声劇用台本/流れる季節の中で

 


西沢 和真♂  無気力系の男の子。根暗じゃない。やる気がないだけとも積極性が無いだけとも 台詞数:107





笹山 唯♀ おとなしい子。感情がすぐ表に出る。慌てやすい。台詞数:107












最終話『特別な想いをあなたに』



1 和真 「笹山!」
2 「……あ、西沢君……」
3 和真 「はぁ……やっぱりここだったか」
4 「え?」
5 和真 「みんな心配してるよ」
6 「……ごめんなさい」
7 和真 「大丈夫?」
8 「はい、すみません」
9 和真 「にしても、なんで突然いなくなったの?」
10 「それは……あの……」
11 和真 「……」
12 「ごめん、なさい……」
13 和真 「えっ……さ、笹山?」
14 「ごめんなさい……勝手な……事しちゃって」
15 和真 「はあ……まあ、気にするなって」
16 「でも……」
17 和真 「誰も気にしてないよ。だからさ」
18 「……」
19 和真 「なあ……笹山?」
20 「はい?」
21 和真 「これ、並ぶか?」
22 「え、これ……ですか?」
23 和真 「ああ、これ。乗りたかったんだろ?」
24 「え? なんで……?」
25 和真 「まあ、な。で、嫌?」
26 「え? あ、あの、えっと……嫌じゃないです。あっ、でもみんなを待たせちゃいますっ」
27 和真 「先に帰って良いって言ってあるから」
28 「……じゃあ、はい。お願いしますっ」






29 和真 「……」
30 「……」
31 和真 「……ふう」
32 「怒ってるんですか?」
33 和真 「そうじゃなくって……緊張してるだけ」
34 「私もです。西沢君……恥かしくないですか?」
35 和真 「ちょっと……笹山は?」
36 「私は恥かしいですよ。だって周り、か……カップルばっかりですよ」
37 和真 「そりゃ、まあそうだよな」
38 「そろそろ、順番ですね」
39 和真 「……にしても久しぶりだな。観覧車なんて」
40 「私もですよ」
41 和真 「あ、二人で……笹山、先に乗って」
42 「は、はい」
43 和真 「ふう……」
44 「……」
45 和真 「……」
46 「……」
47 和真 「……あのさ、ごめんな」
48 「はい?」
49 和真 「たぶん、俺、笹山に冷たかったと思う」
50 「でも……それは私が悪いですから」
51 和真 「ん、まあそうかもしれないけど、ごめん。笹山、俺のことさけてただろ?」
52 「えと、それは……そうかもしれないですけど、私は、西沢君に怒ってるんじゃないんです」
53 和真 「え? じゃあどうして――」
54 「どうしていいか分からなかったんです。昨日からずっと」
55 和真 「昨日っていうと……」
56 「西沢君が、怒って帰っちゃった時から、です」
57 和真 「ん、ごめんな」
58 「いいんです。だって、私が悪いんですから」
59 和真 「んー、でもな」
60 「えっと、私がわがまま言ったから怒っちゃったんですよね?」
61 和真 「……ああ。ってわがままっていうか……なんか嫌そうに聞こえたから」
62 「そんなことないんですよ……ただ、恥かしかっただけなんです。ごめんなさい」
63 和真 「そっか。俺の勘違いだったんだ」
64 「はい。嫌な思いさせてごめんなさい」
65 和真 「謝んなくていいって。笹山は謝りすぎだろ」
66 「ああ、はい。ごめ……あはは、癖みたいです」
67 和真 「あんまり良くない癖だと思うよ」
68 「あ、でも、ほんとに悪いなって思ってるから謝ってるんですよ」
69 和真 「そっか。ってそれも大変だよな」
70 「あはは、そうですね。」
71 和真 「……落ち着いたみたいだな」
72 「はい?」
73 和真 「いきなりいなくなるからさ、心配したんだよ」
74 「……それは、自分でもよく分からないです」
75 和真 「大丈夫か?」
76 「あの……西沢君……私、迷惑ですか?」
77 和真 「え? 全然そんなことないけど。いきなりどうしたんだ?」
78 「最近、よく西沢君の事を考えるんです。お礼しなくちゃとか迷惑じゃないかなとか」
79 和真 「そんな、迷惑とか考えることないだろ」
80 「今日は、西沢君……美希ちゃんと一緒に居て、探しに行ったら手も繋いでて、仲良いんだなって思って……なんでか分からないけど、私って迷惑なのかなって思ったんですよ」
81 和真 「違うって。それに、あれは鈴木さんが勝手に――」
82 「じゃあ、私の勘違いですね」
83 和真 「ああ、っていつもあんな感じだろ」
84 「んー、よく分かんないですよ」
85 和真 「そう思うけどな」
86 「あ、結構高くなってきましたね。綺麗……」
87 和真 「もう夜景か……」
88 「……私、昨日梢ちゃん達に知られちゃったの嫌がりましたよね? あれはきっと、私が西沢君に教えたかったんです。みんなじゃなくて、私がお礼をしたかったから……だと思うんです」
89 和真 「それは、みんながいてもできる……と思うけど。それに俺は十分してもらったと思ってる」
90 「私はまだまだできてないって思ってたんです。でも、なんで西沢くんは遠慮するのかなって考えたら」
91 和真 「遠慮なんて――」
92 「西沢くんは私が何しても関係ない……のかなって……」
93 和真 「何言ってるんだよ? なんで笹山はそんな無理するんだよ」
94 「無理なんてしてないですよ。いつも西沢くんに助けられてるって感じるから……」
95 和真 「助けるって俺は別に何もしてないよ」
96 「そんなことないです! 遅刻したとき一緒に行ってくれました。」
97 和真 「そんなのお礼するようなことじゃないって」
98 「でも、でも、私……西沢くんがいると楽しいんです」
99 和真 「ん……俺も笹山といると楽しいよ」
100 「嬉しいです……えへへ」
101 和真 「っていうか……俺の方が笹山に助けられてるよ。仲直りできたのに笹山が言ってきてくれたからだし」
102 「あれは……梢ちゃんたちのおかげですから」
103 和真 「……」
104 「……あの?」
105 和真 「いや、ちょっと呆れたんだよ」
106 「え?」
107 和真 「助けたとかどうとか……別にどうでもいいよなって」
108 「どうでもいいんですか?」
109 和真 「友達にそんな気を使うことってないのに……変じゃない?」
110 「西沢くんは……」
111 和真 「ん?」
112 「西沢くんは……きっと……特別なんです」
113 和真 「え?」
114 「どうでもいいって言いましたよね。さっき」
115 和真 「ああ、って別に笹山がどうでもいいってわけじゃなくて」
116 「分かってますよ。」
117 和真 「じゃあ?」
118 「私は西沢くんが喜んでくれると嬉しくて、何かしたいんです。きっと」
119 和真 「きっと?」
120 「はい。きっと。だって、ついさっき気づいたんですよ」
121 和真 「そっか」
122 「だから、昨日我侭言っちゃったのとか今日、逃げちゃったりしたのは……それのせいなんですよ」
123 和真 「んー、理由になってないような」
124 「あ、えっと……私が何かして喜んでくれるって言えば分かってもらえますか?」
125 和真 「うん、分かる、ような……なあ、笹山さぁ」
126 「……はい、なんですか?」
127 和真 「い、いや、なんでもない」
128 「……だから……ただ、西沢君と二人で勉強したかっただけ……かもしれません」
129 和真 「なんか、恥かしいな」
130 「言ってる方はもっと恥かしいんですよっ」
131 和真 「あはは、そっか。ごめんな。いや、ありがとうかな」
132 「はい」
133 和真 「俺も……今日笹山にさけられてるなって感じたとき、なんとなく嫌だったよ。」
134 「ご、ごめんなさい」
135 和真 「うん、いいよ。それより、津久井と楽しそうに話してるのが嫌だった」
136 「ごめんなさい」
137 和真 「だからいいって。別にあいつらが嫌なわけでもないのに変だよな」
138 「そんなことないですよ。だって、私も同じような……気持ちに、なりましたから……」
139 和真 「そっか……って笹山が避けたからだろー?」
140 「そ、そうですよね。本当にごめんなさい……」
141 和真 「な、なあ……」
142 「は、はい」
143 和真 「笹山……」
144 「な、なんですか?」
145 和真 「あ、あのな」
146 「はい」
147 和真 「さっき言いかけたことだけど」
148 「はい、なんだったんですか?」
149 和真 「恥かしいから目閉じてくれる?」
150 「え……あの……」
151 和真 「あぁ、ごめん。無理にとは言わないからさ、それで――」
152 「あ、あの! 閉じます。ちょ、ちょっと、待って下さいね」
153 和真 「あ、ああ」
154 「……はいっ。閉じました!」
155 和真 「……さっき、特別って言ってくれたよな」
156 「はい」
157 和真 「嬉しかったんだ」
158 「はい」
159 和真 「俺にとっても笹山は……特別なんだと思う」
160 「え……それは?」
161 和真 「俺……笹山のことが……好きなんだと思う」
162 「はい、あの、あの!……私も……です」
163 和真 「そっか……あはは……恥かしいな」
164 「あ、あの……」
165 和真 「ん?」
166 「キ、キスされるのかと思いました……」
167 和真 「え、そんなつもりは全然無かったんだけど……わ、悪い」
168 「全然……無いんですか?」
169 和真 「……全然……じゃないけど」
170 「は、恥かしいから西沢くんも目閉じて下さい」
171 和真 「あ、うん」
172 「初めてだから下手ですけど……」
173 和真 「俺も……」
174 「ん……んぅ」
175 和真 「ん……」
176 「はぅ……」
177 和真 「はぁ……」
178 「うぅ……」
179 和真 「まだ、目開けないの?」
180 「恥かしくて……」
181 和真 「なあ、もう一回していい?」
182 「ええ! 恥かしいです。」
183 和真 「でも、目閉じられてるとつい……」
184 「そんなこと言われても困ります」
185 和真 「嫌?」
186 「嫌じゃないです」
187 和真 「じゃあ……」
188 「あ……ん……はふぅ……もう、西沢くんいじわるです」
189 和真 「名前……」
190 「え?」
191 和真 「唯って呼んでいい?」
192 「は、はい」
193 和真 「唯」
194 「か、和真くん?」
195 和真 「唯、もうさけないでくれる?」
196 「当たり前ですよ、だって……」
197 和真 「だって?」
198 「それは、その……和真くんは……私の……」
199 和真 「……私……の?」
200 「好きな人ですから」






201 和真 「っと……手、捕まって」
202 「は、はい。……あっという間でしたね」
203 和真 「うん。そうだね」
204 「あの、一緒に帰ってくれますか?」
205 和真 「あははは、当たり前だよ」
206 「そ、そうですよね。えへへ」
207 和真 「……あ……だめだ」
208 「え?」
209 和真 「帰りの切符預かったままだ……」
210 「それって……」
211 和真 「待ってるんだろうなぁ。一緒に戻るのはかなり……恥かしいな」
212 「でも、一緒がいいです」
213 和真 「そっか。そうだな。じゃ、一緒に行こうか……唯?」
214 「はい、それじゃあ、行きましょう……和真くん」

トップへ | 最終話『特別な想いをあなたに』