Improvement of a laser confocal differential interference contrast microscopy (LCM-DIM); レーザー共焦点微分干渉顕微鏡の改良について(Super luminescent diodeの利用と検出限界)

 レーザー共焦点微分干渉顕微鏡はまだまだ発展途中の顕微鏡です.本ページでは,単位成長ステップの観察に成功した後の,レーザー共焦点微分干渉顕微鏡の改良について紹介させていただきます.本ページは現在はまだまだ短いですが,改良を加えるごとに徐々にアップしてゆく予定です.

1)Super luminescent diodeの利用について 2)ステップ検出の現在の限界について


1)Super luminescent diodeの利用について
 He-Neレーザーのように可干渉長の長いレーザーを光源に用いると,下図下のように,互いに平行な結晶の上面,底面およびセル底面からの反射光が干渉します.そのため,結晶の厚みが薄い場合には,多数の干渉縞が現れてしまいます(下図右).そこで光源を,Super luminescent diode (SLD)と呼ばれる,最近開発された可干渉長の短いレーザーに変えますと,下図左のように,干渉縞の発生を劇的に低減させることができることが分かりました.下図左の場合ですと,中心波長が680nmで数十nmの波長分布を持つ変わりに,可干渉長が約10μmのSLDを光源に用いています.

ウエブ上にアップするために画像の品質をかなり低下させています.そのため,左図では渦巻成長ステップがクリアには見えませんが,原画では美しい単位成長ステップからなる渦巻成長丘が観察できています.
 一方,右図では,発生した多数の干渉縞のために,何が何やら分からない状態になってしまっています.
 この光源の改善にも,オリンパスの斎藤良治氏および小林 茂氏に大変お世話になっております.

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2)ステップの検出限界について
 それでは,本顕微法を用いた場合に,どこまで薄いステップをその場観察することができるのでしょうか?興味があります.そこで,いろいろな結晶表面上のステップを観察してみました.下図左は,リゾチーム正方晶系結晶の{101}面での単位成長ステップです(2.8nm高さ).図中の矢印の部分で,アイランドの合体に伴いステップのコントラストが消滅していますので,単位ステップであると証明できます.また,下図中央は,水素終端Si(111)表面上でMBE成長させた有機半導体材料であるペンタセンの薄膜結晶です.図中のデンドライト上のコントラストが1分子高さの単位成長ステップ(1.6nm高さ)であることは,別途AFMで確認してあります.また,下図右は,気相成長させたフラーレンC60のバルク単結晶の表面です.観察されているステップが単位ステップであるかどうかはまだ確認していませんが,多数の層が合体しているところでステップのコントラストがなくなっていますので,おそらく単位成長ステップ(0.8nm高さ)であると予想されます.(このC60単結晶は,横浜市立大学の小島・橘研究室よりいただきました.感謝申し上げます.)
 表のページで述べましたように,ステップのコントラストは結晶表面の反射率,および対象の横方向サイズに大きく依存します.ペンタセン薄膜結晶やC60結晶の反射率はまだ未測定ですので,どれくらいの高さが検出限界であるか明確なことは言えませんが,まだまだ行けそうに思います.もし,数0.1nm高さのステップが検出できればこれはもう原子分解能ですので,どこまでゆけるか期待しています.

リゾチーム正方晶系結晶{101}面の単位成長ステップ:2.8nm高さ.これくらいでは楽勝ですね. ペンタセン薄膜結晶の単位成長ステップ:1.6nm高さ.ペンタセン薄膜の形がフラクタルライクなのと,横方向にサイズが小さい為に少しコントラストは悪く見えますが,この高さでもまだ楽勝ですね. フラーレンC60単結晶の単位成長ステップと思われるステップ(まだ未確認):おそらく0.8nm高さ.結晶は,横浜市立大学の小島・橘研究室よりいただきました.有り難うございます.

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