限りなく透明に近いブルー



1971年にジム・モリソンが亡くなってから5年後の1976年、村上龍が「限りなく透明に近いブルー」で芥川賞を受賞した。その頃、私は中学2年で、ベッケン神山らとともにサッカーに明け暮れていた。多感な年代だったのですぐにでも読みたかったのだが、同時に貧乏な学生でもあったので、文庫本が出てからようやく購入することができた。ところが、読んだものの、これがまた何が何だか全くわからなかった。1970年代初期の香りと、10歳年上なだけでこんな本が書けるんだ、と思ったことしか憶えていない。なお、話が逸れるが、その翌年には池田満寿夫が「エーゲ海に捧ぐ」で、翌々年には高橋三千綱「九月の空」で同賞を受賞しており、これらの作品も、私にとっては忘れられない作品となった。

さて、村上龍の小説だが、どの本も読了後に唸ってしまうものが多い。社会的な「コインロッカー・ベイビーズ」「愛と幻想のファシズム」「イン・ザ・ミソスープ」「悪魔のパス天使のゴール」や、近未来を描く「希望の国のエクソダス」「半島を出よ」「歌うクジラ」などなど。一方、「69」や「昭和歌謡大全集」といった、ただただ笑える楽しい作品も好きだ。

ただ、多くの作品群の中でも、圧倒的なインパクトを放つのは、やはりデビュー作の「限りなく透明に近いブルー」。かっこいい新装版が講談社から出ていたので、買って読み返してみた。曖昧だった印象も幾分くっきりとした。特に、最後に主人公リュウが混乱と覚醒を繰り返しながら、夜明け時にガラスの破片越しに見た「限りなく透明に近いブルー」。その美しさが心に沁みると同時に、ジム・モリスンが歌う「水晶の舟(Crystal Ship)」がシンクロした。The days are bright and filled with pain. Enclose me in your gentle rain. そう言えば、昔「優しい雨」とかいう曲を作ったけど、どこ行ったんじゃろか。