10 第20回高校生クイズについて 企画編
第20回高校生クイズについて、わたしの周りの人の反応は概ね「ここ数年の高校生クイズの中では、一番面白かった」というものであった。で、わたしもまったく同意見である。
わたしがこう思った理由として、ひとつには「ここ数年の放送が全然面白いと思えなかったこと」が挙げられる。それまでの高校生クイズがそうだったように、昨年までの高校生クイズは「クイズ形式そのもの」をこねくりまわすことで高校生の緊張感をあおっていたようだが、今年は「サバイバル列車」という設定をうまく使って高校生の姿を描き出そうとしていた。「電波少年」「あいのり」などに見られる「旅を使ったドキュメント」が視聴者に受け入れられやすい現状に、敏感に反応できたということだろう。
旅行先で出会った人々とのふれあい、旅先でのわかれなど、高校生の素直さやひたむきさを出すのに、一種ウルトラクイズ的な形の「旅」を使ったのはうまかった。ただ、全体として旅の内容が盛りだくさんだったため、編集された場面が多く、あまり映らなかった出場者もいて、不満の残った人もいるのではないだろうか。
今回は「高校生クイズにおける編集について」考えてみたい。
まず、今年の全国大会の企画をおさらいしておこう。放送されていない分についても、「高校生クイズ2000 YES・NO支援突破局」のホームページの掲示板で得た情報を元にして、でき得る限り再現してある(管理者の方に感謝感謝)。なお、( )に囲まれた企画はいまいち未確認情報であることをさす。
さて、これらのうち、編集方針を示す特徴的な「3人ばらばら(中略)クイズ」について見てみよう。1時間ちょっと早押しを続けて、そのうちどういう場面を放送するかが、編集の方針をはっきり示しているはずだ。このクイズで解答シーンが映った場面を分類すると、以下のようになる。
このなかで、3と5は著しく少ないので、メインは1・2・4・6である。これらには「おいしいチーム・リアクションを写す」という共通点がある。
しかし、こんな無意味っぽい分類をした人は今までいなかったと思う。これだけ分類すればどんな場面でも含まれるでしょ、意味の無い分類だ、と思うかもしれない。でも、これに含まれない場面が、現場には結構ある。
たとえば「勝ちぬけた場面」について、勝ちぬけたその瞬間の場面が、テレビ的においしくない場合が結構ある。今回のように、勝ちぬけたその瞬間にひとりぼっちであれば、喜んでいる姿がどことなく絵的に静かになってしまう。また、勝ちぬけた瞬間にどえらくイタイせりふを叫んでしまったりする場合があるようで(第12回の全国大会に出場した友人が言っていた)、多分今回もそう言う部分を丁寧に編集で切っているのだろうと思う。
詳しくは「クイズ番組論1」で記したが、基本的に素人は面白くない。面白いのは「素」のリアクションだけである。クイズに参加している高校生は、それでも「素」の部分が大きいから、そこを生かしたリアクションをしている場面をつまめばそこそこの量になる。
1〜6をまとめて裏側から見てみるとこうなる。例えば、別に勝ちぬけもせず、リアクションも普通のものであるチームが正解した場面は、まず放送されない。つまり、このクイズで落っこちたチームの解答シーンはほとんど放送され得ないことになる。
また、勝ちぬけたチームでも、このあと別に活躍をしていなければorおいしくなければほとんど放送されなくなる。魚沼まで駒を進めた石橋高校がほとんど放送されていないのに、同じ所で落ちた柏原高校はめちゃめちゃ映っていた(放送上、この差はかなり激しい)。
このことに関して、わたし自身非難するつもりは毛頭無い。テレビを作る側からすれば、そういう選択は当然のことだろうから。もちろん、参加した高校生にとっては大きな問題だろうけど。なるたけたくさんの高校生を出場させて、テレビ的においしい出場者を選んで放送する。これも「クイズ番組論」で記したが、最近のバラエティー番組は「ひたすらテープを回して、面白いところだけつまむ」傾向がある。高校生クイズは、ずっと昔からそれをやっていた。だってあんだけのイベントを2時間(昔はそうだった)で放送するんだから。しかも昔は今より地区予選の放送量が多かったんだから。おいしいところだけつままないとしょうがない。
ということは、だ。「おいしいチーム」を追いかけることで高校生クイズの面白さが構成されているのだとしたら、今回の大会が面白かった最大の理由は「おいしいチームが残ってくれたこと」なのかもしれない。確かに先に述べた「旅」という要素もあったろうけど、高校生クイズがおもしろくなるかどうかは、どんなチームが勝ち残るかによる、といえそうである。
じゃあ「高校生クイズ的においしいチーム」ってどんなチームなのか? やっぱり高校生らしい「さわやかさ」「たくましさ」「仲の良さ」などを素直に表現できるチームだろう。
ってことは、今回の高校生クイズが面白かったのは、高校生らしい「さわやかさ」「たくましさ」「仲の良さ」などを素直に表現できるチームと、それを表現しやすいクイズ形式・旅の形式を選んだことによる、といえそうである。
つーことは、高校生クイズが面白いものになる可能性って言うのは、結構少ないのかしら。うーん。来年が心配だ。
さて、たいへんやっつけ的な分析になってしまったが、次回「高校生クイズの歴史的経緯」において、「高校生クイズにおいてクイズはどのように位置付けられてきたか」を分析してみたい。
この論題はかなり重要である。というのは、第20回放送中、クイズをじっくり描いたのは準決勝以降だけだったからである。時間があれば心拍数クイズをじっくり見てみたかった気がする。絶対に面白いと思う。なぜあんなに編集してしまったのか、これは分析に値するテーマである。放送時間だけでは説明がつかない何かがあるはずである。わたしは常々「高校生クイズはクイズ番組ではなく、ドキュメンタリーだ」と言い張ってきた。その中でクイズはどう存在してきたかをゆっくり考えてみたい。乞うご期待。