『これから論文を書く若者のために:究極の大改訂 版』
表紙に賭けた魂の闘い
その7

若手研究者のお 経


翌日、新たな図案が届いた。

おお、素晴らしい。「大改訂」の背景色がベガルタゴールドになっている。紙吹雪もベガルタゴールド。観客席は、ベガルタゴールドのサポーターに埋 め尽くされていた。------------------ これで完成した。そのとき酒井はそう思った。そして、笑みがこぼれるのを覚えながら図案に見入った。----------------- やがて、目が一点に釘付けとなった。「大改訂」の文字が黒のままではないか! 直すのを略したのか?

画竜点睛を略 ……………。
*龍の絵の仕上げに目を描くはずが、描くのを略してしまったという故事。転じて、最後の仕上げを略してしまうこと。

酒井は思わず呟いた。あわてて Y 内に問い合わせたところ、黒ではなく濃紺とのことであった。配色としてはその方が良いという、デザイナーの判断らしい。濃すぎて黒に見えるということ か。「画 竜点睛を濃く」の方か。*意味の説明省略。ただし「濃く」は、「く」にアクセントがある。
 プロのデザイナーの言うことだからと思いつつ、酒井はどうしても濃青に拘りたかった。そして、濃青にするように頼んだ。

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