Change?



札幌に出張した際、ホテルの1階にあるレストランで朝食を取った。朝食券を熟練と思しきウェイトレス(以降、熟女と略す)に手渡し、席に案内されるとおしぼりと箸が出され、「バイキングとなっております。パンは、あそこにあるトースターを利用して焼いてお召し上がりください。」と丁寧な対応だ。早速席を立って、朝食を皿一杯に乗せ、パンは言われたとおりトースターにセットした。

サラダを食べ終えた頃、「チーン」と心地よい音がしたので、焼き上がったパンを取りに行った。少しばかり焦げ過ぎたが、私はカリカリトーストが好みなので、マーガリンを手に取り、再び席に戻った。席に戻るときに気づいたのだが、このホテルも中国や韓国、台湾と思われるアジア系の観光客が多く宿泊しているようだ。

その後、卵料理、魚、肉と食べて、そろそろトーストでも食べるかと考えながらコーンポタージュを飲んでいると、斜め後ろにもじもじとした視線を感じた。ふと振り向くと、先ほど席を案内してくれた熟女が、皿にパンを乗せてこちらを向いて立っている。何だろうと思ったが、一瞥して再びスープを飲み始めると、熟女が一歩前に進んで、「ちっ...ちぃえんじ?」と皿を付き出したのだ。

一瞬意味がわからず混乱したが、『ははぁ、焦げたパンを置いたままにしていたので、新しいパンに取り替えてくれるのか?』と理解し、気が利くなあと喜んだ。のもつかの間、『なんで英語なんや!』と事態に気づき、「いえ、焦げたくらいが好きなので結構です。」と、いぢわるじじぃになって日本語で応えてやった。いくら空気が美味しくて、自然や食材が素晴らしくても、いとも簡単に人はいぢわるになれるのだ。

すると、自分の勘違いに気づいた熟女は、パンを乗せた皿は残さず、「ああぁ...」とうめき声だけを残し、逃げるように厨房に去って行った。が、運悪く私の席は厨房のすぐ近くだったのだ。熟女は厨房に戻るなり、おそらく仲間であろうアナザー熟女に、「はははは、聞いて聞いて!またやっちゃったのよ。外人かと思ってさ。ひゃひゃひゃ。だって、日本人ってわからないんだもの。ひっひっひ...」丸聞こえだということを露とも疑わず、歳に似合わないおキャンな声を響かせた。

熟女の何気ない「またやっちゃった」の一言に、若干心を慰められた。のもつかの間、悔しさがぶり返した。『何がchange?じゃ!こっちこそ、あんたの方をchangeしちゃるじゃわい!』