為であります。私としては、日本は六者会談に参加しない方が良い、参加して欲しくないと言う立場です。六者会談を複雑にするだけです。
○日本で原発事故が起こった時に、日本政府から何か通報があったかとの質問ですが、何も通報された事実はありません。
○次に、朝鮮に住んでいる被爆者の問題であります。
この問題は以前から、両国の赤十字社や民間の団体から提起されている問題であります。しかし、この問題もやはり、日本政府の対朝敵視政策により、在朝被爆者達は苦痛を余議無くされてきました。 私の記憶では、1999年頃に日本外務省が、この在朝被爆者問題をもって訪朝した事があります。しかし結果は何もありません。これまで日本政府は、我が国と国交がない事を口実として、我が国の被爆者達の願いに背いて来ました。以上で諸先生からの質問に対する、簡単ではありますが、回答と致します。
先生方から、他に何か質問はありますか?
浅野健一教授:日本人遺骨問題以外に、日本政府との間で関係正常化を図る道筋はあるのでしょうか。
チョ・ビョンチョル(趙炳哲)研究員:その問題は、日本政府が朝鮮との問題を解決しようとする決意と姿勢を持たないと、むずかしいと思います。ピョンヤン宣言をこれから履行して、関係改善を果たそうと言う立場が、しっかり整っていない限り、そう言う意思を持つ事なく、しょっちゅう対話をするとか何とか言って、向き合って話し合いをしても空回転するだけです。
浅野健一教授:昨年、サッカーでピョンヤンに日本外務省の関係者が15人やって来ました。その中に松浦氏をはじめ日朝交渉の人間も含まれていましたが、何か糸口を探る様な動きはあったのでしょうか。
チョ・ビョンチョル(趙炳哲)研究員:昨年、日本訪朝団が来た時、私が同行させて頂きました。当時,何等交渉とかそう言う打合せなどは全くありませんでした。
柴野貞夫時事問題研究会代表:200737日〜8日ベトナム・ハノイで開かれた、第5回6者協議における第1回作業部会で、日本側は新聞報道によれば、"拉致死亡者が確認されたとしても、拉致問題は解決されたと言えない。'全員'を返すべきだ"と主張したとされています。つまり、5名生存8名死亡を'認めず'横田めぐみをはじめ13名全員の'生存を前提'に、それが'解決されない限り'拉致問題は未解決のままだと主張したと伝えられています。しかも、それに加え根拠のない失踪者を矢鱈挙げたとのことですが、日本側は、それ以外に何を主張したのでしょうか。
チョ・ビョンチョル(趙炳哲)研究員その時ハノイには、私も行っていました。こちらは、団長(宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使)を含め、3名が参加しました。日本側は20人程度来ていました。最初の会談は、日本大使館で行われました。
今おっしゃった通りで、日本側は、拉致被害者の内、死亡者も認めないと、「生きて戻して返さない限り」認めないと、この問題の解決は認めないと、言いました。それで私たちは、今、そもそもこの会談は、拉致問題解決の為の会談ではないのに、そう言う事を頭からぶつけてくるので、そんな事ではないと言明し、会談を始めてから5分で大使館から出て来たのです。つまり日本側の問題提起と言うのは、会談の議題には合わないものだと、私たちの方で判断し主導的に切りました。
それで、審議官とか、アジア大洋州課長が我々の大使館に訪ねて来て、お詫びをしています。その時にこの会談を、何とか何とか、続けて行きましょうと私たちにぶら下がりました。
こう言う事は、今まで公開されていません。それで私たちとしましては、6者会議の枠組みの中で、二国間交渉を30分間、向き合って席について、相方の立場表明を発表する、そう言う形で終わらせました。
(終わり)

<参考サイト>

☆民衆闘争報道−朝日関係に関する,朝鮮民主主義人民共和国外務省との会談記録・その1 
(2012年5月12日) 


☆論考「日本政府は<拉致問題>が決着済みであることを隠蔽している」(2012年5月20日)

☆朝鮮半島の戦争危機を煽る張本人は誰か (シリーズ・その1) [2010年12月31日更新]

○六カ国協議関係

☆4月14日付、朝鮮外務省声明 《六者会談は、必要なくなった》 (朝鮮民主主義人民共和国・労働新聞 2009年4月15日付)

☆ヒル米国務次官補の訪北と、「国際的基準による核検証要求」の破綻によって、迫られる米国の義務履行 [2008年10月6日更新


☆朝鮮半島の平和の第一歩は、米帝国主義の核基地である韓国と日本の非核化である 
[2008年8月9日更新]


☆6者協議の停滞を生む、米国の義務不履行を糾弾する(2008年1月29日)

☆6カ国協議において、「拉致問題」を"東北アジア全体の平和構造"の上に置いて日本はどの国からも相手にされなかった(2007年3月25日)

☆6カ国協議におけるアメリカの最新動向とは(2007年3月18日)

☆6カ国協議、2.13共同声明の誠実な履行によって極東アジアの平和への展望が生まれる
(2007年3月12日)