あいつはダブルハンド



2019年秋、日本でラグビーのW杯が開かれ、私もアイルランドとスコットランドの試合を横浜スタジアムに見に行った。その時、アイルランドグリーンにちなんで、以前購入していた南アフリカのユニフォームを着て行くことにした。試合は守備の強い強豪国同士の白熱した戦いで、フォワードが強いアイルランドが押し気味で、前半を終えた。

さて、ハーフタイムにトイレにでも行っとくかと通路に出たら、五月みどりに丘みどり。緑一色のアイルランド人だらけ。なんと3階のトイレの列が4階まで数珠つなぎ状態。何度か順番待ちの列を折り返す間、たまたま私と同じユニフォームを着た南アフリカの兄ちゃんとすれ違い、ハイタッチをしたりして、膨らむ下っ腹に合わせて気分を盛り上げたりしていた。

後半も始まった頃、ようやく順番が回ってきて、奥の便器で用を足していると、隣にさっきの南アフリカンが来たではないか!最初は気づいていなかったようだが、ようやくこちらの視線に気づき、ちょっと驚いた後に「オゥ、イェーイ」的なノリで、左手を上げてハイタッチのポーズをしてきた。こちらも応えようと右手を上げたのだが、『いや、待てよ。あいつ、さっきまでその手で握ってたよなあ』と気づき、一瞬躊躇してしまった。

女性にはわかりづらいと思うが、男は小用人を足す時にフェデラーのように片手でやるシングルハンド派と、錦織のバックのようにダブルハンド派に分かれる。確かに奴はダブルハンドだったのだ。結局、ホスト国としての「おもてなし」が何より優先させるべきだと思い直し、ちょっとの間をおいてハイタッチをした。で、タッチした右手をじっと眺めていて気づいたのだ。『あ、俺もダブルハンドやった』

こうして連れションが終わり、急ぎ席に戻ろうと思ったのだが、すれ違いにスカート履いたスコットランド人が二人入ってきた。正式には格式高い民族衣装のキルトと呼ばれるらしいが、彼らがどうやってやるのか興味が湧いて、手を洗いつつちょっと見ることにした。すると、小用便器の前で、スカートをガバッとめくって、そのままやり始めた。そこで、うぉぉ、ノーパンなのか!と気づいた。さらに、片手でスカートを押さえる必要があるため、彼らは皆フェデラー派だったのだ!くぅ〜