エリック・カントナ



同世代、同時体験で是非とも観てみたかったフットボーラーが数人いる。ヨハン・クライフ、ジョージ・ベスト、ガリンシャ、ジャンカルロ・アントニョーニ、カール=ハインツ・ルンメニゲ、ベルント・シュスター、それにギュンター・ネッツァーだ。一方、ミッシェル・プラティニ、ジーコ、ピエール・リトバルスキー、ルート・フリット、マラドーナ、フランコ・バレージ、ローター・マテウスなどは、現役時代を観ることができた。いずれも想像力と華があるファンタジスタと呼ばれる選手達だ。そして、同時体験できた選手で、フリットと並び私にとって最高だったのが、エリック・カントナである。

エリック・ザ・キング。いわゆる問題児でもあったカントナだが、何よりもプレーは有無を言わせない素晴らしいものだった。特に、テレビ中継で観ることができたユナイテッドに入ってからのプレーは、毎回驚かされるものばかりだった。決定力と繊細なパスセンス。私は、ポロシャツの襟を立てて着るのは小っ恥ずかしくてできないが、カントナが襟を立てて着るユニフォーム姿は大好きだ。似合う人はそれでいいのだ。残念ながら結果は伴わなかったため長くは続かなかったようだが、ジャン=ピエール・パパンとのツートップ時代のフランス代表をもっと観たかった。

1995年、絶頂期であったカントナは、世界に衝撃を走らせた。ファウルに対する報復行為で退場処分となって引き上げるとき、ピッチ近くからひどい罵りを浴びせたクリスタル・パレスのサポーターに、カンフーキックを見舞ったのだ。その後の調べで、罵ったサポーターは強盗未遂の前科もある問題児だったことも判明している。カントナは、1997年の30歳の時、ユナイテッドを在籍5年間で4度目のプレミアリーグ優勝に導いた後、突然引退した。そして、引退後の2007年には、現役時代を振り返って「多くの楽しい時間を過ごしたが、どれか一つを選べと言われたら、それはフーリガンを蹴った時だ」と述べている。かっこいい!