美しいキモノ 2014年冬号掲載 「名古屋帯」
楽しい帯合わせ
本日の商品は型絵染めの名古屋帯です。製作は、関 美穂子氏です。
紬生地に何とも可愛らしい文様の型絵が施されています。卵から孵った雛に、遠山に、木々に等々。これはなんだろう?と ひとつひとつを じ~っと 眺めていたくなります。
それぞれが可愛い配色で、着物合わせ・小物合わせが楽しくなりますね。
愉しくなるお出かけ
鈴木保奈美さんが着用しているのは、信州上田紬です。
写真のような白地は文句なしに合いますし、他にも黒地、辛子系、茶系など結構応用範囲は広いでしょうね。
師走に入り、クリスマスや忘年会の他、明けて初詣や新年会などイベントや行事が盛り沢山のこの季節、こんな可愛い帯など締めて遊びに出かけられるのはいかがでしょうか。
思わず羽織やコートを脱いで見せたくなる、そんな可愛い楽しい名古屋帯です。
美しいキモノ 2014年秋号掲載 「附下着尺」
品格
本日の作品は附下着尺です。製作は、に志山です。
秋海棠(しゅうかいどう)の花が (恐らく「紅頭秋海棠」かなと) 見事に描かれています。
葉脈は金彩で丁寧に描かれていますね。
上質な生地は、極上の発色と品格を表現してくれます。
帯あわせ
地色は真っ黒ではなく、黒茶といったところでしょうか。
極上の地色に何ともやさしい花が描かれ、凛とした空気感が表現されています。
帯合わせは、茶・ベージュ系、白・生成系などがしっくりくると思います。小物合わせも楽しいですね。
夏も終わり、単衣に、そして秋冬物に衣替えになります。淡い色目からやや濃い色目も楽しくなってきますね。
お呼ばれ等にお召しになるには最適の素敵な附下着尺です。
美しいキモノ 2014年夏号掲載 「夏の小紋と名古屋帯」
涼やかさ
本日の作品は絽の小紋と、紗の名古屋帯です。
図柄は琵琶湖の伝統漁法「エリ漁」の杭が描かれています。やさしい・涼やかな地色と配色ですね。良質な生地が上品な発色を見事に表してくれています。
帯あわせ
写真は紗の織名古屋帯を合わせています。図柄は羊歯(シダ)に蛍です。
地色は真っ黒ではなく、墨黒といったところでしょうか。
実際、お仕立てとなりますと、帯芯が入りますので、地色はもっと薄い墨色と思ってもらったほうが良いでしょう。
ですから、小紋との取り合わせが若干濃いこの写真よりもしっくりくると思います。
涼を楽しむ夏衣。着て来たことを褒められる素敵な小紋と帯です。
美しいキモノ 2013年夏号掲載 「喜如嘉の芭蕉布」 (きじょかのばしょうふ)
糸芭蕉
本日の作品は喜如嘉の芭蕉布の八寸名古屋帯です。
制作は、平良 敏子(たいらとしこ)氏です。
昭和49年、重要無形文化財に認定された「喜如嘉の芭蕉布」は、沖縄本島北部の大宜味村喜如嘉の「喜如嘉の芭蕉布保存会」に於いて、人間国宝 平良敏子さん(平成12年認定)を中心に製作されいる織物です。
芭蕉布は文字通り、芭蕉の木から取った繊維で作る織物です。
芭蕉には3種類あり、深紅の花をつける「花芭蕉」、美味の「実芭蕉」、繊維の取れる「糸芭蕉」があります。この糸芭蕉から作られる織物が古来沖縄の人々に親しまれてきた芭蕉布なのです。
着物1反分の糸を取るには約200本もの芭蕉の木が必要とされます。
良質の糸は良い畑からと言われるだけに、糸芭蕉の栽培は大変重要な最初の段階なのです。
肥料を入れたり、葉や芯を切り落とすといった作業を経て、刈り取った後は皮を剥ぎ、大鍋で煮込み、何工程もある手間のかかる作業を経てようやく糸が出来上がります。
織りよりも、その前準備のほうが当然ずっと長いのですが、平良さん曰く、「織りは全体の100分の1」だそうです。
そうして織り上がった芭蕉布は、そのひんやりとした肌ざわりと風通しの良さ、何とも言えない味わい深さを感じさせる素敵な衣として、長きに渡り愛されているのです。
八寸帯と九寸帯
現在よく見られる芭蕉布の帯は九寸名古屋帯が主流で、お太鼓に「麦の穂」や「ゼニダマー」といった琉球絣が織り込まれていますが、今回の作品は芯がいらない、かがるだけの八寸帯ゆえに生地が厚めに織ってありますから、絣ではなく花織が施されています。
厚めに織られているとは言え、見た目以上に柔らかい、しかししっかりと腰のある風合いは前準備にしっかりと費やした良質な糸が物語っているのでしょう。
良質な糸による最高な締め心地と何ともたまらない素敵な配色、通気性が良く、軽く、水濡れにも強く、素朴なとても味わい深い織物です。
この作品は最近制作されたものではありません。綺麗に丁寧にまとめられたものではない、勢いと荒々しさの中に個性と想いがキラリと光るそんなワクワクしてしまう作品です。
重要無形文化財に指定された織物であることが伊達ではないことが、見て触れて締めたときに感動として存分に味わえる帯でしょうね。
美しいキモノ 2012年冬号掲載 「小紋」
こだわり抜いた染めの技法
本日の作品は小紋です。タイトルは「群蝶文」となっています。
カラフルな蝶々がさも優雅に舞っているような雰囲気を感じさせる楽しいお着物です。
近くで見ると牡丹唐草の地紋が織り込んである生地の上から型染めを施してあります。ですので光の加減で地紋が浮き上がって見えますね。
そして蝶自体も、小さい「霰」の型紙を生地に張ってから染付けを施しており、また箒で叩きつけながら染めていくことによって独特の濃淡と荒く味のあるグラデーションが出来上がります。
あまり見られない染めの技法によって、沢山の色目を使ってあるにも関わらず、派手すぎず、かえって面白みのある小紋に出来上がっています。
着て見せる楽しみ
右の写真は衽と衿部分です。無作為に散りばめられているように見えていますが、実は柄が縫い合わせる箇所それぞれが合うようになっています。
それは、これだけの蝶尽くしになるとどんなに良い染めを施しても、やりっぱなしだとやはりうるさくなってしまいます。しかし柄合わせがきちんと合うように計算された配置にすると柄だけではなくデザインとなり、見る者を惹きつける素敵さに変わります。
別注の生地から独特の染付け、センスが光るデザイン。こだわった製作課程が個性的な魅力ある作品となって、見る者着る者を楽しませてくれますね。
この作品は制作後に蝶の型紙が破損してしまったそうで、事実上最後の作品と伺っております。是非お手にとってご覧頂ければと思っております。