楽園のカンヴァス



本屋さんで、適当に面白そうな小説を選ぶのは楽しい。出張先で時間が余ると、だいたい本屋でぶらぶらして、ついつい気になった文庫本を買ってしまうので、私の場合常時10冊くらい未読の本が順番待ち状態で家の本棚に並んでいる。そして時々起こってはいけないことが起こってしまうのだが、すでに買って未読待ちの本を、また買ってしまうことがある。最近では、早瀬耕の「未必のマクベス」、吉田修一の「7月24日通り」がそうだ。両者とも好きな作家なので、印税収入に貢献したのでまあいいか、と自分を慰めるのだが、かわいそうなのは買われた本の方である。結局、余った方を友達にあげるので、それなりに読んでもらえているとは思うのだけれど。

出張帰りに時々立ち寄る浜松町駅の本屋で、原田マハが特集されていた。売れっ子作家なので、何度か手にとってたことはあったのだが、そのとき手に取った「異邦人」は、本の表紙が気になったこと、京都を舞台にした美術商の話だったこと、異邦人と書いて「いりびと」と読むのか?と思ったこと、などの理由で買ってみた。とても面白く、読了後は思わずネットでモネの「睡蓮」を検索していた。どちらかというと、ポスターデザインくらいしか絵画には興味がなかったのだが、その後「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」「ジヴェルニーの食卓」と読みすすむにつれ、これまでまったく興味のなかった西洋画に関心が涌いてくるから不思議なものだ。

元キュレーターということもあり、絵画関連の小説は本当に面白いのだが、「楽園のカンヴァス」と並んで大好きな本に「キネマの神様」がある。ストーリーもよく練られていて、構成や展開も面白いのだが、基本的にいかした仲間が次々と出現して、主人公を盛り上げてくる展開に私は弱い。私はこれを「七人の侍」的展開と勝手に命名している。絵画シリーズと同じく、この本を読み終わって、以前ながらで見たしまった「ニュー・シネマ・パラダイス」をもう一度きちんと観てみようと思った。