防人



俺は九州出身なんだけど、親父の職業は防人なんよ。「さきもり」って、知ってるよね?社会で習ったやろ?そう、槍みたいのを持って、海の向こうから攻めてくる敵を迎え撃つやつ。そうそう、それそれ。今でも、あんねん、防人。ちゃんとした地方公務員やねんで。ほら、俺も腕の筋肉はがっちりしてるやろ?子供の時、親父が一服するときなんかに、槍を持たされたんよね。仕事はきついよ、ほんま。一日中、槍持って、海岸を見張ってんねんもん。そら、きついでぇ。最近、親父も年1回の体力テストに落ちてしもうて、ついに辞めることになってしまったんやけどね。俺もいつかは親父の後を継ごう思てんねん。防人って。なんか男らしい職業やろ?えっ、九州に行ったことないの?九州のコンビニには、槍が売ってんねんで。ほんまや!

「ぷ~」

ここまで、我慢していた友達が吹き出した。私としては、まだまだ行けると思っていたので少し残念だった。しかし、それにしても、世間知らずの女の子って結構いるもんだ。これは、関西のとある女子短大との合コンでの実話。信じられないと思うけど、ほぼ盛ってない。自己紹介を兼ねてふざけて話し始めたら、周りの女の子がだんだん身を乗り出して話に興味を持ちだしたので、なかばやけくそなアドリブで引っ張ってみた。ところが、ばれるどころか、中には、親父が体力テストに落ちた話をしたときに、気の毒そうにしんみりする娘までいた(さすがに涙までは流してくれなかったが)。

友達連中は、また私の嘘八百が始まったとすぐに気づいて、神妙な面持ちで協力してくれていたのだが、女の子があまりにも信じてしまったので、ついに堪えきれなくなって吹き出したのだ。この話を会社に入ってしたら、誰も信じてはくれなかった。皆、世間知らずよのぅ〜