どんと



どんとさんの死はショックだった。直接話したことがないんだけど、間近で見たオフステージの久富(どんと)さんは、気さくではにかみ屋さんで、不思議な雰囲気を持った人だった。

初めてどんとさんのステージを見たのは、京大尚賢館前の特設ステージ。当時、ローザルクセンブルグはメジャーデビュー前で、ニューウェイブファッションに身を包み、演奏する曲も日本語でアバンギャルド&ダンサンブルと異彩を放っていた。一言で言えば、変なバンドなんだけど、今まで聞いたことがないひっかかるバンドだった。曲の合間のどんとさんのMCも秀逸で、確かギターの弦が切れたかで間が空いてしまい、脈絡のない四文字熟語を次々としゃべって聴衆を笑わせていた。当時から、周りを巻き込む才に溢れた人だったと思う。

ところで、ボ・ガンボスのベスト・アルバムと言えば、断然インディーズから発売された「BO GUMBOS LIVE at 磔磔 1988.07.11」である。どっかの雑誌にも書いてたけど、私もデビュー直前が絶頂期だったと思う。

さて、その絶頂期の音源が、この「BO GUMBOS LIVE at 磔磔 1989.07.11」に収められている。音もジャケットも最高である。古くからメンバーとつきあいの深い,サンタさんが制作に関わっているのも、アルバムの出来に良い影響を与えていると思う。幸運にも、私も聴衆の一人として会場にいた。本当に楽しく、彼らの前途にワクワクした。どの曲もすばらしいので、是非聞いていただきたい。

キャラクターが先行しがちなどんとさんだけど、歌も歌詞も文句なしにすばらしく、まさに他に類を見ない型のかっこいいボーカリストだった。メロディーの乗せ方も実にうまい。例えば、シンプルなリフによる「もしもしO.K.」という曲があるんだけど、なかなかあーいう歌を乗せられないのだ。まあとにかく凄いのだ、どんとさんは。

ご本人は、いつも派手な衣装を身にまとっていたけど、あれは飾り気のない本当の自分を人前にさらすのが怖かったからじゃないだろうか?享年37歳。ご冥福を祈ります。