声劇用台本/流れる季節の中で

 


西沢 和真♂  無気力系の男の子。根暗じゃない。
           やる気がないだけとも積極性が無いだけとも





笹山 玲菜♀ 唯の姉。活発で強気な性格。さっぱりしている。


笹山 文江♀ 唯の母。マイペースで落ち着いた性格。あまり人の話を聞かない。









第十話 『何を望むのか探し出せないけれど』






1 和真 「電話かけるとは言ったけど……連絡網とか全然離れてるのな。 ……まあ、笹山本人が出てくれることを期待するしかないか……」



2 文江 「はい、笹山で御座います」
3 和真 「あ、もしもし……ええと、笹山さんと同じ一年二組の西沢と言います」
4 文江 「あぁ、はい。どうも、いつも娘がお世話になっています」
5 和真 「あ、いえ、こちらこそ、色々と」
6 文江 「ご迷惑とかお掛けしてませんか? うちの子は強引なとこがありますから」
7 和真 「いえ、迷惑なんてありません。私の方が面倒見てもらってるくらいです」
8 文江 「そーなのー……優しい男の子が相手で安心しました。いつも心配で心配で」
9 和真 「あ、えと、いえいえ……」
10 文江 「本当に嬉しいわ。あの子ったら最近学校の話してくれなくて……」
11 和真 「そ、そうですかぁ」
12 文江 「えー、そーなのよー……あら、ちょっと待ってくださいね」
13 和真 「あ、はい」
14 文江 「あ、ごめんなさい。うちの子に用事でしたね。今、ちょうど通りかかったから代わりますね」
15 和真 「は、はい、お願いします」



16 玲菜 「もしもーし、代わりました。玲菜です。んで、どなた?」
17 和真 「は? あの、西沢ですけど……お姉さんですか?」
18 玲菜 「ああ、西沢くん? ……君、いつからあたしの彼氏になったの?」
19 和真 「えっ!? 彼氏?」
20 玲菜 「お母さんに、彼氏からよってにこにこしながら渡されたの。なんて言って電話したのよ」
21 和真 「同じ学校の一年二組の西沢ですって、言ったんですけど」
22 玲菜 「ああ、ちゃんと学校名まで言わないとダメよ。あたしも一年二組なんだから」
23 和真 「一年? 二年か三年じゃないんですか?」
24 玲菜 「ううん、大学の、ね。大学の組なんて形式だけで全然意味ないんだけど」
25 和真 「そうでしたか、すみません……」
26 玲菜 「まあ、いいよ。でも……あたしってそんな子供っぽい? 三年はともかく二年て……」
27 和真 「あ……なんで高校生だと思ったって分かったんですか?」
28 玲菜 「そんなの、二年か三年じゃないんですかぁ? なぁんて聞かれればね」
29 和真 「そうですか。別に子供っぽいとかじゃなくて、ただの勘違いですよ」
30 玲菜 「ま、いいよ。若く見られるのは嬉しいしね」
31 和真 「はあ」
32 玲菜 「それで、唯に何の用事? わざわざ電話してくるなんて」
33 和真 「ちょっと、言いにくいんですが……」
34 玲菜 「大丈夫、ちゃんと聞いてあげるから……んーと、ケンカでもした?」
35 和真 「いえ、そういうわけではないです」
36 玲菜 「そっか。んじゃあ説明してちょうだい」
37 和真 「俺もよく分からないんですが、笹山、さんが勉強教えてくれることになって」
38 玲菜 「ふんふん」
39 和真 「図書館じゃ落ち着かないからって、自分の家に誘うかもしれないって話らしいです」
40 玲菜 「自分の家ってのは?」
41 和真 「笹山さんの家です」
42 玲菜 「……あの子が?」
43 和真 「はい」
44 玲菜 「へえ……ずいぶんと頑張ったわねえ。それで? なんで電話してきたの?」
45 和真 「ええと、断らないといけないと思ったんですよ」
46 玲菜 「なんで? なんかまずいの?」
47 和真 「いや、迷惑じゃないですか」
48 玲菜 「あたしは平気よ。唯って滅多に友達連れてこないから心配だしさ」
49 和真 「あぁ、でもご両親とか」
50 玲菜 「お母さんはあの調子だからねぇ……お父さんも男の子と話すの好きよ?」
51 和真 「はあ、そうですか」
52 玲菜 「まっ、そう言っても来づらいよねえ? うちでまずいなら西沢くんの家にしたら?」
53 和真 「えっ?」
54 玲菜 「自分のテリトリーの方が楽でしょ? あ、断るってのは無しだからね」
55 和真 「ダメですか?」
56 玲菜 「ダメよ。人の好意はちゃんと受けなきゃ。あなたが嫌だって言うなら仕方ないけどね」
57 和真 「……嫌じゃないですよ」
58 玲菜 「そう? 安心したよ」
59 和真 「あの……ところで……」
60 玲菜 「ああ、唯ね? ごめんね、今買い物行ってるから……戻ったら電話させるよ」
61 和真 「え、そうですか……じゃあ、お願いします」
62 玲菜 「はーい、あと30分もすれば戻るから待っててねー」
63 和真 「はい、よろしくお願いします。それでは失礼しました」

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