こ れからレポート・卒論を書く若者のために
2007 年 5 月 10 日刊行予定

酒井 聡樹著 共立出版
本体 1800円(税込み 1890 円)
A5 判 242 頁
(ISBN 978-4-320-00574-7)

若手研究者のお経


目 次 詳細目次はこちら
第 1 部 レポート・卒論を書く前に
 第 1 章 レポート・卒論とは何か
 第 2 章 なぜ、レポート・卒論を書くのか
 第 3 章 わかりやすいレポート・卒論を書こう
第 2 部 レポート・卒論の書き方
 第 1 章 テーマの決め方
 第 2 章 文献検索・実験・調査の進め方
 第 3 章 レポート・卒論の構成
 第 4 章 構想の練り方
 第 5 章 タイトルの付け方
 第 6 章 序論の書き方
 第 7 章 研究方法の説明の仕方
 第 8 章 結果の説明の仕方
 第 9 章 図表の提示の仕方
 第 10 章 説得力のある主張とは
 第 11 章 考察の進め方
 第 12 章 引用の仕方
 第 13 章 結論の書き方
 第 14 章 要旨の書き方
 第 15 章 効率の良い執筆作業
第 3 部 日本語の文章技術
 第 1 章 わかりやすい文章とは
 第 2 章 文章全体としてわかりやすくする技術
 第 3 章 一つ一つの文をわかりやすくする技術

詳細目次 各部・各章の簡単な内容紹介付き
第 1 部  レポート・卒論を書く前に
そもそも、レポートとは何なのか。卒論とは何なのか。これらを理解することはとても大切だ。第 1 部ではまず初めに、これらのことを説明する。次に、なぜ、レポート・卒論を書くのかについても考えていく。そして最後に、わかりやすいレポート・卒論を書 くことの大切さも訴えたい。

第 1 章  レポート・卒論とは何か
良いレポート・卒論を書くためには、レポート・卒論とは何かを知ることが非常に大切である。これを知らずにレポート・卒論を書くと、レポート・卒論とは言 えない代物を提出してしまうことになる。本章では、レポート・卒論とは何かを解説したい。

  1.1  レポート・卒論は学術である
    1.1.1  悪いレポートの典型例
    1.1.2  良いレポートの例
  1.2  レポートでは、未解決の問題に取り組まなくてはいけないのか
  1.3  卒論は、未解決の問題に取り組むものである

第 2 章  なぜ、レポート・卒論を書くのか
なぜ、レポート・卒論を書くのかを考えていく。「単位のため」という答えはおいておいて、あなた自身をいかに変えるか、学術の進歩にいかに貢献 するかという視点から見ていこう。

  2.1  問題に対して解答する能力を養う
  2.2  問題提起する能力を養う
  2.3  取り組んだ問題に関する知識・理解・考えを深める
  2.4  学術論文やビジネス文書などを書くための文章力を養う
  2.5  これらに加え卒論では

第 3 章  わかりやすいレポート・卒論を書こう
わかりやすいレポート・卒論を書くことの大切さを訴えたい。学術の世界では(世界でも)、わかりにくいことは、百害あって一利なしである。

  3.1  レポート・卒論は、読者にわかって貰うために書く
  3.2  わかりやすいレポート・卒論を書くために大切なこと

    3.2.1  わかりやすくしようという意識を持つ
    3.2.2  読者を想定する

第 2 部  レポート・卒論の書き方
第 2 部は、レポート・卒論書きの実践編である。テーマを決め、文献検索・実験・調査等を行い、レポート・卒論を書き上げる。一連の過程において知っておいて欲 しいことを解説したい。
 解説は、例を用いてできるだけ具体的に行う。取り上げる例は、ベガルタ仙台(仙台市に所在し、宮城県民の夢を乗せて戦うJ リーグクラブ)を題材とした架空のレポート・卒論と、東北大学の学生が提出したレポート(あるいは、それを元に私が創作したもの)である。ベガルタ仙台の レポートは、「なぜ、ベガルタ仙台は強いのか」と問題提起し、「牛タン定食を食べているからである」と解答するものである(注;牛タン定食は、仙台が発祥 の地)。「本当か?」などと突っ込まず、素直に信じていただきたい。

第 1 章  テーマの決め方
まず初めに、どういうテーマに取り組むべきなのか(テーマの条件)ということと、テーマの見つけ方を解説する。課題が決められたレポートの場合には、テー マ選びに悩むこともない。以下では、自由課題のレポートと、卒論に絞って話を進めることにする。

  1.1  テーマの条件
    1.1.1  あなたが面白いと思う問題である
    1.1.2  部分的にせよ、解答できる問題である
  1.2  テーマの見つけ方

第 2 章  文献検索・実験・調査の進め方
テーマが決まったら、文献検索をして関連文献を読み進めたり、自ら実験・調査を行ったりすることになる。これらのための手法は、学門分野によってさまざま である。各分野の事情を考慮した細々とした説明は本書の目的を超える。本章では、文献検索・実験・調査の進め方について、基本的なこと --- しかし、非常に大切なこと --- 助言をする。

  2.1  仮説を立て、それを検証する
    2.1.1  いろいろ調べて解答を予測する
    2.1.2  予想が正しいのかどうか確かめる
  2.2  文献検索・実験・調査を進める手順
  2.3  次に繋げることも大切

第 3 章  レポート・卒論の構成
ここで、レポート・卒論の構成を説明しておく。どういう章立てをするのかといった、形式的なことである。

  3.1  基本的な構成
  3.2  章立てをしよう

第 4 章  構想の練り方
文献検索・実験・調査とそれらの解析を終え、レポート・卒論を書く材料は揃ったとする。いよいよ執筆開始だ。まず初めにすべきことは、どういうレポート・ 卒論を書くかという構想を練ることである。構想を練らずに書き始めても、うまくいくはずがないのだ。本章では、構想の練り方を具体的に説明していこう。

  4.1  結論の妥当性と、結論を導く論理の説得力を改めて検討する
  4.2  結論が、取り組んだ問題に答えたものになっているのかどうか確認する
  4.3  骨格となる情報を確認する

    4.3.1  骨格となる情報
    4.3.2  骨格となる情報を書く場所
  4.4  話の流れを作る

第 5 章  タイトルの付け方
タイトルの付け方を解説する。なぜ、タイトルが大切なのか。良いタイトルとはどういうものなのか。良いタイトルを付けるにはどうすればいいのか。以下で、 これらのことを考えていきたい。

  5.1  良いタイトルを付けよう
  5.2  良いタイトルとは
  5.3  良いタイトルの付け方
    5.3.1  タイトルに入れる情報
    5.3.2  良いタイトルの例
  5.4  悪いタイトルの例
    5.4.1  タイトル無し
    5.4.2  調べた対象をタイトルにしただけ
    5.4.3  取り組んだ問題しか書いていない
    5.4.4  着眼点しか書いていない
    5.4.5  言い換えただけ
    5.4.6  どちらが取り組んだ問題で、どちらが着眼点なのかわからない
  5.5  印象を強くする工夫

第 6 章  序論の書き方
序論は、レポート・卒論の目的・意義を述べるためにあるものである。意義を認めてもらえるかどうか、そのレポート・卒論に興味を持ってもらえるかどうか は、序論の良し悪しにかかっているといってよい。だから序論は、レポート・卒論の意義を明確にするために細心の注意を払って書かなくてはいけない。それゆ え、レポート・卒論を書いたことがほとんどない若者は、序論の執筆に四苦八苦すると思う。しかし、コツさえつかめば、序論を書くことはさほど難しくない。 本章では、序論の書き方を解説したい。

  6.1  序論では何を書くべきなのか
  6.2  良い序論の例
  6.3  悪い序論の例
    6.3.1  序論が無い
    6.3.2  「何をやるのか」を書いていない
    6.3.3  「どうしてやるのか」を書いていない
    6.3.4  取り組んだ問題を書いていない
    6.3.5  問題意識の説明がない
    6.3.6  着眼点と、それに着眼する理由の説明が不十分
  6.4  説得力のある序論の書き方
    6.4.1  序論折り紙の作り方
    6.4.2 「 どうして取り組むのか」で書くべきこと
    6.4.3  序論折り紙適用のコツ

第 7 章  研究方法の説明の仕方
自分でデータを取ったレポート・卒論を対象に、研究方法の説明の仕方を解説する。教師の指導の元で実験・調査等の実習をした場合(実習レポートなど)や、 何らかのデータを取った卒論などが主対象である。こうしたレポート・卒論では、研究方法を説明する章を立てる。この章を書く目的と、書くべき内容について 説明していく。

  7.1  研究方法の説明を書く目的
    7.1.1  研究方法が適切であることを示す
    7.1.2  読者が研究を再現できるようにする
    7.1.3  研究方法を的確に理解していることを示す
  7.2  読者に示すべき情報

第 8 章  結果の説明の仕方
自分でデータを取ったレポート・卒論を対象に、結果を説明する章で書くべきことを解説する。この章に求められることは三つある。以下で、それぞれについて 解説していこう。

  8.1  無駄なデータを削る
  8.2  わかりやすい形でデータを提示する
  8.3  データが持つ情報を短い言葉にまとめる
  8.4  その他の注意事項

第 9 章  図表の提示の仕方
自分でデータを取った場合は、何らかの図表を用いてデータを示すことが多い。実験・調査等の方法の説明に図表を用いる場合もある。データ取りをしたわけで はない場合も、概念等を説明する図やまとめた表を用いることがある。本章では、どういう場合に図表を用いて説明するのかということと、図表の提示の仕方を 説明する。

  9.1  どういう場合に図表を用いるのか
    9.1.1  データを提示したい場合
    9.1.2  概念等を説明したい場合
  9.2  図にするべきか、表にするべきか
  9.3  図表を作るときの心構え
    9.3.1  本文を読まなくても理解できる図表にする
    9.3.2  単純な図表にする
    9.3.3  関連するデータはまとめて示す
  9.4  図表を作るときの注意事項
    9.4.1  図表を載せる場所
    9.4.2  図表の説明文
    9.4.3  軸等の説明
    9.4.4  独立変数と従属変数
    9.4.5  表中でのデータの並べ方
    9.4.6  記号の描き方

第 10  章 説得力のある主張とは
考察の書き方の説明に入る前に、説得力のある主張とはどういうものなのかを考えておこう。結論を読者に受け入れてもらうためには、説得力がすべてだからで ある。

  10.1  そう主張する理由を述べている
  10.2  理由は、客観的な事実・データに基づいている
  10.3  理由は論理的である

    10.3.1  論理的に成り立たない主張をしている
    10.3.2  他の可能性を検討していない
  10.4  その主張は、直接の拠り所としなかった事実・データに照らし合わせても矛盾がない
  10.5  他の主張と比較して、その主張の方が確からしいといえる
  10.6  どこまでが確かなことで、どこからが推測なのか

第 11 章  考察の進め方
事実・データを元に主張を展開していく部分(便宜的に、「考察する章」と呼ぶことにする)の書き方を解説する。
 データを取ったレポート・卒論の場合、「考察する章」とは、「考察」「議論」といった章のことである。これらのレポート・卒論では、結果を説明する章で データは提示済みである。これらデータと、文献から得た事実を元に考察を進める。
 データ取りをしたわけではないレポート・卒論の場合、「考察する章」とは本論全体のことである。これらのレポート・卒論では、文献から得た事実を紹介し つつ、それらに基づいた考察を同時に進めていく。
 いずれにせよ、結論(取り組んだ問題に対する解答)を導くことを目的に、考察を進めていくことになる。

  11.1  考察する章で書くべきこと
    11.1.1  事実・データに基づいてこういうことを明らかにしたという主張
    11.1.2  直接の拠り所としなかった事実・データに照らし合わせても、その主張に矛盾がないかどうかの検討
    11.1.3  他の主張(対立仮説)と比較して、その主張の方が確からしいかどうかの比較検討
    11.1.4  その問題を解決したことでもたらされる、より一般的な学術的意義を述べる
    11.1.5  今後の発展
  11.2  考察する章を書くときの注意事項
    11.2.1  結果を説明する章で提示したすべてのデータを使って議論する
    11.2.2  データが持つ情報をまとめた「短い言葉」を使って議論する
    11.2.3  図表を示しながら議論する
    11.2.4  事実・データの問題点も検討する
    11.2.5  目的を持って文献を引用する
    11.2.6  頭を冷やして書く

第 12 章  引用の仕方
ほとんどすべてのレポート・卒論は、文献を引用しながら議論を進める。引用の際には、守るべき大切なことがいくつかある。本章では、それらを説明してい く。

  12.1  引用が必要となる基準
  12.2  引用の仕方

    12.2.1  括弧書きでそのまま紹介
    12.2.2  引用者の言葉で紹介
  12.3  引用文献情報の示し方
  12.4  文献を引用するときに気をつけること

    12.4.1  正確に引用する
    12.4.2  引用であることを明示する
  12.5  引用文献リスト

第 13 章  結論の書き方
結論の書き方を解説する。結論とは何か、結論を書くときの注意点、結論をどこに書くのかを説明していきたい。

  13.1  結論とは何か
  13.2  結論を書くときの注意点
    13.2.1  序論での問題提起に対応している
    13.2.2  結論において、新たな考察を展開しない
    13.2.3  「まとめ」ではなく、結論で終える
  13.3  結論を書く場所

第 14 章  要旨の書き方
卒論には要旨を付ける。本章では、要旨の書き方を解説する。要旨はいつ書くと良いのか。良い要旨とはどういうものなのか。以下で、これらのことを説明して いこう。

  14.1  要旨は、本文が完成してから書く
  14.2  良い要旨とは
    14.2.1  要旨で書くべきこと
    14.2.2  要旨を書くときの注意事項

第 15 章  効率の良い執筆作業
レポート・卒論を書き上げるためには、執筆作業を効率的に進めることも重要である。本章では、執筆作業の進め方を説明する。なお、以下では、基本的な事 実・データの収集と解析を終え、いよいよ書き出すという段階にあると想定している。具体的には以下の段階である。

  15.1  レポート・卒論の大まかな構成を練る
  15.2  改めて、関連文献を洗い直す
  15.3  レポート・卒論の構成を完璧に決める
  15.4  ともかく一度、一挙に全部書いてみる
  15.5  書きやすい章から仕上げにかかる
  15.6  レポート・卒論を部分放置して頭を冷やす

第 3 部  日本語の文章技術
わかりやすいレポート・卒論を書くための文章技術を解説する。わかりにくいレポート・卒論は読者の読む気をそぐ。わかりやすく書く技術は必ずみにつけなく てはいけない。
 わかりやすい文章を書くための心構えは、第 1 部第 3 章ですでに述べた。ここでは、技術的なことに絞って 解説する。
 第 1 章では、わかりやすい文章とはどういうものなのかを説明する。第 2, 3 章では、わかりやすい文章を書くための技術を解説する。この技術は二つに分けることができる。文章全体としてわかりやすくする技術(第 2 章)と、一つ一つの文をわかりやすくする技術(第 3 章)だ。レ ポート・卒論は、両者が揃って初めてわかりやすくなる。この二つの技術を是非とも身につけて欲しい。

第 1 章  わかりやすい文章とは
文章を理解するとはどういうことなのか、わかりやすい文章とはどういうものなのかを説明する。この二つを知っておけば、わかりやすい文章を書くコツもつか みやすいと思う。

  1.1  文章の理解とは
    1.1.1  知らないことは理解できない
    1.1.2  筋の通らないことは理解できない
  1.2  わかりやすい文章とは

第 2 章  文章全体としてわかりやすくする技術
文章全体としてわかりやすくする技術を解説する。個々の情報をいかに提示していけば、文章全体としての情報を整理しやすくなるのかを解説していきたい。

  2.1  無駄な情報を削る
  2.2  一度に与える情報は一つに絞る
    2.2.1  一つの文では一つのことだけを言う
    2.2.2  一つの段落では一つのことだけを主張する
  2.3  どういう情報を伝えるのかを前もって知らせる
    2.3.1  見出しをつける
    2.3.2  全体像を述べてから細部を述べる
    2.3.3  段落の書き出しの一文で主題を明示する
    2.3.3  次に来る文の位置づけを教える
  2.4  読者が待っている情報を与える
  2.5  重要なことから述べる

第 3 章  一つ一つの文をわかりやすくする技術
日本語の一つ一つの文をわかりやすくする技術を解説する。これは、文章全体としてわかりやすくする技術とはまったく異なる。一つ一つの文の意味が不明確で は、文章全体として言いたいことが伝わるはずもない。一つ一つの文をわかりやすく書く技術も、きちっと習得すべきである。
 わかりやすい文を書くためには、文を書く上での心構えを正しく持つことが何よりも大切である。本章ではまず、この心構えを述べる。次に、文がわかりにく い原因と、わかりやすい文にする技術を解説する。

  3.1  わかりやすい文を書くための心構え
  3.2  一つの文の情報量

    3.2.1  一つの文では一つのことだけを言う
    3.2.2  「一文に一情報」を守るための心構え
  3.3  情報の個々の要素を与える順番
    3.3.1  先にある語が、その文の情報の主題となる
    3.3.2  文の主題を先に
  3.4  語と語の修飾関係
    3.4.1  修飾関係がわかりにくい原因
    3.4.2  修飾関係を明確にする技術
  3.5  漢字とカナの混じり具合