サン・フランシスコのケーブルカー |
San Francisco/ United States |
撮影: 2004/9, 2009/4 制作: 2020/6 |
2004年と2009年にサン・フランシスコを訪問する機会がありました。ここには世界最古で唯一の古典的ケーブルカーがあることで知られています。小高い丘を上り下りするために先人が考え出した優れたシステムが、多くの観光客を引き寄せています。 |
サン・フランシスコはカリフォルニア州北部の金融/港湾都市です。高校生の時に聴いたブレンダ・リーの歌に魅せられて、いつかは行ってみたいと思っていました。 |
Golden Gate Bridge 有名な観光地、ゴールデンゲートブリッジ(金門橋)。 |
サン・フランシスコのケーブルカーは1873年に開業し、最盛期には23もの路線がありました。1880年代末期に至り、新しく実用化された通常の路面電車への転換が始まり、1906年に起こった大地震の復旧に当たって多くの路線の置き換えが加速しました。わずかに残った急峻な坂道路線ではバスが採用され、1947年には市長が全廃を提案する事態になりました。これに対して市民グループが反対し、住民投票によって保存が決定された歴史があります。 現在は大幅なリニューアル工事を経て、3路線が運転されています。運営はサン・フランシスコ市営鉄道(略称MUNI)がおこなっています。 ・メイソン/パウエル線(2.6km, 図中緑) ・ハイド/パウエル線(3.4km, 図中赤) これら2つの線はパウエル通りで線路とケーブルを共用しています ・カリフォルニア線(2.3km, 図中青) ※図中丸囲み数字は撮影場所を示し、各写真の番号に対応しています。 |
① Powell & Market St. パウエル線の始発、マーケット通りのターミナルです。この線で使われている車両は全長8.4mの小型車で、運転台が前方1ヶ所のみのタイプです。このためターミナルではターンテーブルを使って向きを反転させます。 ※軌間は1,067mmで、米国では狭軌になります。 (2004/9/17) |
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② Powell & Pine St. パウエル通りを北へ向かう車両が、坂道を登ってきました。 ケーブルカーは地中に設置されて周回するケーブルを、巨大なプライヤーでつかむ(グリップする)ことで前進するという、きわめて単純なしくみで動いています。ケーブルを離せばフリー(惰行状態)になり、ブレーキを掛ければ止まります。このため運転士はグリップマンと呼ばれています。 ※レールの中央に溝があり、その中をケーブルが約15km/hのスピードで動いています。従ってケーブルをつかんでいる間は、常に一定の速度で走ります。 |
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上掲と同じ、パイン通りとの交差点です。 交差点内では傾斜がほとんど無く、踊り場のような形状に道路が造られています。そして、ほぼ1ブロックごとの交差点に停留所が設けられています。 (2009/4/7) |
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③ Powell & California St. 丘を登り切って、カリフォルニア線との交差点を進むパウエル線です。定員60人のうち座席があるのは29人分、残りの乗客は車体から身体をはみ出して乗るのが定番のスタイルです。自己責任の徹底した米国ならではの光景です。 ここの交差点ではケーブルカー同士が交差するので、ケーブルが下側を通っているパウエル線の車両が惰行で走ります。交差点の直前まで坂道を登ってきますので、ケーブルを離すタイミングが難しく、グリップマンの腕の見せ所です。 (2004/9/17) |
④ Washington & Powell St. 東行一方通行になっているワシントン通りです。中華街に近いので停留所の表示が中国語になっています。 |
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⑤ Jackson & Powell St. こちらは上掲の1筋北にあるジャクソン通りで、西行きの一方通行になっています。狭い家並みの隙間から、オークランドにつながるベイブリッジが望めます。 足元を良く見ると3本の線路に2本のケーブル溝があることに気づきます。ここは中央の線路を共用するタイプの3線式ガントレット区間で、世界でも大変珍しい構造です。 (2009/4/8) ※ガントレットについては、リスボンやミラノの巻をご参照下さい。 |
パウエル通りで線路とケーブルを共用していた2つの線が、どのように分岐するのでしょうか? ジャクソン通りは急峻な登り坂になっています。このため、分岐はパウエル通りに設けられた比較的緩やかな下り坂の区間で実行されます。ポイントは車掌さんが手動で切り替え、車両はケーブルを離して惰行で進みます。分岐が完了した後、ケーブルを再びつかむと、角を曲がってジャクソン通りのガントレット区間に入り、目的地への線に進みます。 ※3次元になるので図示してませんが、ケーブルは手動分岐の所から現れて、独立した3方向に向かって周回しています。 |
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⑥ Jackson & Maison St. ジャクソン通りを直進するハイド線の車両を後ろから撮影しました。上掲図の赤線です。手前右にメイソン線の南行き線路との十字交差が写っています。ここではハイド線のケーブルが下側にあるので、惰行で進みます。 |
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⑦ Cable Car Museum 上掲のすぐ近くにあるケーブルカー博物館です。 ケーブルカーの原理を説明する展示や、保存車両、土産物店などとともに、実際に使われているケーブルの巻き取り機を見学することが出来ます。巻き取り機は線別に並んでいて、ゆっくりと回転しています。市内にエンドレスのケーブルを張り巡らせるという壮大な装置が、ここでコントロールされています。 (2004/9/17) |
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⑧ Hyde & Chestnut St. ハイド線を北へ進んだところにあるチェストナット通りの交差点です。沿線にはおしゃれな形をした住宅が個性を競い合っています。 (2009/4/8) |
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⑨ Hyde & Bay St. ベイ通りと交差する坂上からは、眼下に海事史跡公園が眺められます。湾内右に浮かぶ小島はアルカトラズ島です。脱獄不可能と言われた刑務所があったことで知られています。 |
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⑩ Hyde & Beach St. 坂道を下ったところにあるハイド線の終点ターミナルです。ここにもターンテーブルがあり、人力で方向転換をしています。ここからはフィッシャーマンズワーフへも歩いて行ける距離にあり、多くの観光客が訪れる人気スポットです。 |
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⑪ Mason & Union St. こちらはメイソン線です。ユニオン通りとの交差点で見晴らしの良い場所を見つけたので、途中下車しました。名物の霧は出ませんでしたが、お天気に恵まれて至福の時間を過ごすことが出来ました。 冒頭の写真もここで撮影しました。 |
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⑫ California & Drumm St. ここからはカリフォルニア線を紹介します。ターミナルのドラム通りを出発して、金融街のビルの谷間へ入って行くところです。 この線で使われている車両は一回り大きな9.2mサイズで、68人乗りです。運転台が両端に付いているので、ターンテーブルは必要ありません。線路の終端は単線になっていて、スプリングポイントを通って惰行で進入します。ケーブルをつかめば逆方向へ出られるという、見事なしくみになっています。 |
⑬ California & Stockton St. しばらく進むと坂道の角度が急峻になってきます。鉄輪の粘着運転ではとても登れない、ケーブルカーならではの区間が続きます。楽しそうな乗客の姿を流し撮りしてみました。 (2009/4/7) |
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⑭ California & Jones St. カリフォルニア/ジョーンズ通り交差点にある米国聖公会のグレース大聖堂です。建物はサン・フランシスコ大地震の後にこの地に移転して、1964年に再建されました。 この辺り一帯の丘はノブ・ヒルと言われ、アメリカンドリームに成功した大金持ちが多数居を構えています。 (2004/9/17) |
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⑮ California & Leavenworth St. カリフォルニア線のケーブルカーが、西側からノブ・ヒルを登って行きます。丘の上には抜けるような青い空が広がっていました。 |
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⑯ California & Van Ness Ave. 終点のヴァンネス大通りです。カリフォルニア通りは真っ直ぐな直線で、はるか丘の上に現れる米粒のような車両を眺める事ができます。 |
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上掲と同じ地点から、望遠レンズで覗いてみました。交差点が平坦な踊り場になっていることがよく分かります。 (2009/4/8) |
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Interior View of the Cable Car 車内の様子を撮影しました。中央に立っている人が運転士さん(グリップマン)です。グリップの操作は力仕事なので、屈強な人が従事しています。 (2004/9/17) |
References: https://en.wikipedia.org/wiki/San_Francisco https://en.wikipedia.org/wiki/San_Francisco_cable_car_system https://www.streetcar.org/wheels-motion/cable-cars-work/ https://en.wikipedia.org/wiki/Grace_Cathedral,_San_Francisco |