声劇用台本/流れる季節の中で

 


西沢 和真♂  無気力系の男の子。根暗じゃない。やる気がないだけとも積極性が無いだけとも セリフ34






笹山 唯♀ おとなしい子。感情がすぐ表に出る。慌てやすい。 セリフ50


笹山 玲菜♀ 唯の姉。活発で強気な性格。さっぱりしている。 セリフ21


笹山 文江♀ 唯の母。マイペースで落ち着いた性格。あまり人の話を聞かない。 セリフ14









第十一話 『嫌ですか?』












1 「ただいまー、あれ? なんで玄関で待ってるの?」
2 玲菜 「いやいや、あんたがちゃんと買ってきたのか楽しみだっただけよ」
3 「だ、大丈夫だよー。もぉ」
4 玲菜 「あはははっ、カツオとサンマの区別は付くようになった?」
5 「だから、もうそれはやめてよー……昔のことだもん」
6 玲菜 「はいはい。唯は一週間経てば昔だもんね」
7 「今日のお姉ちゃん意地悪……」
8 玲菜 「ごめんごめん、ちょっと面白い事があってね」
9 「面白い事?」
10 文江 「あら、唯おかえりなさい」
11 「うん、ただいまぁ。ちゃんとお醤油買って来たよ」
12 文江 「これでちゃんとお刺身が食べられるわねぇ」
13 玲菜 「お母さん、いい加減に醤油がないからってソースで代用する癖は治してね」
14 文江 「そうねぇ。つい買い忘れちゃってねぇ」
15 玲菜 「いや、そうじゃなくてね……」
16 「あははは……」
17 玲菜 「はあ……んで、唯。その、さっきの話なんだけど」
18 「うん」
19 玲菜 「西沢くんから電話があったよ」
20 「え? 西沢くんから? 何か用事あったのかな」
21 玲菜 「後でかけさせるって言ってあるから早く電話してあげな」
22 文江 「西沢くんってさっきの男の子? どうして唯に用事があったのかしら?」
23 玲菜 「どうしてもなにも、彼は唯と同じクラスなの」
24 文江 「そうなのぉ……唯の方だったのねぇ。てっきり勘違いしちゃったわ」
25 玲菜 「しちゃったんじゃなくて、たぶん今もしてるよ」
26 文江 「あら? そうなの? 唯、西沢くんって唯の彼氏さん?」
27 「え!? ななな何言ってるのお母さん! 違うよっ」
28 文江 「玲菜でも唯でもないなら……まさかお父さん?」
29 玲菜 「うちのお父さんはそういう趣味ないから……」
30 文江 「嫌ねえ、いまのは冗談よー」
31 玲菜 「本当に冗談だったのかしら……」
32 文江 「それで、何の用事だったのかしら」
33 玲菜 「もー、いまからそれを話すとこなの」
34 文江 「あら、ごめんなさい。そうだったのぉ」
35 玲菜 「んーとねぇ……デートのお誘いってとこかしら」
36 「……え?」
37 玲菜 「驚いた?」
38 文江 「うんうん、驚いたわよー」
39 玲菜 「いや、お母さんじゃなくて」
40 文江 「だって、唯ったら恥かしがり屋さんだし、一生結婚出来ないんじゃないかと心配で心配で」
41 「お、お母さんそれは酷いよ!」
42 玲菜 「まだ15歳の娘にそんなこと言うんじゃないのー」
43 「……でも、お姉ちゃん……本当に……西沢くんが?」
44 玲菜 「あははは! ちょっと期待しちゃった?」
45 「……あっ! からかったの!?」
46 玲菜 「さあてね……どうかなぁ?」
47 「もぅ……」
48 玲菜 「ほらほら、早く電話してあげな」
49 「ん……」
50 文江 「唯、頑張って……逃がしちゃダメよ」
51 「お母さんっ」
52 文江 「唯が怒るなんて珍しいわねぇ……うふふ」
53 「も、もう、電話してくるからっ……じゃあね」








54 和真 「はぁー……参ったなよなぁ。まさかお姉さんが出るとは……」
55 和真 「しかも、変なこと言われるし……家に呼ぶなんて無理だってのに」








56 和真 「あ……かかってきた……っはい、西沢です」
57 「あ、あの、私、笹山と言いますけど、西沢くんいますか?」
58 和真 「ああ、笹山? 俺だよ」
59 「は、はい。あの……こんにちは」
60 和真 「もう夕方だけどね」
61 「じゃ、じゃぁ……こんばんは、でいいですか?」
62 和真 「いや、ごめん、どっちでもいいと思うよ」
63 「そうですか?」
64 和真 「あとさ……人のこと言えないけど苗字だけじゃ分かんないよ」
65 「あ、そういえばそうですね……あ、あの電話くれたってお姉ちゃんが言ってましたけど」
66 和真 「うん、ちょっとね。お姉さんからは何も聞いてない?」
67 「お姉ちゃんはデー……あ! ごめんなさいっ、違いました!」
68 和真 「ん?」
69 「な、なんでもないです!」
70 和真 「そう。大丈夫?」
71 「は、はい……それで、電話くれたんですよね?」
72 和真 「ああ、うん……」
73 「??」
74 和真 「ええと……昨日、勉強教えてくれてありがとうな」
75 「でも、私なにもしてないですよ」
76 和真 「そんなことないって、かなり助かったよ」
77 「そうですか、そう言って貰えるとうれしいです」
78 和真 「でさ……だから……もうお礼は十分して貰ったと思うんだ」
79 「……」
80 和真 「笹山? 聞こえてる?」
81 「……迷惑……でしたか?」
82 和真 「え! いや、違うって」
83 「帰るとき、『次は違うとこで』って言ったら、西沢くん……うなずいてくれたから」
84 和真 「あ、ああ」
85 「図書館はもう使えないから、次はどこがいいかなって一生懸命考えたんですよ」
86 和真 「そっか……悪いな」
87 「でも、迷惑なら……もうやめますね」
88 和真 「違う違う! 迷惑なんかじゃないって」
89 「でも……」
90 和真 「迷惑だから言ってるんじゃなくて、笹山に悪いって思ってるんだよ」
91 「そんなことないですよ……ノートのコピーすごく助かりました」
92 和真 「まあ、でも、ノートは俺のじゃないけど……うん、そっか」
93 「だから、お礼したいんです。それに、二人で勉強した方が楽しいですよ」
94 和真 「笹山がそういうなら……いいけど、っていうか助かるよ」
95 「あー……良かった。で、場所なんですけど」
96 和真 「ああ、それなんだけど――」
97 「良かったら……わ、わたしの部屋に来ませんか? あ! でも嫌ならいいですから!」
98 和真 「えっ! いや、じゃないけど、それはまずいって!」
99 「や、やっぱり嫌ですか?」
100 和真 「だから違うって」
101 「じゃあ、なんで――?」
102 和真 「いや、まずくない?」
103 「まずくないですよ、たぶん」
104 和真 「そ、そうなの? でも、さすがにそれは遠慮するよ」
105 「そうですかぁ……」
106 和真 「あのさ、場所は俺が考えるよ。全部世話になるのも悪いからさ」
107 「え、でも、もう明後日から連休ですよ」
108 和真 「あ……そっか」
109 「あ、でも私は平気ですよ」
110 和真 「本当? だったら俺に任せてくれない。ちゃんと決めておくから」
111 「はい。お願いします」
112 和真 「うん」
113 「ええと……期待してますね」
114 和真 「あはは……あんまり期待されてもなぁ」
115 「大丈夫ですよ。あの、そろそろご飯作らないといけないので」
116 和真 「ああ、そっか。忙しいのに悪いな」
117 「こちらこそ、電話出られなくてごめんなさい」
118 和真 「いいよ。じゃあ、また明日な」
119 「はい、また明日」

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