舞茸ボーイ



JR柏駅東口を出てスカイプラザを左手に見ながら地上のレイソルロードに入る途中に、エスカレータがある。このエスカレータが、まあ遅いのなんの。気分が良すぎて、たまにはイライラしたいなあなど、変態な気分になったときは、是非このエスカレーターをご利用いただきたい。

岡山に出張に行った際にも、駅前に同じような超スローなエスカレーターがあった。迂闊にも、そのエスカレーターに乗ってしまったのだが、すぐに「あぅ〜」となり、天を見上げてしまった。すると、すぐ後ろの高校生らしき二人の学生の会話が耳に入ってきた。

後ろを振り向くわけにもいかなかったので、風貌までは確認できなかったのだが、背後右側の男子高校生が、「やっぱ椎茸うめーよなー」と独りごちた。すると数秒の間のあと、相方が「鍋とか?」と返す。するとやはり数秒の間をおいて「鍋うめーなー」と反応する。なんともやる気もテンポも感じられない会話だが、絶妙にエスカレーターの速度にマッチしている。岡山県民は、元来おっとりしているのだろうか?

それっきり会話も終わったのかと思いきや、「サラダとかにも合うよねー」と相方が振る。すると、やはり数秒の間をおいて「サラダうめーなー」とため息交じりにつぶやく。相方の方は少し調子が出てきたのか、ややテンポアップして「煮物とかもイケるよねー」と振るのだが、椎茸好きの方は相変わらずテンポは上らず「煮物うめーなー」と数秒の間をおいて喉を鳴らす。しかし、渋いな、岡山の高校生は。

まだまだ会話を聞いていたかったのだが、いくら遅いとは言え、2Fの駅コンコースに着いてしまった。どうしても気になったので、思い切って振り返って見たら、なんと椎茸好きの方は、小柄で華奢な至極普通の高校生であった。心の中で『なんや』と少しがっかりしたのだが、ついでに相方の方も見とけと首を捻ねったら、ぬわぁななななーんとパンチパーマが伸びきって舞茸のような頭をしているではないか。おっ、おい、お前の方がキノコみたいやんけ!と心で毒づくも、大人のマナーとして口には出さなかった。