『これから論文を書く若者のために:究極の大改訂版』
表紙に賭けた魂の闘い
その6

若手研究者のお 経


一週間経った。2 月 23 日の朝、新たな図案が届いた。構図は決定していた。「究極の大改訂版」の字体だけが変わった案が 11 も届いた。

代表例 3 つ。
酒井はまず、学生やスタジアムが綺麗に描かれていることに感動した。すごい。そして、図案を印刷して学生に見て貰った。左端を良しとする声が多 かった。右端は、大改訂増補版(第 2 版)でのロゴと代わり映えがしない。真ん中は、判子を捺したみたいだ。左端を原案とするか。しかし酒井は、「大改訂」の文字が黒いことがど うも気になった。自分で、他のパターンを作って学生に見せた。

しかしいくら作っても、「大改訂」が黒文字の原案を良しとされてしまった。黒文字か ………。ベガルタ仙台のサポとしては、黄色には濃青の文字なのだ。それがベガルタのチームカラーだ。やがて酒井に、「なんで、学生の承諾を得ねばならぬの か?」という思いが湧いた。そして、濃青の文字にすると宣言した。
 居室に戻り酒井は、「大改訂」の文字が濃青の図案を改めて眺めた。濃青なのにどこか不満が残った。やがて気づいた。「大改訂」の背景色の黄色が ベガルタゴールドではない。なかなか難しい色調なので難しいのであるが、こ れが本当のベガルタゴールドだ。酒井は、背景色をベガルタゴールドに変えてみた。

良いではないか。学生に見せたら、これなら良いと言ってくれた。酒井はさっそく Y 内にこの図案を送った。そして、紙吹雪もベガルタゴールドに変えてくれるよう頼んだ。電光掲示板の文字の色は、白の方が良いだろう。
 もう一つ気になっていることがあった。観客席のサポーターが、何故にオレンジなのか? ここは、ベガルタ仙台の本拠地だ。ならば観客席もベガルタゴールドだろう。とは言っても実は、電光掲示板の下はアウェーのサポーターの席なので、正しいと 言えば正 しいのだ。しかしそれを言うなら、観客席の壁に貼られた黄青の帯 (ベガルタ応援用) は、アウェーのサポーターの所にはないはずだとか、ゴール裏のはずなのにゴールがないと か、色々と指摘すべき点が出てくる。いやそもそも、観客席のサポーターの色の現実性には拘りながら、スタジアムで 学生が円陣を組んでいるのを変としない姿勢が意味不明であった。さしたる躊躇いもなく、酒井は、観客席もベガルタゴールド にして欲しいと頼んだ。

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