こ れからレポート・卒論を書く若者のために
2007 年 5 月 10 日刊行予定
酒井 聡樹著 共立出版
本体 1800円(税込み 1890 円)
A5 判 242 頁
(ISBN
978-4-320-00574-7
)
序文
本書は、これからレポート・卒論を書く若者のための本である。こうした文書を書いたことがない若者や、書こうと思って苦しんでいる若者の ための入門書 だ。理系文系は問わない。どんな分野にも通じるように書いた。
みなさんはおそらく、小学校・中学校・高校の国語の時間に作文や感想文をたくさん書いてきたであろう。そして大学に入って突然、レポートや卒論なるもの の提出を求められるようになったに違いない。ところが、高校までの作文・感想文のつもりでレポート・卒論を書くと、とんでもない失敗をすることになる。レ ポート・卒論は、作文・感想文とはまったく異なるからだ。
良いレポート・卒論を書くためにはまず、レポート・卒論とは何かを知ることが大切である。どういうことを書くことを求められているのか。どういう心構え をもって書くべきなのか。そして次に、レポート・卒論を書くために必要なことを学ぶ必要がある。序論・本論・結論等で書くべきこと。読者を説得するために 必要なこと。などなど、知っておかなくてはいけないことはたくさんあるのだ。むろん、わかりやすい文章を書くための技術もみにつけなくてはいけない。
本書には、こうしたことをすべて書いている。つまり、これからレポート・卒論を書く若者にとって必要なことをすべて書いた本である。本書はきっと、レ ポート・卒論を書くために役立つと信じている。
私は、
東北大学
の准教授であり、生態学(生物学の 一分野)の研究者である。自分の専門分野の論文を書いてきたし、学生の論文執筆指導もしてきた。この経 験を元に、2002 年に、
「これから論文を書く若者のために」
という本を書いた(2006 年に大改訂増補版を出した)。これは、大学院生や若手研究者を対象に、学術雑誌に掲載する論文を書く技術を解説した本である。2004 年からは、
東北大学
の全学部(理・医・歯・薬・工・ 農・文・教・法・経)の一年生を対象に、レポート作成法を講義している。これは、
「大学生のための情報 検索術」
という講義の一環である。この講義の受講生は、自由課題のレポートを半年かけて執筆し提出する。この講義(および学生が提出したレポー ト)を通し て私は、レポートの書き方に関していろいろ考えることができた。そして、これまでに培ったことを本にしようと思った。専門分野の論文執筆から学んだこと で、レポート・卒論の執筆に活かせること。レポート作成法の講義を通して学んだこと。それらをすべて本書に書いた。
本書では、
東北大学
の学生が書いたレポートを多数 紹介している。これらはみな、
「大 学生のための情報 検索術」
の課題として提出されたものである。レポー トの紹介に当たっては、書いた当人の許可を得るようにした。「東北大レポートより」とあるものは、許可を得たレポートである。しかし、連絡を取れなかった 学生も多い。そういう場合は、そのレポートを元に私が創作をした。それらには、「東北大レポートを元に創作」と記している。ただし、タイトルのみを紹介し たものについては、引用許可を取るまでも無いと判断した。
本書の構成
本書は三部構成である。
第 1 部
では、レポート・卒論とは何かを解説する。高校までに書いていた作文とはいかに違うのかを知って欲しい。
第 2 部
は本書の核となる部分である。レポート・卒論を書くために必要なことすべてを解説している。ここを読めば、レポート・卒論の各章で何を書くべき なのか、 どのように書くべきなのかがわかるはずである。
第 3 部
は文章技術の解説である。わかりや すい文章を書くために必要な技術を徹底的に解説している。
本書が対象とする読者
本書が対象とする読者は、「これからレポート・卒論を書く若者」である。具体的には、次のような人たちを想定している。
・これからレポートを書こうとしている学部生。理系文系は問わない。レポートとは何なのかを知り、学術的価値のあるレポートを書くように頑張って欲しい。
・これから卒論を書こうとしている学部生。やはり、理系文系は問わない。卒論はまさに学術論文であり、レポートより一段上の存在である。本書の内容が、卒 論を書く上で役立つことを切に願っている。
・学生のレポート・卒論書きを指導する側の人々。教える側の理論武装の一つとして本書を役立てて欲しい。
・社会人となって、ビジネスのためのレポートを書こうとしている若者。本書の内容は、こうしたレポート執筆にも役立つはずである。
なぜ、サッカーの喩えなのか
本書では、サッカーの例を用いた説明をしばしば行う。これは、私がサッカーを愛しており、そして、日本にサッカー文化が根づくことを切に 願っているから である。サッカーとは関係のない場面にも、ごく自然にサッカーの話が出てくることが私の夢なのだ。また、仙台市に所在し、宮城県民の J リーグクラブである
ベガルタ仙台
も随所に登場する。これも、
ベガルタ仙台
を私が愛しているがゆえである。確かに、
浦和レッズ
とか
ガンバ大阪
とか、全国的に 有名なクラブを例にした方が多くの方には馴染みやすいことは認めよう。しかしそれは私にはできない。J リーグクラブを例に使うなら、
ベガルタ仙台
でなくてはいけないのだ。
古本を売買しないで
一つ、お願いがある。本書を古本で売買しないで欲しい。古本は、紙が汚れている程度で、本の持つ情報はまったく劣化していない。古本の売 買は、著作権者 から購入すべき情報を売買することである。しかし古本が売れても、著作権者に印税はまったく入らない。断っておくと、私は、印税は当然の報酬であると思っ ている。もちろん、本書執筆の動機は、レポート・卒論執筆に苦しむ若者を少しでも助けたいという思いであった。そして実際に、本書が役に立ったという話を 聞くと、とても嬉しく思う。この感情は、金銭うんぬん抜きの純粋なものだ。一方、何ヶ月もの間、全知力・全精力を振り絞って本書を書いたことも忘れないで 欲しい。これへの対価を求めてはいけないのか?だから皆さん、古本を売買しないで。本書が役に立ったと少しでも思って下さるのなら、この私の願いをどうか 聞き入れて欲しい。不要になったのなら、資源ゴミに出そう。要するに本は紙。「資源ゴミに出すより古本として売る方が本を大切にしている」なんてことはな いのだ。
さらなる高みへ
大学院に進もうと考えている方へ。大学院は、学術的な研究をするところである。そして、あなたの研究成果を、論文として学術雑誌に発表す ることが使命と なる。その執筆は、レポート・卒論の執筆よりもはるかに大変だ。しかし臆することなく挑んで欲しい。
大学院では、以下の本が役に立つと思う。
酒井 聡樹(2006)
『これから論文を書く若者のために:大改訂増補版』
共立出版
本書の姉妹書であり、学術雑誌に発表する論文の書き方を解説した本である。
謝辞
本書を書く上で、以下の方々にお世話になった。篤くお礼申し上げる。
・
竹中 明夫さん
・
牧野 崇司さん
・酒井 暁子(私の妻)には、原稿を読んでいただき、貴重なご意見を頂戴した。私は、お三方のご意見に従って原稿を大幅に直した。おかげで原稿はずいぶんと良く なったと思う。
・「倒れた隣家の庭木」という文の問題点(第 3 部 3.4.1 節)は、
牧野 崇司さん
が指摘したものである。この問題点について考えるこ とが、第 3 部第 3 章を書く一つの動機となった。
・
三中 信宏さん
は、説得力のある主張とはど ういうものなのかご教示下さった。
・米澤 誠さんを始めとする
東北大学附属図書館
の方々は、東北 大学の講義
「大学生のための情報 検索術」
を企画立案し、私を講師の一人にして下さった。この講義の講 師となったことが、本書執筆につながった。
・
「大学生のための情報 検索術」
の受講生が提出したレポートは、レポートの書き方を考える良き材料となった。本書があるのも、この講義を受講したみなさん のおかげである。
・佐藤 初美さんは、本書執筆に関して色々お手伝い下さった。
・
共立出版
の信沢 孝一さんは、本書執筆の申し出を快諾して下さった。そして、出版のために色々とお骨折り下さった。
・東北大学生物学科の学生 --- 青木 信策さん・石井 宏憲さん・菊地 諒さん・武田 悠さん・竹原 正貴さん・田中 祐子さん・羽田野 愛さん・林 文さん・丸岡 玉枝さん・山脇 琢磨さん・和田 慎一郎さんは、元気一杯の表紙のモデルになってくれた。立派な卒論を書くようにね。