第31日目 8月5日(日) 曇り後小雨
4時15分起床。出発前のスコ卜ン岬で7月30日に斜里のじゃがいも亭で出会った大学生に再会、彼は桃岩のユースホステルに泊まっていたらしい。
礼文島をあとに稚内に戻った。
スコ卜ン岬から香深港までは、ものすごい向かい風でなかなか進まずに苦労したが、二度と来ることがないかもしれない島だけに、ゆっくり走ることができて(向かい風が強く進まなかっただけだが)かえってよかったのかもしれない。船が出ないのでは? と思うくらいの強風で海は来るとき以上の大荒れで、船は予想通り大揺れだった。もう少しで僕も船酔いを起こすところだった。悪天候が想像できるだろう。それでもなんとか無事に稚内に着いたが、曇りで小雨がちらつき始めていた。
小雨と強い向かい風と戦いながら、仕方なしに稚内天塩線(道々909号線)を南下、やっとの思いで抜海駅にたどり着いたのが4時だ。駅の正面に自転車置き場があったので駅員に断ってテントを張った。今も強風が吹いているが、雨は少し止んでいる。
駅員の話ではいつもこんな風が吹いているわけではないそうだ。もっとも台風のようなこんな風が一夏の間吹いているはずもなく、少しは安心した。
しかし、留萌までは向かい風であろう。せめて天気になってほしいものである。
フェリーからは利尻島は疎か礼文島さえもすぐに霧の中に消えてしまった。このあたりの海岸通りからは、利尻、礼文の両島が美しく見えるそうなのだが今日は全く見ることができなかったし、この調子では明日も見えないであろう。とても残念で仕方がない。
今朝、香深港で会ったライダーの話では、稚内天塩線は距離にして50km強の全線ダー卜らしいが、比較的走りやすいらしい。距離的にはちょうどこれから走る予定の大雪山の東側の三国峠のダートに相当する。違うのは三国峠が山越えなのに対して、こちらは海沿いの平坦な道であることだ。フェリーで会った埼玉からの2人組のサイクリストの話では稚咲内から豊富ヘの道がサロベツ原野を横断する道で、地平線が見られるらしい。
最後まで海岸線を走って天塩まで南下するか、途中から豊富に出て、40号線から天塩に出るかは明日の走り具合や、風向、強さで決めることにする。最後まで意地でダー卜を走ろうという気もある一方、釧路湿原の中を走れなかったこともあるので今度は原野の中を走ってみたいとも思う。距離的には前者のほうがずっと短い。ライダーの言っていた“走りやすいゲート”という言葉を期待するが、50kmもの長い距離の砂利道を想像すると少々いやになる。いずれにしても、明後日には必ず留萌まで行かなくてはならない。ここから180kmくらいなので1日平均90kmだから向かい風が強くてもどうにかなりそうだし、何とかしなくてはなるまい。
それにしても最近、日記を長く書くようになった。日一日と帰りが近づいてくるからだろうか?
今日、フェリーから降りて稚内を離れる時、今までで最も”帰る”という実感がした。
今日も昼食は食パンだけ、これもすっかり定着したようだ。その代わり夕食は豪華になす入りカラーメンとビスケットを食ベた。最近はチョコレートを食ベなくなった代わりにビスケットを食ベるようになった。夕食後紅茶を入れ、たばこを吸いながらビスケットをつまんで一日を振り返るこのひとときが何とも好きなのだ。
家に居る時はもったいなくて買えないものでも、旅に出ている現在は、食ベたいものをどんどん買える。何しろ食事は楽しいし、今はテントが僕の家、僕は一国一城の主なのだ。今日も切り餅を買い込んだ。また、きゅうりをよく食ベるようになった。キャンプではとかく野菜が不足がちなのでとてもよい習慣だ。マヨネーズをかけてボリボリかじるきゅうりは最高だ。また、みそがなくなったため、しぱらくみそ汁をインスタントで我慢していたが、今日みそを買ったので、明日からはまた以前のようにみそ汁が作れる。ちゃんと出汁もとっているのになかなかお袋の味が出ずに苦労している。自分なりに満足できる味なのだが、最近急にお袋のみそ汁や、煮物などが恋しくなる。海外旅行者が日本食を恋しく思う気持がよく分かる。しかしそれもあと1ヶ月だ。
最近、風が強く天気が悪いせいもあり少々帰りたいと思うようになってきたが、実際帰ってしまうと「もっと長く旅を続けたかった」と思うに違いない。
何よりも一日一日を大切に生きよう。こんな風に毎日日記を書いていて、後になって(年を取ってから)読み返したらどんなに楽しいだろうか。明日も走るぞ。
今のNHKの天気予報では、明日の宗谷、留萌地方とも風は多少強いものの、雨の確率は0〜10%くらいだそうだ。ひとまず安心。今夜は久しぶりに寒い。 消灯8時。
本日の宿泊地 抜海駅、本日の走行距離 45km (累計 2930km)