がんばれエア・ドゥ!



LCCなんて言葉が世に流通していなかった時代に旗揚げした、偉大なるスカイ・マークとエア・ドゥ!実家福岡に就航したスカイ・マークに親近感を覚えたが、まずはエア・ドゥの方を利用した。2001年夏の家族旅行。

我が息子は、当時小学校1年生で、誰に似たのか一人っ子ながら元気がよい。息子は、すでに2~3度飛行機に乗ったことがあったのだが、エア・ドゥは初めてなので、かなりワクワクしていたようだ。ところが、ゲートからバスに乗り込んだとき、まずは異変に気づいたようで、「お父さん、何でバスに乗るの?」

「エア・ドゥの飛行機の乗り場は別の所にあるから、そこまではバスなんだ。」「...ふ~ん」と解せない表情。バスが次第に進むに連れ、「この飛行機?」「いや、これはジャル」「あ、こっちの青い方?」「いや、これはアナ」「...あ!ポケモンだ!あれじゃなさそうだな...あっ、あれ?」「おう、そうそう。あれだ!エア・ドゥって書いてあるからな。」「かっこわるー」(な・・・なんてことを・・・)

本心から出た息子の声はあまりに大きく、周りにいた乗客のみならず、バスの運転手まで届いたようで、一同苦笑の嵐。爆笑の嵐ではなく、苦笑の嵐というのは、なかなか経験できない。おそらく、運転手への気兼ねや、故郷の英雄エア・ドゥへの誇り、子供の正直な感想に対する同感の思いが、絶妙にブレンドしていた。そんな雰囲気も読めるはずもない息子は、「しっぽが短いし、顔だって変だし、ちょーかっこわるー!」とたたみかける。

さすがに父親としていたたまれなくなり、「馬鹿だな、あれが通(つう)好みなんだよ。ガキには、わかるまい。」とうそぶいたものの、場は収拾するはずもなく、苦笑のウェーヴ。私は、バスの運転手のミラー越しの視線と目が合わないように気をつけながら、忍び足でバスを降りた。しかし、子供というのは正直なものである。確かにジャルやアナに比べると、ひとまわり小さく、ずんぐりむっくりした貧弱な印象は拭えなかった。しかし、エア・ドゥの良さは、そんな見たくれなんか吹き飛ばして、あまりあるはずなのである。ところが、バスに同乗した大人は、私と同様、少なからず惨めな感情を抱いた。

その後、ディズニーランドのパレードで踊るお姉さん達より派手なエプロン姿のCAさん達に迎えられ、歯切れの悪いエンジン音とともに、大空へ飛び立った。がんばれ、エア・ドゥ!