第二十一回:80年代と私


80年代というと、私がえーと、中学二年から大学四年までの十年間、ということに なろうか。

中学二年といえばジャンルもわからずにいろんな音楽に憧れを持ち、 自分で音楽を探すことと女の子にますます熱中する時期であり、 高校生といえばバンド活動にあけくれ髪を伸ばし煙草を吸い麻雀を打って 速弾きと女の子に夢中になる時期であり、高校生後半ともなれば プログレやらフュージョンやらよりテクニカルな音楽と女の子に惹かれたりもし、 大学時代といえば、高校時代の趣向を「三つ子の魂百まで」状態で引きずりつつ さらに多くの友人との出会いによって、多様な音楽的趣向の広がりを得られる 時期であり、ジャズを叩いてるのにオカズが イアン・ペイスだったりしながら女の子にウツツを抜かしていたりする わけである。

多分日本人の 80 % の音楽的成長過程はそういう感じであるに違いない。 一般的なサラリーマンである私もそうであったのだから。

というわけで、私の一番大事な成長過程は「80 年代」にぴったりとマッチしている のであった。だから多分私は「日本一の 80's 野郎」なのである。恐れ入っただろう。 はっはっは。

さて、80 年代を紐解いてみよう。取り敢えずそうだな、 Billboard(という、アメリカのチャート)をチェック…

1981。オリビア・ニュートン・ジョンの「フィジカル」とか、 ダイアナ・ロス & ライオネル・リッチーの「エンドレス・ラブ」とか、 けっこーリアルタイムで聴いている。

1982。ジョーン・ジェット & ザ・ブラックハーツの「アイ・ラヴ・ロックンロール」 なんてこの年ですかー。メン・アット・ワークの「ノックは夜中に」、シカゴの 「素直になれなくて」へー。 一番多くの曲がありありと思い浮かべることが出来るのがこの年。高校一年。 確かに高二の後半からハードロックに行っちゃったからなぁ。 おっとヴァンゲリスの「炎のランナー」も。この映画、当時付き合ってた女の子と 行ったなぁ。えへへ。

なんてやってるとキリがないので見た結果だけ。1985 年辺りから、ぴんと来る曲が がくっと減ります。私。いや、その年チャートナンバーワンになった曲のリスト ですから、どこかで耳にしたという程度で知っている曲はあるんですが、 なんというか、明らかに「チャートを追いかけていた」感じがない。 85 年というと一年間ほど東の方の Sendagaya という街の学校に留学していた 頃であるな。なるほど。って納得するなよ。

というわけで、私は 80's 野郎ではなかったようである。前言撤回。

ところで、今では洋楽のビデオなんて珍しくもなんともないが、 その昔は MTV のような番組というのは少なかったわけで、そういう劣悪な環境下で 我々は小林克也先生の The Best Hit U.S.A. を楽しみに生きていたのだ。

同年代の音楽仲間が集まると、ついこういうところで話が合ってしまう。 オープニングでレコードジャケットがぱたぱた倒れていくんだ、とかたわいない ネタに懐かしさのあまり涙を流したりする。そういう馬鹿者の集団であるから、 「いやー懐かしいよねー」「恥ずかしさバクハツだよねー」なんて言いながら 「そんな恥ずかしい曲ばかりを集めて衆人の前で恥ずかしがってみたい」 などという願望を持っちゃったりするのだ。って断言してますが。

断言するにはワケがあって、その恥ずかしい企画が実現してしまったからである。 バンド名もそのものズバリの「The Best Hit U.S.A」。 選曲も、オリビア・ニュートン・ジョンの「フィジカル」やら レイ・パーカー・Jr.の「ゴースト・バスターズ」やら、 ワム!の「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」やら 恥ずかしいところをばっちり押さえてある。 しかしウキウキ。すごいことになっている。原題は "Wake me up before you GO-GO"。 ひょっとしたらこの邦題は名訳かもしれないと思い始めている自分が恐い。

場所がまたイカシてて、鶴見の駅前。
当日のプログラムは気絶するほどイカシてて、我々はアンパンマン・ショーの 前座。
要は商店街のお祭りの一環なのである。

いやもう恥ずかしかった。これは。私は今回、上述のフィジカルでギターソロを 弾いたりしたわけだが、アンパンマン・ショーを待つ親子たちが見守る中、 く〜っなんてギター立ててチョーキングしてる横でエアロビインストラクターみたいな 格好してるメンバー達がダンベル上げ下げしたりしているという図。

ちなみにホンモノでは当時(今は?)元気だったスティーブ・ルカサーが メチャクチャかっこいいソロを聴かせているのだが、我々の手にかかれば 立派なお笑いである。参ったか。とほほ。

なんだか、不思議な気持ちだった。嬉し恥ずかし。それこそ「ウキウキ」だったかも。 いや久しぶりにギターを弾いたってのを差し引いてもさ。

80 年代、ね。

特に前半はヒットチャートにも馴染みが あって懐かしい気持ちになるし、後半、ヒットチャートからは離れても、やっぱり 音楽を追いかけてはいたのだ。

きっと、一番必死に音楽を追いかけていた十年。それが私の 80 年代。

で、お祭り騒ぎが終わった後ウチアゲで盛り上がる 「次は The Best Hit U.S.A. Part 2 だっ!」。
まだやるのか。


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