山 形 「山寺のオバサンパワー」
訪れたのは某年8月初旬だった。

定期観光バスに乗った。
芭蕉の「閑かさや岩にしみいる蝉の声」で有名な山寺(立石寺)を中心に数カ所を巡るコースである。
山寺に到着、山門は大きくはないが荘厳である。
山門をくぐり境内へと入る。
割と広く緑も多いが平らなのはこの辺りだけで本堂への道は全て上り坂である。

今回はバスの時間の都合で五大堂(寺域の全体が眺められる)までの往復になるとのこと。
山寺専門のガイドが付き山登りが始まったがこれが結構キツイ。
普段あまり歩かぬ身にはこたえる。
各要所でガイドが説明をするが、それを聞くより足腰の休養で手一杯だ。
それでも何とか半分くらい登った蝉塚近くの休憩処で冷たい物を飲んでいると一緒のバスのオバサンの何人かが「疲れた、もう登れないからここで待ってる」 と言い出した。
その声に同調のオバサンが増えていく。
そこに休憩処のオバサンが「折角ここまで来たのに勿体ないから五大堂まで行った方が良い」の一言。
この一言がオバサン達の元取り精神を蘇らせたのか「そうね、折角だからもう一頑張りしましょうか」と相成りヨッコラショと山登り再開。

五大堂からの眺めは確かに素晴らしかったが8月の暑さの中の山登りは辛い。
汗の引っ込む時がない。
蝉が鳴いていたかも覚えていない。
覚えているのは「折角だから」のオバサンパワーの逞しさであった。
これから山寺に行こうと思っている方、蝉の声に拘らねば夏より汗の心配の少ない春か秋がお勧めである。

写真:立石寺山門 Roshi 文章:Roshi
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