声劇用台本/流れる季節の中で

 


西沢 和真♂  無気力系の男の子。根暗じゃない。やる気がないだけとも積極性が無いだけとも 台詞数:102


津久井 祐次♂ 能天気で明るい男の子。良い奴だけど、どこか抜けてる。 台詞数:65


日野 守♂♀   一見おとなしくて優しそうな雰囲気。だけど、言う事はきつい。自分は頭良いと思っている節がある。 台詞数:66





笹山 唯♀ おとなしい子。感情がすぐ表に出る。慌てやすい。 台詞数:56


麻田 梢♀   明るい子。優しくて他人を気遣うのが好き。 台詞数:89


鈴木 美希♀ 明るくて元気のいい女の子。声が大きめ。一人称は自分の名前。 台詞数:90









第十三話『どうすればいいか分からないけど』






1 和真 「はい。もしもし?」
2 「もしもし、今、いい?」
3 和真 「ああ、いいよ」
4 「その前に、あの後どうなったの?」
5 和真 「別に……普通に帰っただけ。んで、さっき夕飯食べた」
6 「僕はこれから。まあ、そんなのどうでもいいけど」
7 和真 「……で、用事って?」
8 「あのままで良いの?」
9 和真 「そう言われてもな」
10 「気持ちは分からないけどね、あまり良い気持ちじゃないでしょ」
11 和真 「そりゃあな……で、どうしろっていうんだよ」
12 「明日、空いてるなら駅前に9時集合」
13 和真 「は?」
14 「って麻田さんと相談して決めたの。何もしないより良いと思うけど?」
15 和真 「それって、やっぱり……」
16 「もちろん笹山さんも来るよ」
17 和真 「はぁ……おせっかいだよな、お前ら」
18 「僕はただもったいないと思うだけだよ」
19 和真 「分かった。行くよ。っても何すればいいんだ?」
20 「普通に遊ぶだけだよ」






21 祐次 「おぉい、西沢ぁ。遅いぞぉ」
22 和真 「まだ20分前だって……って、元気ないのか?」
23 「珍しく元気がないね。津久井くん」
24 祐次 「まぁなぁ。いや、しかし鈴木はすげーぞ」
25 美希 「あははー、そかなー?」
26 和真 「なんだ?」
27 美希 「あのねー、美希1時間早く来てたんだー。んでねー……」
28 祐次 「そこで、鈴木と会ったんだけどよー」
29 和真 「津久井も1時間前に来たの?」
30 祐次 「いや、二時間前」
31 「はぁ……? なんでそんなに早く来てるの?」
32 祐次 「ああ、そりゃあ……待ち合わせの時間忘れたからな」
33 美希 「祐次くん面白いよねー」
34 「面白いっていうか……呆れるというか」
35 祐次 「んで、暇だったからそこのファミレス入ったんだよ。朝メシも食ってなかったし」
36 美希 「うんうん、そこで美希と会ったんだよねー」
37 和真 「ん? なんで鈴木さんが居たんだよ?」
38 美希 「お出かけだから、朝ご飯外でとろうと思ったんだよー。えへへー」
39 祐次 「そしたらよー、鈴木ってすっげえ食うのな……」
40 美希 「えー? でもー、祐次くんも食べてたよねー」
41 祐次 「普段はあんなに食わねーって俺……」
42 美希 「そなのー? 美希は普通だけどなー」
43 「津久井君ってかなり食べるけど……そんなに?」
44 祐次 「ああ……何食べてたかは思い出せないけど、10個以上頼んでたな」
45 美希 「んとねー、13個かな」
46 和真 「……なんでそんなに……」
47 「っていうかさ、なんで津久井君苦しんでるの?」
48 祐次 「いや……なんつーか、張り合ってな」
49 「ほんっとうに下らない事で頑張るねえ……」
50 祐次 「目の前で平気そうな顔で食われると、俺もいけるんじゃねーのかなーってな……」
51 「軽い頭だねえ」
52 祐次 「でも、あれだ。次は負けねーぞ」
53 「はあ……そういうの意味無いと思うよ」
54 美希 「う〜ん、美希は楽しいから良いと思うんだけどなぁ」
55 「……まあ、そうかもね。楽しければ、だけど。どう? 津久井君」
56 祐次 「きつかったけど楽しかったぞ」
57 「ふーん……」
58 和真 「いいんじゃないか? まあ、いくらかかったか気になるけどな……」
59 美希 「んとねー、これくらいっ」
60 「え……なにこのレシート……」
61 和真 「昼飯一ヶ月分ってとこか……やっぱやめた方がいいな」
62 美希 「あ、美希ちゃんと唯ちゃん来たよ。おーい!」
63 「おはよ、早いね。みんな」
64 「麻田さんも早いでしょ。まだ15分前だし」
65 「うん、そう思うよ」
66 美希 「美希と祐次くんは二時間前から居たんだよ」
67 「あー……もしかして津久井くん美希に付き合ったの?」
68 祐次 「ああ、まあな」
69 「大変だったでしょ……」
70 祐次 「ま、ちょっとだけな」
71 美希 「あははー。あ、唯ちゃん、おはよ。元気ないねー」
72 「え? そう?」
73 美希 「具合悪いのかな?」
74 「う、ううん。全然そんな事無いよ」
75 和真 「無理はしない方が、いいよ」
76 「あ、はい。ありがとう、ございます」
77 「だいじょーぶよ。ちゃんと熱も測ってきたし」
78 和真 「まあ、ならいいけど」
79 美希 「じゃあじゃあ、もう出発しようよ」
80 和真 「って、どこ行くんだ?」
81 祐次 「あ、守から聞いてないのか?」
82 和真 「ああ、とりあえず来てみなって言われたから」
83 「あの、美希ちゃん。私も知らないんだけど」
84 美希 「んとね、ネズミーランドにゴーゴー!」
85 「そうしたかったんだけどね……高くて無理でしょ」
86 美希 「ええっ!? 美希聞いてないよっ!」
87 「ああ、やっぱ聞いてなかったの? すぐに高くて無理だねーって言ったの」
88 美希 「んー、そっかー……残念……」
89 「というわけで、その近くの臨海公園に行くことに決まったんだよね」
90 美希 「そっかそっか。それじゃあそっちに出発ーっ!」
91 「……あんた結局どこでもいいんじゃないの?」
92 「近くにあるだけに、お預けされてるみたいにも感じるね……」
93 祐次 「なんなら泳いでいけばタダで行けるだろ?」
94 「無理だよ」






95 美希 「着いたよーっ!」
96 「言わなくても分かるわよ……」
97 和真 「けっこう混んでるな」
98 「連休だしねー。家族連れ多いよね」
99 「うん。いいなあ」
100 「もしかして、家族旅行の予定とかあったの?」
101 「ううん、ないよ。だから羨ましいなあって」
102 「そっか、唯の家って連休って滅多に取らないんだっけ」
103 祐次 「はい。帰りの切符」
104 「え、あ、ありがとうございます」
105 「意外と気が効くわねぇ。でも、まとめて持ってた方がいいんじゃない?」
106 祐次 「ああ、そりゃそうだな。じゃ、西沢よろしく」
107 和真 「い、いいけど……自分で持てばいいだろ」
108 祐次 「西沢の方が、俺よりしっかりしてるだろ?」
109 和真 「そうか? お前の方が気が回るみたいだしさ」
110 祐次 「これは、ただの癖っていうか習慣っていうか……まあ頼んだぞ」
111 和真 「あ、ああ分かったよ」
112 「それで、どこ行こっか? 観覧車もあるみたいだけど」
113 美希 「いいねいいねっ。美希高いところだーい好きだよ!」
114 「悪いけど、僕はやめとくよ……」
115 祐次 「そーそー、守は高いとこ苦手なんだよ」
116 「まあね……」
117 美希 「そっかぁ。じゃ、仕方ないね」
118 「唯は? どこかある?」
119 「んと、分かんないけど観覧車行きたかったな……」
120 「ごめんね」
121 「あ! ううん、大丈夫です。他に知らなかっただけだし」
122 「まあ、ここに居ても仕方ないし、あっちの方行こうよ」






123 祐次 「しかし、来たのはいーけどよ。なんもないぜ」
124 和真 「まあ、そんなもんだろ」
125 「そーよ。それに海が見えるだけで十分じゃない?」
126 美希 「それに芝生もキレイだよーっ。気持ち良いね」
127 祐次 「そーゆーもんか?」
128 和真 「いや、分かんないけどな」
129 「まあ、どっちでもいいけど、ずっと立ってるのは疲れるね」
130 美希 「守くん年寄りくさいよっ」
131 「……でも、私もずっとはちょっと疲れるかな」
132 祐次 「俺もー」
133 「はいはい、大丈夫。レジャーシート持って来たから」
134 美希 「おおお! 梢ちゃん素晴らしいっ」
135 「……鈴木さんは座らなくていいんじゃないの?」
136 美希 「有るに越したことはないんだよっ。ね、ね、お弁当は?」
137 「そこまで手回んなかったの。昨日、突然決めたし……」
138 美希 「梢ちゃん朝弱いもんねぇ?」
139 「うるさいわねー」
140 「あ、あの私も持ってきたんだけど……いらないかな?」
141 「え? そんなことないよ。広げよ。ほら、西沢君手伝いなさい」
142 和真 「ああ……笹山、やるよ。」
143 「はい、あ! すみません」
144 和真 「はぁ……いいよ」
145 「もう……手触ったくらいで騒がないの。唯?」
146 「あ、あの、別に、嫌とかじゃなくて、驚いちゃっただけで」
147 和真 「だからいいって……よし、こんなもんでいいか?」
148 祐次 「いいんじゃん?」
149 「ふう、疲れたー」
150 祐次 「お前、ほんと年寄りくさいのな」
151 「前から知ってるでしょ。……笹山さん座んないの?」
152 「……あ、はい。あの……どこ座ればいいですか?」
153 「どこもなにも好きなとこ座ればいいの」
154 「んっと……」
155 和真 「……」
156 祐次 「ここでいいじゃん。西沢詰めろよ」
157 和真 「んな……ああ」
158 「すみません」
159 和真 「だからさ……謝んなくていいんだって」
160 「はい……」
161 祐次 「で、これから何すんの?」
162 「そうねえ、まだ10時だからご飯も早いし」
163 美希 「美希お菓子食べたいなーっ」
164 和真 「え……さっき食べたばっかりじゃないの?」
165 美希 「甘いものは別腹なんだよ」
166 和真 「本当にもう一つ胃がありそうだよな……」
167 美希 「ん? あははー、そうかもねーっ」
168 「あんたって、牛なんじゃないの?」
169 美希 「んー? なんでー?」
170 「牛は胃が四つあるのよ……」
171 美希 「へぇー、確かに最近体重増えたかなーっ? って思ってたんだよねー」
172 「え? 美希ちゃん凄く細いのに……」
173 美希 「そんなことないよーっ」
174 「それ、すっごくイヤミに聞こえるんだけど……」
175 和真 「な、なあ……津久井」
176 祐次 「あん?」
177 和真 「どうすればいいんだ?」
178 祐次 「ん、俺もわかんね」
179 「まあ、こんなもんじゃない?」
180 美希 「ねえねえ和真くん! お菓子買いにいこっ!」
181 和真 「え? あ? ああ、うん」
182 美希 「やったーっ! じゃあ唯ちゃん和真くん借りてくからねー」
183 「え? えと……う、うん。いいよ」
184 和真 「い、いいよって……笹山?」
185 「ゆ、唯? 大丈夫?」
186 「え? あ! あ、あの……借りちゃだめですっ」
187 和真 「だめって言われても……」
188 美希 「えー? だめー?」
189 「いい加減にしなさい! ほら、唯も落ち着いて」
190 「うん……あ、あの……西沢くんごめんなさい」
191 和真 「いいよいいよ……」
192 美希 「大丈夫だよー、ちゃんと返すからねっ」
193 和真 「俺は物じゃないって……まあ、すぐ戻ってくるよ」
194 「……いってらっしゃい」
195 和真 「ん? ああ、行ってくるよ」






196 「美希ちゃんまだ戻ってこないね」
197 「30分か……微妙なとこねぇ」
198 「……」
199 「唯?」
200 「あ、ううん。なんでもないよ」
201 「そう? ならいいんだけど」
202 「うん……遅いなぁ(ぼそ)」
203 祐次 「……よし!」
204 「はい?」
205 「どしたの?」
206 祐次 「守、一緒に行かないか?」
207 「やめとくよ」
208 祐次 「おまっ! ちょっとは聞いてくれよ」
209 「ちょっとは内容話してね」
210 祐次 「まあまあ、いいだろ? ちょっと付き合ってくれよ」
211 「だから、やめとく」
212 祐次 「そっか。仕方ねえな……」
213 「だから、なんなのよ」
214 祐次 「いや、あいつら探しに行こうと思ったんだけどな」
215 「そうねぇ……じゃあ、あたしも行こうか?」
216 祐次 「お、さんきゅー。笹山さんは?」
217 「え? 私ですか?」
218 祐次 「ああ。まずいかな」
219 「えと……いいですけど」
220 「それじゃあ僕は待ってるよ」
221 祐次 「おう、一人にして悪いな」
222 「でも、一人で残ってもらうの悪いから私は――」
223 「いいよ」
224 「でも……」
225 「……あー、いいわよ。私が残るからさ。行ってきなさいよ」
226 「わ、悪いよ」
227 「どっちが残ったって一緒でしょ。気にしないの」
228 「う、うん……」
229 祐次 「まあ、すぐ戻るからよ。悪いな」
230 「はいはい。いってらっしゃい」
231 「……津久井くんどうしたのかしら」
232 「いつも通り……だろうね」
233 「遊んでるってこと?」
234 「たぶん」
235 「もしかして、最初から残るつもりだった?」
236 「どうかな? ま、なんにしろ席取りはいなきゃならないしね」
237 「あー……なるほど……」
238 「別に気を使ったわけじゃないんだけどね」
239 「あはは、一人にしようとしてごめんね」
240 「別に一人でもいいんだけどねえ」
241 「もー、そういうこと言わないのー。こっちが寂しくなるでしょー?」






242 美希 「ただいまーっ」
243 「美希ー! 遅いわよ!」
244 和真 「いやぁ、悪いね。遅くなっちゃって……」
245 「何やってたの? うわ……また、随分と買い込んだわねぇ……」
246 和真 「はあ……重かった……」
247 美希 「あははー、ありがと和真くん。助かったよっ」
248 「もう1時間もどこ行ってたのよ」
249 美希 「んとねー、お菓子買ってたんだよ」
250 和真 「結構遠くて……まあ、それだけじゃないんだけど」
251 「ん?」
252 美希 「じゃーんっ! ほら、遊べるように買ってきたんだよ」
253 「ラケット? それと、これはネット……?」
254 美希 「うん。バドミントンなら誰でもできるよねっ」
255 「……あたし、スカートなんだけど」
256 美希 「美希もだよ」
257 「そんなに長くないんだけど」
258 美希 「美希はもっと短いよー」
259 「じゃあ、できないでしょっ」
260 美希 「大丈夫だよーっ。あははーっ」
261 「大丈夫じゃないっ! もー……」
262 和真 「……ごめん。気が付かなかったよ」
263 「あ、いいのよ。それに、美希が言い出したんでしょ?」
264 和真 「ん、そうだけど」
265 「西沢君、振り回されっぱなしだった?」
266 和真 「ああ、そんな感じだったと思う」
267 美希 「手伝ってくれてありがとねっ」
268 和真 「いや……いいよ」
269 美希 「あれーっ? ……唯ちゃんと祐次くんは?」
270 「あんた達を探しに行ったの」
271 和真 「ん……そうか」
272 「ま、そんなに気にすることないでしょ」
273 「ミイラ取りがミイラ……だね」
274 和真 「笹山、大丈夫かな……」
275 美希 「じゃあ、探しに行こうよ! 和真くん」
276 和真 「え、ここで待ってれば……」
277 美希 「探しに行ってあげれば、きっと唯ちゃんも喜ぶよっ」
278 和真 「んー?」
279 「連れ出したのは鈴木さんだよねぇ……」
280 美希 「細かいことは気にしちゃダメだよっ。いこーいこー」
281 和真 「ああ、分かったよ。行くって……日野はどうする?」
282 美希 「それじゃあ、二人ともよろしくねー」
283 和真 「え? お、おい……ちょっ、引っ張るなって」






284 「で……また留守番なのね」
285 「そうだねー」
286 「しかし、どーすんのよ。このお菓子の山は」
287 「二人でこれだけ食べるって思われてそうだね」
288 「なんか嫌だなあ……なんか周りから見られてない?」
289 「うん。ジロジロ見られてるねえ……」






290 美希 「ねえねえ! あれ、唯ちゃん達だよね?」
291 和真 「ん? ……ああ、そうだね」
292 美希 「いこいこっ」
293 和真 「ん、ああ……うん」
294 美希 「どしたの?」
295 和真 「いや、ちょっと」
296 美希 「んー? 何ー?」
297 和真 「って、あんまりくっつかないで……くれる?」
298 美希 「えー、なんでー?」
299 和真 「いや、なんでって、言われてもなぁ」
300 美希 「あははっ、ごめんね」
301 和真 「ふう」
302 美希 「あ……」
303 和真 「ん?」
304 美希 「唯ちゃん……」
305 和真 「笹山……」
306 「んと……」
307 美希 「えとねっ。唯ちゃんのこと探しに来たんだよ」
308 「う、うん……」
309 美希 「あ、祐次くんも探したんだよ。どこ行ってたのー?」
310 祐次 「お前ら探してて、色々回ったんだよ。はぁ……しかし、西沢」
311 和真 「遅くなってごめんな」
312 祐次 「いや、そうじゃなくてな」
313 和真 「ん?」
314 祐次 「んー、まあ仕方ねーか」
315 美希 「ま、とにかく戻ろうよ。お菓子たくさん買ってきたんだよーっ」
316 「うん、でも先に戻ってて。あ、後からちゃんと戻りますから」
317 美希 「えー?」
318 「ごめんね」
319 祐次 「大丈夫なの?」
320 「ありがとうございます。大丈夫ですよ」
321 和真 「……気をつけてな」
322 「はい……あ、あの行きたい所があるんです」
323 和真 「そっか」
324 「はい……そ、それじゃあまた」
325 和真 「あ、ああ」
326 祐次 「はあ……」
327 美希 「ねっ、唯ちゃん。美希も行っていいかな」
328 「え? うん、いいよ」
329 美希 「うんうん」
330 祐次 「おい、西沢……俺達は戻ろうぜ」
331 和真 「あ、ああ、じゃあな……笹山」






332 「おかえりぃ」
333 「……二人は?」
334 祐次 「ちょっと寄り道するってよ」
335 「なっかなか集まらないわね……」
336 祐次 「すぐ戻ると思うぜ。それまで遊ばねーか。せっかくこれもあることだし」
337 「これね……あたしはちょっと……遠慮するわ」
338 祐次 「んじゃ、西沢、やろうぜ?」
339 和真 「おまえ……本気出すなよ?」
340 祐次 「おいおい、本気だから楽しいんだろ?」
341 和真 「そりゃそうだけど……歯が立たないっていうかな」
342 祐次 「あー……よし、守! 二対一で西沢と組めよ」
343 「やだよ……って言いたいとこだけど西沢君次第だね」
344 和真 「いや、俺は……」
345 「せっかくだし、やりなよ」
346 和真 「ん、じゃやるか。日野、いいか?」
347 「いいよ。ま、あんまり役に立たないと思うけどね」






348 「ただいまぁ。ごめん、遅くなっちゃって」
349 「おかえり。いいのいいの。こっちも楽しんでたし」
350 美希 「たっだいまー! あ! 先にバドミントンやってるー!?」
351 「いいじゃない。そのために買ったんでしょ?」
352 美希 「あはは、それもそだねー。でもたのしそーだなー」
353 「日野くーん、腰が引けてるよー」
354 「慣れてないんだよーっ」
355 「ほらー、西沢君応援しなよ。頑張ってるんだから」
356 「え、えっと……」
357 美希 「かーずまくーん! 祐次くんをやっつけろー」
358 「唯も、ほらほら」
359 「が、頑張ってー」
360 祐次 「って、おまえらー! みんな敵かよっ」
361 「上手いんだから仕方ないでしょーっ。3連勝してるんだから」
362 祐次 「勝ってるのに全然うれしくねーなー……くそ! 届かねぇ」
363 和真 「よし! いいぞ、日野」
364 祐次 「守ー! きたねーぞー! ぎりぎりに落とすなんて」
365 「余所見してるのが悪いんだよ。それに、偶然だしね」
366 美希 「はいはーい! 美希もやるー!」
367 祐次 「いや、まだ終わってねーからな」
368 美希 「いいのいいの! 唯ちゃん、やろ!」
369 「え! わ、わたし? 無理だよ!」






370 「お疲れさまー。ご飯にしよ。ってもお菓子ばっかりだけど」
371 美希 「だいじょーぶ。ちゃんとやきそばもおにぎりもあるよーっ」
372 和真 「はぁ……疲れた……」
373 「結局、津久井君と鈴木さんが組んだね……」
374 和真 「無理。絶対勝てないぞあれは……」
375 「あはは、お疲れ様。頑張ってたわよ」
376 和真 「頑張りすぎてもう動きたくないよ……」
377 「当分歩きたくない……」
378 「大丈夫ですか? ……二人とも」
379 「んー、ご飯食べられる?」
380 和真 「ああ、大丈夫。やきそばある?」
381 「おにぎり一つだけもらうよ……」
382 祐次 「お前ら体弱いなあ」
383 和真 「そんな事言われてもな。そっちが遠くまでバンバン飛ばすから……」
384 祐次 「お前らも飛ばせば良かっただろ」
385 和真 「拾うので精一杯だって」
386 「っていうか……飛ばしたからって楽になるわけじゃないし」
387 美希 「でも、楽しかったねー」
388 「うん、見てて面白かったです。」
389 美希 「唯ちゃんもやれば良かったのに」
390 「えぇ!? む、無理だよぉ!」
391 「平然とやるあんたがおかしいの」
392 美希 「そなのかなー? じゃあさ、この後どうするの? 梢ちゃんも唯ちゃんもつまんないでしょ」
393 「わ、私は大丈夫だよ」
394 「ごめん、唯。あたしはちょっと暇かも」
395 「そっか……どうしよう」
396 「水族館があるみたいなの。いかない?」
397 「うん、いいよ。私も行きたい」
398 「みんなは……ていうか、西沢君と日野君は平気?」
399 和真 「ああ、俺は大丈夫だよ」
400 「僕もいいよ。ただし、ちょっと休憩させてね……」
401 「あはは、分かってるわよ」






402 祐次 「久しぶりだよなー。水族館なんて」
403 「中学の遠足で行かなかったの?」
404 「よく遠足さぼったからね。津久井くんは」
405 「へえ、わざわざ遠足さぼったの?」
406 「正確に言うと、授業もだけどね」
407 「よく卒業できたわねえ」
408 祐次 「いや、それは守が『義務教育なんて一度も登校しなくても卒業できるよ』って教えてくれたからな」
409 「悪い事を教えちゃったよねぇ……はあ」
410 祐次 「そんなことないぞ。感謝してるんだぜ」
411 「はあ……あ、唯、あれ、ペンギンじゃない? 行こ」
412 「あ、ほんとだね。可愛いなぁ……」
413 和真 「……」
414 美希 「あれ? どしたの?」
415 和真 「いや、別に……」
416 美希 「唯ちゃんの事?」
417 和真 「え?」
418 美希 「美希さー、なんで悩んでるのか分かんないけど、悩んでるのは分かるよ」
419 和真 「え、と……いや……まあ、そうだけど。分かる?」
420 美希 「うんうん。っていうかねー。ここにいるみんな分かってるよー?」
421 和真 「え、日野と麻田さんだけじゃ?」
422 美希 「聞いたわけじゃないけど、分かるよ。祐次くんもそうだと思うよ」
423 和真 「そっかぁ」
424 美希 「えへへー」
425 和真 「な、なに?」
426 美希 「良い事教えてあげよーかー?」
427 和真 「ん?」
428 美希 「あのね、ちょっと耳貸してくれる?」
429 和真 「あ、ああ」
430 美希 「唯ちゃんもね、分かってるよ(ぼそ)」
431 和真 「……」
432 美希 「さっき、唯ちゃんがね『西沢君と乗りたいな』って言ってたよ(ぼそ)」
433 和真 「……笹山が? 何に?(ぼそ)」
434 美希 「さっき言ってたのだよ。忘れちゃったの?(ぼそ)」
435 「あ、あの、西沢く――」
436 和真 「え?」
437 美希 「あ……」
438 「あ……ごめんなさい。なんでもないです」
439 「唯ー? 大丈夫?」
440 「え、あ、あはは、大丈夫だよ。でも、ちょっと具合悪いから先出てるね」
441 和真 「ちょっと、笹山?」
442 美希 「あ、あははー、ふられちゃったねー」
443 和真 「……」
444 「あたし、ちょっと様子見てくるね……西沢君は来る?」
445 和真 「いや、俺は」
446 「唯の事……嫌い?」
447 和真 「そうじゃないけど」
448 「そ、なら良かった。じゃあ、行ってくるね」






449 祐次 「で、外に出たらどこにも居なかったと……」
450 「ごめん……てっきりトイレかと思って油断してた……」
451 「スタッフにも訊いてみようか?」
452 「んー、そうねえ……」
453 美希 「なんだか、迷子みたいだねー」
454 「あんたねー……って実際そうかもしんないのよね……」
455 和真 「……笹山って方向音痴だっけ?」
456 「いや、聞いたことないわね」
457 美希 「うん、そうだねー」
458 和真 「……」
459 祐次 「お、どうした?」
460 和真 「ちょっと行ってくる」
461 「どこに?」
462 和真 「笹山のとこ。あっ、遅くなったら先帰ってて!」
463 美希 「いってらっしゃーい」
464 祐次 「いってこーい」
465 「……ま、いいんだけどさ」
466 祐次 「あ?」
467 「帰りの切符ってさ……」
468 「あ、西沢くんに渡したんだっけ……」

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