西沢 和真 無気力系の男の子。根暗なわけじゃありません。 15歳 | |||
笹山 唯 おとなしい子。感情がすぐ表に出る。慌てやすい。 15歳 | |||
笹山 玲菜 唯の姉。活発で強気な性格。さっぱりしている。 19歳 | |||
1 | 和真「じゃあ、またなー」 | ||
2 | 唯「ばいばい、みんな」 | ||
3 | 和真「ふう……帰ろうか? 方向一緒だよな」 | ||
4 | 唯「はい。あっちの 丘の方です」 | ||
5 | 和真「うん、俺もそっち。」 | ||
6 | 唯「じゃあ、一緒に帰りませんか?」 | ||
7 | 和真「え? なんでわざわざそんなこと言うの?」 | ||
8 | 唯「あ……だめですか? 何か用事とか?」 | ||
9 | 和真「そうなじゃくて、一緒に帰るのは当たり前じゃないの?」 | ||
10 | 唯「あ、そっか。良かったです。えへへ」 | ||
11 | 和真「それに――」 | ||
12 | 唯「はい?」 | ||
13 | 和真「友達、だろ?」 | ||
14 | 唯「はい……友達ですっ」 | ||
15 | 和真「あはは……」 | ||
16 | 唯「ん? どうしたんですか?」 | ||
17 | 和真「いや、なんでもない。ただ……恥かしかっただけだよ」 | ||
18 | 唯「あはは…………そう言われると私まで恥かしくなっちゃいます」 | ||
19 | 和真「しかし、やられたなぁ」 | ||
20 | 唯「え?」 | ||
21 | 和真「ほら、二人だけで店に行くことになったでしょ」 | ||
22 | 唯「ああ――あれは困りました。って、西沢君と二人になったのが嫌なんじゃなくって!」 | ||
23 | 和真「あははは、分かってるって。それくらい」 | ||
24 | 唯「……西沢君は嫌でしたか?」 | ||
25 | 和真「え? 違うって。ただ、突然だったからね」 | ||
26 | 唯「うん、そうですね。やっぱり緊張しました」 | ||
27 | 和真「かなり怪しかったから、警戒しとけば良かったねぇ」 | ||
28 | 唯「でも、とっても楽しかったです」 | ||
29 | 和真「んー……まあ、そうだな。面白かったし、いいかっ」 | ||
30 | 唯「うんうん、そうですよ」 | ||
31 | 和真「はあ……やっと着いたな」 | ||
32 | 唯「はい、毎日歩いててもやっぱり堪えますね」 | ||
33 | 和真「だいたい10分くらいか? この上り坂」 | ||
34 | 唯「それくらいですね。んー…… 朝は下りだから5分くらいかな」 | ||
35 | 和真「いや、それは早すぎ。毎日走ってるからじゃない?」 | ||
36 | 唯「あ、そっか――そうでした。あはは……」 | ||
37 | 和真「ふぅ……少し座りたいんだけど……良い?」 | ||
38 | 唯「いいですよ。ちょっと休みましょうか」 | ||
39 | 和真「確かさ」 | ||
40 | 唯「ん? どうしたんですか?」 | ||
41 | 和真「……ここで会ったんだよな」 | ||
42 | 唯「そうでしたね。入学式なのに一人だから、てっきり先輩かと思いました。」 | ||
43 | 和真「俺も一人だったからね。まあ、お互い様だね」 | ||
44 | 唯「西沢くんのご両親は……なんで?」 | ||
45 | 和真「ん? ああ、別に大した事情じゃないよ。弟の中学の入学式と被っただけだよ」 | ||
46 | 唯「そうですか――」 | ||
47 | 和真「ん? なんで深刻な顔してるの?」 | ||
48 | 唯「いつも弟さんばっかり優しくしてもらってるとか……」 | ||
49 | 和真「え? ああ、あはは。違う違う。っまあ、確かに弟は可愛がられてるけどな」 | ||
50 | 唯「なら、良かったです。安心しました」 | ||
51 | 和真「そんなに心配しなくていいよ。それより笹山の方が気になるよ」 | ||
52 |
唯「わたしも大したことないですよ? 来るのは無理だったけど お祝 いはいっぱいしてくれましたし」 |
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53 | 和真「へえ、仲良いんだな」 | ||
54 | 唯「はい、とっても仲良しですよ……あれ? 分かります?」 | ||
55 | 和真「声とか顔でね。まぁ……楽しそうっていうのかな」 | ||
56 | 唯「それなら、西沢くんだってそうですよ。顔を見て安心しました。 | ||
落ち込んでるのかなって考えたんですよ」 | |||
57 | 和真「あはは、そっか」 | ||
58 | 唯「私の家、料理屋さんなんです」 | ||
59 | 和真「料理屋?」 | ||
60 | 唯「ええと、ラーメンとかチャーハンとか」 | ||
61 | 和真「ああ、中華料理屋ね」 | ||
62 | 唯「だから、お祝いは嬉しかったけど、食べ物が油っぽいものが多くて……」 | ||
63 | 和真「それは胸焼けするね」 | ||
64 | 唯「それもなんですけど……次の日体重計に乗れませんでした」 | ||
65 | 和真「はは……あっはっは。そんなこと言わなくていいよ」 | ||
66 | 唯「あ、あ、はい。言ってみてから自分でもそう思いましたっ」 | ||
67 | 和真「顔真っ赤だよ」 | ||
68 | 唯「あー、もう、言わないで下さい」 | ||
69 | 和真「言うなと言われてもねぇ……でも、なんでそんな話を?」 | ||
70 | 唯「あれ? なんででしょう?」 | ||
71 | 和真「分かんないんだ?」 | ||
72 | 唯「きっと、う、うれしかった……からですよ」 | ||
73 | 和真「ん……そ、そっか。ありがとう、でいいのか?」 | ||
74 | 唯「た、たぶん」 | ||
75 | 玲菜「おーい! 唯ー! もう陽が暮れるよー!」 | ||
76 | 唯「あ、お姉ちゃん」 | ||
77 | 玲菜「遅いから心配してきちゃったよ。怪我してない?」 | ||
78 | 唯「ん、うん。 怪我なんてしてないよ」 | ||
79 | 玲菜「だって、あんたとろいから。この前もひざ擦りむいて帰ってきたじゃない」 | ||
80 | 唯「そ、それは……そのぉ。下り坂だから」 | ||
81 | 玲菜「あんた、毎回同じ言い訳してるけどさぁ」 | ||
82 | 唯「わ、分かってるよぉ。みんな下り坂くらいじゃこけないんでしょぉ」 | ||
83 | 玲菜「分かってるなら言い訳しないの。まったく……ん?」 | ||
84 | 和真「ん? あ、っと、こんにちは」 | ||
85 | 玲菜「うんうん、こんにちは。唯の友達?」 | ||
86 | 和真「はい……一応」 | ||
87 | 玲菜「一応ってのはなによ一応ってのはっ。違うならはっきり言えばいいのに」 | ||
88 | 唯「本当に友達だよ。さっきなってくれたの」 | ||
89 | 玲菜「さっき……? 唯、ナンパされたの?」 | ||
90 | 唯「えぇ!? 何言ってるのお姉ちゃん!」 | ||
91 | 玲菜「だって、だってよ。年頃の高校生のカップルがいるなと思ったら唯だったんだもの。 | ||
びっくりしたわよ。まさか唯に彼氏が出来るわけもないし、ナンパって思うのが当然でしょ?」 | |||
92 | 唯「そこまで言うことないでしょぉ……」 | ||
93 | 玲菜「ああ、ごめんごめん。つい本音が。 んで、どうなの?」 | ||
94 | 唯「本当に友達だって言ってるのに……」 | ||
95 | 玲菜「そうなの?」 | ||
96 | 和真「友達ですよ」 | ||
97 | 玲菜「そっか、疑ってごめんなさい。許してください」 | ||
98 | 和真「いや、気にしないで下さい」 | ||
99 | 玲菜「ありがとうね。あ、名前教えてもらえないしから?」 | ||
100 | 唯「えと、西沢くんです」 | ||
101 | 玲菜「西沢くん……ね。あたしは唯の姉の玲菜です。よろしくね、西沢くん」 | ||
102 | 和真「ど、どうも、よろしく」 | ||
103 | 唯「ねえ、お姉ちゃん西沢くん困ってるよっ」 | ||
104 | 玲菜「そみたいね。でもー、唯、あんたなんで苗字で呼んでるのよ?」 | ||
105 | 唯「え?」 | ||
106 | 玲菜「友達なんだから名前で呼ぶもんでしょ? 失礼じゃないの」 | ||
107 | 和真「いや、そんな事ないですよ?」 | ||
108 | 玲菜「そういや西沢くんも唯の事名前で呼ばないの?」 | ||
109 | 和真「え? まあ、そりゃ」 | ||
110 | 玲菜「はぁ……まあ、仕方ないか。なんかシャイっぽいもんね」 | ||
111 | 和真「な、なあ、この人口悪いな(ぼそ)」 | ||
112 | 唯「ごめんなさい(ぼそ)」 | ||
113 | 玲菜「あー、忘れてた。唯! 早く帰るよ。夕ご飯の支度しないと」 | ||
114 | 唯「うん、私も手伝うよ」 | ||
115 | 玲菜「あ、食べてく?」 | ||
116 | 和真「いえ、遠慮します。悪いですし」 | ||
117 | 玲菜「むう、そんな優等生ぶることないのに」 | ||
118 | 和真「ええと……」 | ||
119 | 玲菜「いやいや、無理に誘うつもりはないよ。気をつけて帰りなね」 | ||
120 | 和真「はい、ありがとうございます」 | ||
121 | 唯「気をつけてね」 | ||
122 | 和真「笹山こそな。こけるなよ」 | ||
123 | 唯「こ、こけませんよ」 | ||
124 | 和真「だと良いね。んじゃ、また明日」 | ||
125 | 唯「またね、西沢くん」 | ||
126 | 玲菜「悪かったね」 | ||
127 | 唯「え?」 | ||
128 | 玲菜「私が来なければもっと話せたでしょ」 | ||
129 | 唯「ううん、 大丈夫。お姉ちゃんが来てくれて嬉しかったよ」 | ||
130 | 玲菜「いやいや、照れるね」 | ||
131 | 唯「それに、明日だってたくさん話せるはずだから――」 | ||
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