第二十四回:英語と私


以前ここでちょっと名前を出した六人組超絶 コーラスグループ、TAKE6 であるが、今やもう彼らと私は親友である。 先日 Blue Note 東京で行われたライブに行き、最前列の席に座り、 アンコールも終わり去ってゆく彼らのうち、 リーダーであるクロード・マックナイトと握手をしたのである。 これを親友と呼ばずして何と呼ぶのか。 さらに同席していたうちの嫁はバス担当のアルビン・シェア(彼がまた凄かった) 以外の五人と握手をしたのである。家族ぐるみの付き合い、というやつだ。

それにしてもライブハウスというのは良い。大きなホールでのショーも楽しいが、 手を伸ばせば届きそうなすぐそこに、憧れのミュージシャンが憧れのフレーズを 奏でつつ汗や唾を飛ばしてくるとはなんと贅沢な状況であろうか。 まぁ特に Blue Note は値段もゼイタクなんだけどさ。

同じく Blue Note 東京で世界的ジャズ・ハーモニカ奏者 Toots Thielemans を 観た時のこと。この時も最前列を陣取ってごきげんだったのだが、 曲の合間の MC で Toots が私を指差して何やらしゃべっている。 どうやら「お前の顔、どっかで見たことあるぞ。わっはっは」 という類のジョークを飛ばしているようだ。

「俺の名前はリオっていうんだ。リオ・デ・ジャネイロのリオだぜ。 ブラジル好きのアンタのことだ。ブラジルに行った時に会ったんじゃないかな。 がっはっは。こりゃおかしいぜブラザー」

とかなんとか言い返したいところだがどうにも英語が出てこない。 出てくる前に聞く事で精いっぱいだという話もある。

悔しいではないか。

その数ヶ月後仕事で、とあるプログラムの事例紹介ということで社外発表を行う 機会があって、プレゼンテイターの一人が米国人で、つい技術的な話になって しまって冷や汗かいたとか情けない事件もあって、 英語が出来るといいなぁと漠然と思ったりする私である。

というわけで、本屋や図書館に行ってみる。

すぐできる英会話、という類の本が多いが、私はその前にまず相手の話を聞けないと いかんのではないかと考えた。

英語「このコンピュータネットワーク環境でこの設定では 動作にロスが多いのではないか?」

私A「ロス、多い、ちょっと、しかし、ペンディング、少ない、時間、 ユーザ、喜ぶ」
私B「ダイアナ・ロスも好きですがやはりアレサ・フランクリンでしょう。わはは」

Aはまだかわいげもあるが、Bのごとき会話になってしまっては私、 ひいては日本人が馬鹿だと思われてしまうではないか。 その他 AFN とか聴けると面白そうだし。それに外タレのライブで MC が分かるのも 嬉しいんじゃないか。

さて、耳を良くするためには自分で実際に発声してみることが大事だと思うのだが どうだろう。

楽器を習得する過程において、「耳でフレーズをコピーする」→「弾けるようになる」 →「より難しいフレーズがコピーできるようになる」とか「耳で音色をコピーする」 →「自分の手持ち楽器で何とか出してみようとする」→「音色に対して鋭くなる /より深く楽器を知ることが出来る」なんてことはないでしょうか。 そんな気がするんですけど違いますかね。

そうであるということにして、発音の本など読んでみる。

曰く、「子音は息の速度が大事」「あごを大きく開く」「腹から声を出す」… なんだかどこかで見たことのあるような教えだ。

歌と一緒じゃないか。はっきりした発音とか、腹から声をとか、 口腔内で響かせるとか。 さらに英語(に限らないが)では文全体のイントネーションもポイントだ。 これはメロディではないか。

つまり、歌うようにしゃべることがポイントと言えるであろう。英語上達のためには 日常会話にこれを取り入れるのが最良の手段といえる。

某「をい、B メロ後のギターソロだけどさ」
私「そぅれわぁ テンポをぅをぅはんんんぶんにしてぇ〜 じぃまあああいなぁ」

かなりなことになっている。その前に日本語でやってどうする。

しかしなかなか良いアイディアではないか。「歌ってマスター英会話」これだ。 きっと売れる。売れたアカツキにはあれ買ってこれ買ってうへへへ。

その前に練習しろ。

さて、TAKE6でのMCだが、以前に比べて随分聞き取れたように思う。 これも「歌ってマスター英会話」のおかげである… なんてことはなくて、きっと日本人向けに精いっぱい分かりやすい英語を しゃべってくれたんだろう。ありがとう。マーク・キブル。 本当にすてきな、心に残るライブでした。


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