夜明けの刑事



やはり音楽は歌ものがよい。ボーカリストで一番好きな一人を挙げるとなると、私の場合はポール・ロジャーズとなる。ミック・ジャガー、ジム・モリソン、エリック・バードン、ロッド・スチュアート、トム・ウェイツ、ポール・ウェラー、大江慎也、どんと、YUKIと大好きなボーカリストはたくさんいるが、ポール・ロジャーズは別格なのだ。だから彼が在籍したフリーもバッド・カンパニーも大好きなんだけど、でもやっぱフリーだな。なんたってバックが、ポール・コゾフ、アンディ・フレイザー、サイモン・カークだもんな。

フリーの1970年ワイト島のライブを収めたビデオが発売されているけど、フリーを同時体験していない私にとっては、これは本当にすばらしい作品だった。名盤「ファイアー&ウォーター」をリリース直後の絶頂期の演奏が3曲収められている。今でもこのライブ映像を見ると、あーこれがロックと言うものなのだなと思う。定義なんかどうでもいいんだけど、フリーこそロックそのものと感じてしまう。ほとんどアレンジもなく、そこで奏でられるのは、ドラム、ベース、ギター、ボーカルという4人のソウルの表現。しかし、20~21歳の若者が、こんなブルーズをやってしまうというのは凄い。欧米人の懐の深さというか、黒人音楽への造詣の深さも実感させられる。アンディ・フレイザーに至っては、このときまだ18歳とな!

さて、本題のポール・ロジャーズなんだけど、彼は本当に間の取り方と歌い回しが上手い。間とは、ボーカルが歌の合間に入れる「アッ」とか「ウッ」とか言う例のやつである。歌い回しに関しては、いくらうまいといってもあまりに情調的すぎると鼻についてしまうのだけど、この人に関しては、そこの押さえどころというか、ツボを心得ていて、ぐいぐいっと心に迫っては去って行く。懐の深い男臭さがある。

フリーと言えば、誰しも「All Right Now」を代表曲に挙げるけど、私は「Fire & Water」や「Oh, I Wept」の方が、断然好きである。話は逸れるけど、バッド・カンパニーなら、「Can't Get Enough」「Rock Steady」「Movin' On」「Too Bad」が好きである。こんなボーカルのバックをやると楽しいだろうな~

そんなポール・ロジャーズの曲の中で、どうしてももう一度聞きたい曲がある。それは、昔、日本のテレビドラマ「夜明けの刑事」の劇中歌で使われていた曲で、いくら探してもちゃんとしたスタジオ音源がない。確か、当時の清水マチさんというポールの元奥さんが、テレビ関係の仕事をしていたので、ポールが歌ったとかいう曖昧な記憶があるんだけど(間違っているかもしれない)。まあ、それはどうでもよいことなので、どうでもよいことにして、肝心なのは、その曲である。実に、よい曲だったのだ。渋いし、印象に残るサビのフレーズ。あー、聞きたいなー。出演していた元モップスの鈴木ヒロミツさんなら持ってたのかなあ。そう言えば、モップスってかっこいいなあ。いや待てよ。「夜明けの刑事」というタイトルも相当かっこいいな。「傷だらけの天使」とか、なんかもう凄いな、昭和!